中学生になってから、妖怪退治をしています!
瑞葉
1章 不思議な部活動
ファーストコンタクト!①
寝る前に、夜空の星を見上げる。夜の空気はしんしんと冷えている。
どこかの家に帰っていく車の音が聞こえる。
わたしは、星座の名前はよくわからない。けれど、星を見るのは好き。静岡県の山間にあるこの街は星が綺麗なんだよ。町の名前も「星野森町」というくらいだし。
真っ暗な闇の中に、無限に広がる星々を見ていると、わたし、瀬田桃子(せた・ももこ)は思うんだ。
(夜空に吸い込まれそう)
とね。
「桃子。窓閉めたらー。寒いよ」
大学生のお姉ちゃんがそう言って、部屋に二つあるベッドの片方に腰掛ける。先月パーマをかけた髪を、お姉ちゃんはドライヤーでやさしく乾かし始めていた。
髪を乾かし終わると、化粧水を顔にパタパタしている。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
明日は、中学校の入学式なんだ。
おとなしい自分が新しい環境で、みんなと仲良くなれるかな、と心配でたまらない。臆病な性格は生まれつき。
わたしが八歳の時にお母さんが交通事故で亡くなった。その後、何ヶ月間か、わたしは家族のお父さんやお姉ちゃんとさえも、しゃべれなくなってた。学校でお話しする、なんてなおさらできなかった。
その時、「誰か」が助けてくれたような気がする。
でも、その「誰か」がわからない。思い出せない。頭の中にモヤがかかってるみたいに。
ともあれ、またしゃべることができるようになってからも、わたしはやっぱり、お友達が少ない。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
次の朝、早くに目が覚めてしまった。なにか不思議な夢を見ていたような気がする。
スズメがチュンチュン、窓の外で鳴いてた。
見ていたのは、亡くなったお母さんの夢。
お母さんは水色の「巫女装束」みたいなものを着ていた。そしてわたしに「水色に輝く石」を渡してくれたんだ。
小学校の時に見た教科書にあんなふうな石、載ってた。そう。「勾玉」。そんな形の石だったの。
「桃ちゃん。戦いがある。気をつけて」
お母さんは夢の中で優しかった。でも、すごくきっぱりそう言った。
言葉が耳に残った。
変な夢だよね。
夢見が良くなかったせいかな。頭がぼんやりしてる。
中学校まで行く途中、北星(ほくせい)神社のクスノキが高く高くそびえている。この神社は地元の人から深く愛されていて、朝方、おじいさんおばあさんがよくおそうじしてくれているんだよ。
わたしも咲良(さくら)お姉ちゃんも、「七五三」はここの神社でやっていた。お母さんと映った写真も、アルバムやお父さんのスマホに残ってるんだ。
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