【50万PV 感謝!!】 授かった能力が『たわし』だった。  えっ? それって、なんでしょうか?

舞後乃酒乱

第1章 プロローグ おれ、転生するみたい

第0話 汚部屋の主。

 ・・・なにもする気が起きない。。。

 おれが鬱を発症して3か月・・・・通院以外、家から出ることもできず、ネットスーパーで買い溜めしたレトルト食品とペット飲料でかろうじて生きている。が、その食品・飲料ももう底をつく。


 部屋の中は、とりあえずゴミ袋に入れた食品のパッケージと空のボトルが散乱。

 ごみ集積場にもっていく… たったそれだけの事さえ出来なくなっている。


 かろうじて寝るスペースを確保してある万年床。その中で熟睡もできずに何度目かの寝返りを打つ。


 安アパートのカーテンの隙間から差し込む光と通学の子供たちの声のおかげで、なんとなく朝だということがわかる。


 それなりに大学を出て、それなりに就職して4年。

 主任となって早々、新人とペアを組んで・・・ そこから順風満帆ではなくなり、今までの平穏な日々は崩壊し始めた。


 新人はとある役員のコネで入社してきたA君。その指導員ブラザーになったことで、おれの日常の歯車が狂い始めた。

 A君に仕事を教える為に、彼を経由したすべての取引で… 納期の連絡ミス・誤発注・誤請求・・・etc。


 そのたびに注意・指導を繰り返す。しかしとにかく口が達者なA君は終始言い訳と責任回避でその場をやり過ごし続ける。

 口達者も営業としては必要なスキルだろうが。A君よ、そのスキル使い方は間違ってるぞ。


 ほぼ毎日起こるA君が引き起こす数々のトラブル。毎回その後始末をする日々。

 やがて、自分の担当業務にも影響が出始めた。


 今週に発生した何度目かのトラブル。その対応で一通り取引先への謝罪・納期の調整・商品の再発注手配をこなしてから、彼に我慢できなくなった課長を交えて会議室へ・・・。

 入室と同時に、彼の今までの行動に激怒してとも捉われかねないを吐く課長。

 それは行き過ぎです、さすがに今の時代それはまずいでしょ。

 なんとか課長をなだめて・・・彼に一言。


「ミスするのは仕方ないけど、今後はお互いに確認と連絡はしっかりしような。

 フォローできれば問題ないんだからさ。」


 その言葉も彼に届いているかどうかは、その憮然とする表情からは伺い知ることが出来なかった。


 翌日、始業と同時に件の役員から課長共々呼び出された。

 そこで課長と私に対してのダメ出しが始まった。

 既にかれこれ1時間。指導方法やら、度を越した𠮟責やら・・・云々、何度も同じ話がループする。

 いいかげん、そろそろ業務に戻らないと、得意先への週明けの納品に間に合わない。

 そんな時、課長が口を開いた。


「ええ、おっしゃる通りです。

 梶原君の日頃の業務教育・指導の仕方、特に昨日のような《人格否定》のような《罵詈雑言》は叱責の範疇を越えており問題が有ったと、私も思っておりました。」


 へっ? おれのせい?? おれの叱責??

 いやいやいや、マシンガンは、課長…あなたでしたよね。


「それは課長の言動です。」

 

 そう言い返そうとしたら、言葉を遮られて役員の矛先は俺に向かってきた。


 そこから役員はさらに1時間近くねちねちと言い始める。課長と言えばそんなおれの姿を横目で見ながらニヤニヤとして、途中で業務があると言ってさっさと退室している。


「まぁ、今日はこれぐらいでいいだろう。

 梶原君も、指導・叱責の仕方には、今後気を付けてくれ。

 聞けば君の成績はかなり落ちているそうだね。自分の成績が落ち込んでいるからと言って、下の者にその鬱憤を晴らすなど言語同断だ。

 本来なら法的に訴えられてもおかしくないからな。

 もう少し常識という物をわきまえて、言動に注意しておくんだな。」


 いったい何を言っているんだ? 成績悪化の八つ当たり?

 何を言っているのか、何度も理解しようとした。

 だが考えれば考えるほど訳が分からなくなる。

 そして、おれの中のどこかで… 何かが壊れた気がした。

 (いったいおれは何のために生きているのだろうか…)


 翌日から、今までにない体調不良にさいなまれ続ける。。。。



 その日は一日中、今までの事がぐるぐると頭の中を駆け巡り続けた。

 いつしかカーテンの隙間から差し込む光が茜色になり、おれは意識を失った。

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