連弾
フォンセは星壱郎の制しを気にせず、上空に大きな音と風を起こしながら飛んでいるワイヴァーンの下へと移動した。
「
両手に持っている拳銃の
「ワーウルフはあともう少しでカマルが倒しきるだろうな。それまで、あのまま上空散歩をしてくれたらいいんだが……」
彼の願いも虚しく、ワイヴァーンは黒い瞳を下にいるフォンセへと向けた。その瞳だけで彼は体に圧がかかり、膝を折り手を置く。
ワーウルフとの戦闘は簡単なものであったが、体力は確実に削れている。額からも汗が流れ、頬を伝い地面へと落ちた。
「見られただけで、この圧迫感……。そりゃ、ルーナも動けなくなるわ」
バサッと大きな音を立て、上空を飛び回っていたワイヴァーンは、一度その場で空中停止する。
そのまま翼を大きく広げると、風を斬る音共にフォンセへと突っ込んでいく。
「っち!!」
一度その場から走ったが完全に避けきることが出来ず、風圧により体が吹っ飛んでしまい地面へと叩きつけられる。そのまま体が転がり、引きずられ壁へと当たりやっと止まった。
「フォンセさっ──」
フォンセに向かって走り出そうとした星壱郎だったが、いきなり体へとのしかかる圧により言葉を続けることが出来なかった。
汗が滴り落とし、ワイヴァーンへと目を向ける。すると、その黒い瞳と目が合った。
「あっ……」
今度の狙いは、無防備になっている星壱郎だ。
大きな口を開き、地鳴りが響く程の咆哮。
風圧と圧力により、星壱郎は両手で顔を覆い、吹き飛ばされないように膝を折り踏ん張る。
その隙にフォンセはルーナと目を合わせ体勢を建て直し、二人は同時にワイヴァーンの背中へと跳ぶ。
「最初から本気で行くぞ」
「わかったよ、お兄ちゃん!!!」
二人は両手で拳銃を握り前へと突き出す。体幹を支えながら、青色と薄紅色の弾丸を放った。
「「
それぞれ光る弾丸を、ワイヴァーンの後頭部に狙いを定め放った。
二人の弾丸は見事に命中したが、ワイヴァーンは気にする様子を見せない。
「ルーナ」
「了解」
ワイヴァーンの左右横に着地したのと同時に、フォンセは人差し指で自身の
同時にフォンセは左、ルーナは右の顬を狙うため、地面を蹴り走り出す。
両腕を後ろに流しながら走り、二人同時にワイヴァーンの顔の横に着き立ち止まる。
「ルーナ!!!!」
「問題ないよお兄ちゃん!!!」
お互い姿が見えないため、声を張り上げタイミングを合わせる。自然と息が合い、同時に弾丸を放つ。
「「
同時に薄紅色と青色の弾丸を連射し、ワイヴァーンの
一発では効かなかったため、何度も何度も放つ。
その間に星壱郎へとシルフは近づき、喚き散らす。
『主!!! 私達も早くどうにかしなければ危ないですよ!! 動いてください!』
「う、動くと言っても、何をすれば……」
『主の魔力は私達精霊にとって特別なもののように思えます! なので、ほかの精霊も召喚しあのお二人を援護するのです!!』
「そんなこと言っても──」
そんな話をしていると、ワイヴァーンの狙いがルーナとフォンセに移り、翼を広げて上空へと向かう。そのまますぐ、ルーナへと大きな口を開き突っ込んでいく。
「っシルフ!!!」
『分かっております主様!
シルフがルーナの前に飛び、両手を左右へと広げ指揮者のように動かす。
白く細い腕は、何かを奏でるように揺られており、それに応えるように回りに風の刃が吹き荒れた。
ワイヴァーンは気にせず突っ込むが、風の刃が立ち塞がりぶつかり合う。
大きな破裂音を響き渡らせ、強い風が吹き荒れる。
ルーナとフォンセ、星壱郎は吹き飛ばされないように顔を覆いながら、シルフとワイヴァーンのぶつかり合いを見ている。
「シルフはそこまで強い精霊じゃないはず……。いや、星壱郎!! ほかの精霊を出すことは出来るか?!」
「わかんないです! それに、何を出せば……」
「水の精霊、ウンディーネを出すんだ! 風との相性が良いはず!」
「わ、分かりました!」
星壱郎は風圧に負けないよう、地面に人差し指で丸の中に五芒星を描き、召喚魔術の魔法陣を作り出す。
『我に力を貸せ──
魔法陣を描き、地面に手をつけ唱える。すると、魔法陣から徐々に水が渦を巻きながら立ち上がる。
水の竜巻が現れると、それがパンっと弾き、中から水色の髪を靡かせた女性が姿を現した。
『……──我は水の精霊、ウンディーネ。主の仰せのままに』
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