劣等感

今日もこの話か。


もううんざりなんだ。



ぼくの彼女には推しがいる。


ぼくの彼女はアイドルが好きみたいだ。


わかってる。


彼女に悪気はないって。


わかってる。



でも。でも。



君にはぼくだけを見て欲しいんだ。


他の男なんて気にもとめないでほしい。



彼女は言うんだ。


「あくまでも推しだよ!彼氏への好きとは違う!種類がちがうの!」



好きが違うってなんだよ。


別にぼくの方がかっこいいなんて思わない。


アイドルの方がかっこいいよね。


輝いてるよね。


憧れるよね。


だけどさ。だけどさ。だけど。


劣等感だけが増えていく。



ぼくは君に対しては敏感なんだ。


君に対しては。


君だけに対しては。



わかってるんだよ。


彼氏として許すべきだって。


そんなことはとっくにわかってるんだ。


君のために。我慢するべきだって。


わかってる。


だけど。君はぼくの彼女だから。



ぼくはめんどくさいよね。


君の顔みればわかる。


言われなくてもわかってる。


そんなことはとっくにわかってる。


ぼくがいちばんわかってる。



ぼくが彼女の考えに合わせるべきなのかな。


無理してでも合わせるべきなのかな。


そうすれば我慢しなくていいのかな。


劣等感なんて感じなくて済むのかな。


自分を卑下する必要なんてなくなるのかな。





横のカップルが話していた。


「ねぇ、女優ばっかりじゃなくてさ。私だけに集中して欲しいんだけど。




ぼくは決めた。


これ以上自分には意地悪はしない。


我慢する必要なんてないんだ。


「ぼくたち別れようか」



周りに何て言われようがいい。


どう思われてもいい。



ぼくは自分に優しくしただけだ。


ぼくは自分を大切にしただけだ。


ぼくを変える必要なんてないじゃないか。


無理なんてしなくていいじゃないか。


我慢なんてしなくていいじゃないか。


これからもぼくを守ろうじゃ無いか。


ぼくでいようじゃないか。



ぼくは劣等感を取っ払っただけだ。

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る