最悪の幕開け

なんとまあ、特徴的で特徴のない男だろう。

名前を偽っていたとなればごろごろ出てきそうだ。

タレた切れ長の目であれば尚更。

美形で話術に富んでいると来れば、大体遊び人の放蕩息子だ。

決めつけはよしとしないが、嫌悪感は拭えるものでは無い。


……だが、探さなくとも以外と見つかるものだ。


───リリーン! リリリリーン!


興味が無い話を深掘りするために試行錯誤している中、けたたましく電話が鳴り響く。


「レディ、失礼」

「構いませんわ」


断りをし、あろうかなかろうが意味のない許可を得て受話器を取る。


「はい、レイドール私立探偵事務所です。……は? もう一度。───少々お待ちください」


受話器の受話口を抑え、ボクはレディイザベラを見つめる。

彼女はハッとした。


「……『レオルド・ポートワーグ』氏にが───で見つかったそうです」

「まあ……! 」


今にも泣きそうな顔になるレディイザベラ。


「ご本人と決まった訳ではありませんが、ご同行されますか───? 」

「はい……、確かめさせて下さいませ」


控えめではあるが綺麗な刺繍が遠目でも分かるハンカチを握りしめ、涙をこらえる瞳でこちらを見据えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る