第3話 牢屋と、プログラム的魔法と、脱出
やってみるか。
3千度では心もとないので、1万度ぐらいでいってみるか。
「【温度1万度で魔力を燃料に点火】」
一瞬、炎が出て、鉄が真っ赤になる。
だが、炎は消えた。
なんでなのかは分かっている。
魔力が無くなったからだ。
500度の20倍だからな。
魔力の消費量も20倍なのだろう。
もっと効率の良い呪文を編み出さないと。
今、魔力はないので、考える時間はたっぷりある。
効率を良くする方法として、魔力量を指定するぐらいしか考えつかん。
【温度1万度で魔力1を燃料に継続的に完全燃焼しろ】とかか。
でもこれだと消費魔力は少ないが、炎も小さくなるような気がする。
もっと画期的アイデアがないと駄目なんだろうな。
あれっ、確か読んだ本にファイヤーボールの呪文が載ってたな。
ええと【火球よ敵を穿て】【炎よ弾になり飛べ】【火よ球になりて焼け】とかだったな。
炎の指定だけで3つの表現がある。
火球、炎、火だ。
この表現は外国語でもいけるのか。
試してみない事にはなんとも言えないが、試すのはただだ。
よし、魔力も少し戻ったし、種火を英語で試してみよう。
「【ignition】。やった炎が点いた」
いっその事プログラムでやってみるか。
void main(void)
{
ignition(10000);
}
こんなところでどうだろう。
解説すると。
void main(void)←主関数、木で言えば幹に当たる。
{←始まり。
ignition(10000);←点火の関数。10000度で点火。
}←終わり。
これだけだとちんぷんかんぷんだから、もう少し詳しくいく。
void←出力無し main(void←入力無し)
{
ignition←点火の意味(10000←発火温度);←セミコロンは一行の終わり
}
よしやるぞ。
「【ヴォイド・メイン・丸括弧・ヴォイド・丸括弧閉じる・波括弧・イグニッション・丸括弧・10000・丸括弧閉じる・セミコロン・波括弧閉じる】」
おお、魔力が減らない。
鉄がどんどん溶けていく。
やったぞ。
だが、これを武器にするにしても詠唱が長すぎる。
「鉄格子を焼き切るなんて、凄いのね」
マイラが俺の傍に来て言った。
「だが、駄目だ。詠唱が長くて武器にならない」
「じゃ、無詠唱でやったら」
「そうかその手があったな」
無詠唱は呪文を頭に思い浮かべる手法だ。
現象のイメージと同時にやらないといけないなんて事はない。
現象のイメージをしてから、呪文をイメージしたのでも間に合う。
発動は多少遅くなるがな。
それと無詠唱のデメリットは消費魔力が高くなる事だ。
だが、今の状態は魔力をほとんど食ってない。
無詠唱にしたところでも大丈夫だろう。
念には念を入れて。
extern void ignition(int temp,int power);
void main(void)
{
ignition(10000,1);
}
こうするか。
追加分を説明する。
extern←外部にあるよという宣言 void←返答はしないよ ignition(int temp←温度の定義,int power←火力の定義);
void main(void)
{
ignition(10000,1);
}
このプログラムを思い浮かべれば無詠唱の完成だ。
溶けた鉄格子も固まったので牢からマイラと一緒に出る。
階段を上がると見張りがいたので、さっそく無詠唱の点火を食らわす。
「ひっ、熱い。あちちっ、あちっ。あっちぃぃぃ!……」
男は火だるまになって転がった。
火は消えたが、気絶したようだ。
異変を察知したのだろう。
扉が開けられ男達がなだれ込んで来る。
その時、マイラが地を這うような姿勢で動き、短剣で男達の踵を切り裂いていった。
短剣はどこから出て来たんだ。
見ると俺が火だるまにした男の腰につけた短剣が、鞘だけになっている。
男達は全員が立てなくなったようだ。
マイラは男達の股間に踵を落としていく。
うひっ、容赦がないな。
この子どういう育ちなんだ。
暗殺者の一族とかか。
何にせよ助かった事には違いない。
俺達は小屋から出て、馬を放して、尻に鞭をくれた。
馬は驚いて駆けだしていく。
それから、俺達は逃亡に移った。
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