短編集
天川シエル
秋雨
秋雨が降り続くこの頃、最近私は運がない。というよりも、ミスが多い。
家の鍵をなくしたり、スマホを家に忘れたりしている。
自分の確認不足が原因だが、なんだか他のことのせいにしてしまう。
そして、イライラしてしまう。
ふと、前を見ると小さな女の子が傘もささずに立ち止まっている。
小さい頃は雨が降っても傘なんてささずに遊んだなと思ったが、明らかに様子が変だ。
雨で遊ぶには肌寒い季節だし、何より立ち止まって動かないことが気になる。
周りに親もいないようだ。心配に思って声をかけてみた。
そうしたら、なんということか。ふと見上げたその子の顔が小さい頃の私にそっくりだったのだ。
私が声を出せずに固まっていると、小さな私が言う。
大人って楽しい?と。
私は考え込んでしまった。大人になってから何かに本気で楽しんだことはあっただろうかと。
また、小さな私が言う。
人生楽しんだもの勝ちだよ。ねえ、今楽しい?と訊ねてきた。
私は小さい時から大好きなものがあった。しかし、大人になって辞めてしまった。
もう一度子供心に戻って楽しみたい。そう、本気で思った時、小さな私は消えていた。
きっと私の中に帰ってきてくれたのだろう。忘れていた大切なことと共に。
短編集 天川シエル @amakawa_ciel
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。短編集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます