第13話 出発と、出来ない治癒魔法と、浮遊する石板

 ロバ2頭を借りて遠征に出発だ。

 ロバの借り賃はまず保証金が金貨1枚とちょっと。

 これは返って来るから良い。

 借り賃が銀貨5枚。

 安いんだけど、黒字になるのかこれ。


「街道はどこも似たり寄ったりだな」

「ええ、そうね」

「でも、森があったり、村があったりで、それなりに変化はある」

「何が言いたいの」


「旅とはこういうものだ。感慨深い」

「その気持ちは分からないわ」

「都会で暮らしていると、岩一つとってみても、見慣れない物なんだよ。感動があるんだ」

「岩に感動ね。全然、分からないわ」


 前世では東京で暮らしていた。

 生まれも育ちも東京だ。

 子供の頃たまに田舎に行くと川一つで感動したものだ。

 森になんか入るとウキウキする。


 何だろね。

 田舎暮らしの人間には分からない感覚だろう。

 それが異世界ともなればウキウキ度は計り知れない。


 そんな事を思っていたのも半日だけで、1日が終わる頃には、豆が出来て足の痛みに悩まされてた。


「治癒魔法ってあるのかな」

「ええ、大魔導師しか使えないわ」

「やってみるか。【治癒せよ】。駄目だ。発動しない」


 ちくしょう、大魔導師め知識を独占しやがって。

 そう言えば、マイえもんも魔法の知識は大した事がないな。

 どうにかして魔法の知識を得る必要があるな。

 今はそんな事より治癒だ


「【魔力を用いて細胞を回復しろ】。くそう、駄目だ」


 あれだな、仕組みが分からないから、駄目なんだな。

 細胞を回復するパワーって何と尋ねられたら、答えられない。

 医者や研究者なら答えられるかも知れないが、俺には無理だ。

 攻撃は良いんだ。

 エネルギー関連の物理法則とか現象とかは学校で習っている。

 この世界の大魔導師はどうやって回復しているんだろう。


 何か特別な知識があるのかな。


「もうそろそろ、寝ましょ」

「うん、お休み」


 一瞬で眠りに落ちて、ぐっすり寝て、起きた。

 起きたが足の痛みは変わらない。

 回復が駄目なら歩かなくても良い魔法を開発するぞ。


extern MAGIC *stone_wall_make(float mana);

extern void magic_lift(MAGIC *mp,int height_cm);

extern int mclose(MAGIC *mp);


void main(void)

{

 MAGIC *mp; /*魔法定義*/

 mp=stone_wall_make(0.003); /*石の板を作る*/

 while(1){ /*無限ループ*/

  magic_lift(mp,100); /*100センチの高さに浮かび上がらせる*/

 }

 mclose(mp); /*魔法終わり処理*/

}


 これでどうだ。

 石の板を浮かび上がらせる魔法だ。

 スペルブックに書き込み、実行してみた。

 ぷかぷかと浮かぶ60センチ程の広さの石の板。


 ロープで石の板をロバに繋ぐ。

 これで歩かなくても済む。


「マイラが乗れる広さの板にしようか」

「えっ、乗せてくれるの」

「何だ、乗りたかったか。もっと早く言えよ」


 マイラは俺の後ろに乗って、俺にしがみつく。

 俺が少し振り返るとマイラの真っ赤な顔が見えた。


 高所恐怖症か。

 1メートルでも怖いんだな。


「もっとしがみついても良いんだぞ」


 マイラがぎゅっとしがみついた。

 よし、出発だ。

 あれ、ロバが動かない。

 そうか、手綱を引く人間が居ないと歩かないのか。

 くそう、なんとかならないか。

 石の板を動かす方法を考えた。

 できるけども、車の運転のようにはいかない。

 それを実現するには、かなり時間が掛かる。


「マイラ、ごめん。降りて」

「えっ、そんな」


「誰かロバを引かないと」

「分かったわよ。引けば、良いんでしょ」

「ごめんな」


 かなりがっくり来た様子のマイラ。

 後で埋め合わせをするから。


 そんなこんなで、出発した。

 半日が経ち、足の痛みがかなりましになったので。


「マイラ、乗ってもいいよ」

「本当」


 マイラが喜色満面になった。

 俺が石の板から降りると、マイラが落胆した。

 何だ、乗りたかったんじゃないのか。

 ああ、高所恐怖症なので、つかまる俺が居ないと、落ちるか心配なんだな。

 ごめん。

 魔法でも高所恐怖症は治せない。

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