口から生まれた疑惑の王太子

「王太子殿下、急なお越しで驚きました。しかしよくおいで下さいました。……本日はどのようなご用向きでしょうか」

「うむ、と名高いレディに会いに来た」

「美しき??よくわかりませんが、呼んで参ります」

「いや、案内してくれ」


はた、と全力ヘコヘコしていた髭面公爵がついに三人を見つけた。


「……殿下、彼らは」

「ああ、レディに会いたがっているのは実は俺の、この俺に似た美貌を持つ愛する異母妹いもうとなのだ。訳あって生母の伯爵家にいるが、時折親睦を深めている。最近レディと知り合い、もっと話せる方法はないかと相談されたのだ。異母兄あにとしては叶えてやりたい。調べて見たら俺の婚約者候補のひとりであるレディと知ったのだ。俺自身も懇意にしたいと思い、異母妹いもうとに礼状を持たせず、俺自ら同伴させて頂いた。やはり異母妹いもうとと仲睦まじくできる姫ならば円満な夫婦になれそうではないか。まぁ、なにぶん俺がいると周りが霞んでしまうので気にかけてくれたこと、感謝する。あちらは異母妹いもうとの護衛と付き人だから気にしなくていい」


嘘は言っていないが、あまりの口のうまさに開いた口が塞がらない。

ゲイだが女も抱けるから出来ることしか口にしていない。

我が異母兄あにながら───気持ち悪い。

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