第14話 尋問(お・は・な・し)です。

 ここで妙にったら、かえって怪しい雰囲気になってしまう。無心で洗う。どんどん洗う。木の大皿・小皿、スープボウル、スプーン、フォーク、トレー。


 20分もかからずに洗い終わる。フォークの隙間もきっちり。もちろん食べかす・汚れなんて全く残っていない。油のギトギトも綺麗さっぱり。ふぅ~。っと息をついて…恐る恐る右を見る。目が点になって固まっているルーミアさんがそこにいた。


「あ~っ、いけねぇ、わすれてたぁ。」


 棒読みセリフを吐きながら、立ち上がってそそくさとビラルさんの家に戻る。途中で "たわし召喚!” を解除。手からたわしが消える。


「なんじゃ? もう話してきたのか?」


「あ、違います。朝食前に頼まれた瓶の水汲み忘れてたんで、水瓶を取りに戻ってきました。汲んできちゃいますね。」


「そりゃぁすまんね、残ってる水は家の脇に撒いてくれればいいからの。」


 水瓶を抱えて、ビラルさんの家を出てから、なるべくゆっくり水を捨て井戸に向かう。うん。ルーミアさんは食器をかたずけてるのか井戸にはいない。水瓶の8分目まで汲んだら、また抱えてビラルさんの家に戻る。入り口脇の置き場に、よいっしょ。


「ビラルさ~ん。ザッカールさんのところに行ってきま~す。」


 奥から、返事が聞こえたので家を出てあの盾を飾っている家に向かう。井戸を挟んでちょうど反対側。ドアをノックする。


「ザッカールさん。来ました。ソーヤです。」


「おう、入ってこい。」


 促されるままに家に入ると、おおぅ。バルゴさんに、ルーミアさん・・もしかしてバレまくって無いかこれは。


「まぁ、座れ。

 でだ。おぇは来た?」


 まずい、完全に怪しまれている。


「えっと、西の草原からです。」


に、あの鬼兎オーガラビットの大繁殖地に人が住めるところなんぞぇ。大草原よりもっと先の『砂漠の蛮族ゼルキアの国』か?」


 まずい、本格的にまずい。このまま捕縛されてどこかの牢屋にぶち込まれて…、最悪このまま殺されてもおかしくない雰囲気だ。正直に話すしかないな。信じてもらえないかもしれないけれど…。ある程度は真実を言うべきかな? 全部ぶっちゃけたら余計に混乱しそうだし。


「えっと、あの…ですね。信じてもらえないかもしれませんけど・・・神様に会って、気が付いたらあの草原にいたんです……。」


「「「「 ! ! ! ! 」」」」


 全員が一斉に僕の顔を見る。真剣な目で。気まずい沈黙の時間が流れる。そんな中バルゴさんが意を決した様な顔で口を開く。


「…彼は、ソーヤは、マジックバックを持っているんです。…昨日の鬼兎オーガラビットもそこから取り出してました。」


 うん。しょうがないよね。思いっきり目の前だったし。


 今度はルーミアさんが口を開く。


「さっきソーヤは何もないところから  ”たわし”  を取り出したんです!! そのたわしがすごいんです!

 いつもなら一生懸命に洗ってもなかなか落ちない、唐揚げの油汚れが一瞬で綺麗になったんです!!!」


「えっ!それってすごい! だからあんなに早く洗い物が終わったのね!! ねぇ、その ”たわし” を見せて!」


 ベルナさんが、そのた わ しに思いっきり喰いつく。


「待て待て、落ち着け。バルゴ・ルーミア。本当なんだな。」


 コクコクと二人は頷く。


「俺が騎士団に入団したばかりの頃だ、先々代の団長から聞いた話がある。

 あの『』の話だ。大革命を牽引した人物は東の大森林の街道に。で、マジックバックこそ持っていなかったが、周囲の人々を驚かせた、もちろん料理の腕は超一流だったそうだ・・・・」


 皆の視線が、ザッカールに集まる。


「その人物、いわく・・・

 『神と出会って』 だそうだ。」


「どうだ? なんか似ていないか。ソーヤと。」


 尋問(お・は・な・し)はまだまだ続くみたいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る