第92話 卒業式の夜

「じゃあ、行ってきます」

「うん。 織江によろしく」

「呼び捨て……」

 先生、とか、さん、を付けなさい。 ママ。

 卒業式が終わって、明日から、春休み。

 私はママとお夕飯を食べてから、先生のマンションへ行く。 お祝い、してくれるって。 明日は一日、休みを取ってくれた。 一緒に過ごしましょうって…言ってくれた。

 私は黒いリュックに下着と着替えを入れて、自転車と電車で、先生の家に向かう。 外は、もう暗い。



「こんばんは」

「いらっしゃい。 待ってたわ」

 玄関の扉を開けると先生が、にこにこで出迎えてくれる。 ベージュのセーターに、濃い色のジーンズを履いている。 脚、長すぎる……。 すてき。 素敵だけど、

「あれ…… 袴は?」

「他の先生方と一緒に、もう返しましたよ」

「えーっ。 着物も?」

「そうよ」

「ちぇ。 お代官様ごっこ、したかったのに」

 おじさんね、と笑われて、お家に入れてもらう。

「わあ! ケーキだ」

 ダイニングテーブルに、小さな丸いケーキが乗っている。 白い生クリームに、いちごがいくつも乗った、かわいいショートケーキ。 二人用の小さいケーキだから、チョコのプレートがすごく大きく見える。 「ゆうひちゃんおめでとう」って書いてある。

「うれしい、うれしい」

 上着を脱いで、ハンガーに掛けて、私はくるくる回る。

「ふふ。 そんなに喜んで、かわいいこと」

「だって、嬉しいんだもん。 先生、ありがとう」

 ほっぺたに、ちゅっとしちゃう。

 昼間、できなかったから。 何回も、ちゅ、ちゅってする。 先生はにこにこしながら、ほっぺたを差し出していてくれる。

「さあ、キス魔さん。 そろそろ、ケーキにしましょ」

「うん。 すごいね、いちご、大きいね」

「これね、大きいいちごを買ってきて、乗せちゃったの。 始めから乗ってたのは、小さかったから。 自分で食べちゃったわ」

 ぺろっと舌を出す。 かわいい……好き! 私は先生に抱きついて、頭をくりくり擦り付ける。

「ありがと。 大好き……」

「良かったわ。 いちご、大好き?」

「違うよう。 先生が」



 ケーキを食べて、二人でお風呂も入って。

 色違い、お揃いのモコモコのパジャマに着替える。

 先生のは、サーモンピンクのボーダーの。 私のは、紺のボーダー。 先生が、買ってくれたもの。 お揃いは、とっても嬉しい。

 歯磨きも済ませて、あとは、くっ付いて眠るだけ。

「えへへ…… 幸せ」

 大きなベッドで、ごろごろする。 先生も横になって、ごろごろする私をにこにこ見守る。

 ごろごろ転がって、お布団を掛けて座っている先生のそばに、くっ付く。 目が合うと、先生は、目を閉じて唇を少し突き出した。

 そうだよね。 私も、もう、したい……。

 私は四つん這い、猫のポーズになって、先生にキスをする。 リップクリームの付いてる、ふわふわでぷるぷる、ふにふにの、女の子の唇どうしがぴったりくっ付く。 気持ちいい。

 そのまま、唇を押し付け合う。 少しすると、しびれを切らした先生の舌が入ってくる。 私は、それを受け入れる。

 先生の、長い、えっちな舌。 私のくちの中、丁寧に舐めてくれる。 すっごく、気持ちいい。 おいしい。

「ん…… んっ……」

「んん……」

 二人とも、喉が鳴っちゃう。 先生もきっと、気持ちいい。 同じ気持ちかなって思うと、ますますどきどきする。



 指を絡めて、いっぱい長くキスをした。

「泣いてるの」

 あ……本当だ。 いつの間にか、私のほっぺた、涙が流れ落ちている。 くしくし、拭う。

「あれ……何でだろ。 えへへ。 悲しくないのに。 変なの」

 先生は、サイドテーブルに置いたタオルで、涙を押さえてくれる。

「嬉しくて、出たのかな。 おかしいね」

「おかしくないわよ。 ちっとも。 素直で、素敵だわ」

 おいで、と言われて、一緒にお布団を掛ける。 先生は私をぎゅっとして、頭をいい子いい子してくれる。

「先生、私、ほんとにあの高校に入って良かった。 私の事見つけてくれて、ありがとう……」

 先生は頭を撫でながら、答える。

「夕陽こそ、私の事を好きになってくれて、ありがとう。 もう一生、あなただけよ。 あなたとしか、セックスしない」

「わぁ…… どうしよ。 えへへ、嬉しい……」

 また、キスしてくれる。 キスをしながら、先生は、私のパジャマのズボンを脱がしてしまう。 それから、自分のズボンも脱ぐ。

 さらさらの脚どうし、絡ませる。 気持ちいい。 先生の、長くて締まった素敵な脚。 二人とも、パンツを履いたままのあそこ、密着させる。

 先生の冷たい指が、パンツの中に入ってくる。 ぬるぬるが、指を汚す。 指は、構わずに奥まで差し込まれる。

「あ…… ふぁっ……」

 嬉しくて、腰を前後に動かしてしまう。 自分でもこの動き、えっちだなって思う……。 でも、癖になっちゃったんだもん。

「先生、先生……。 好き……。 気持ち良いとこ、とんとんして……」

「いいわよ。 こっちかな……」

 指を曲げて、手前の方、指をずぶずぶされる。 いいところ、どうして分かるの? 先生……。

「あ、ああっ、はぁっ…… うぁ…… そこ…… そこ……」

 先生は、気持ち良くて首をふりふりする私の右耳にキスをする。

「ここ、いいわね。 夕陽はえっちなとき、どこが好き? なか? それとも、こっち?」

 そう言って、先生は反対の手で、私のあれに触れる。 今日はまだ触られてないのに、もう、かたく、敏感になっている。

「す、すき…… どっちも……。 あのね、わたし、わたしね」

「うん? どっち? 教えて」

「せ、先生の…… 先生のゆびがすき…… 指がしてくれるとこ、みんなすき……」

 おもちゃも、舌も、あそこも好きだけど。 私は、先生の指が好き……。 意地悪で、やさしくて、私をとってもよくしてくれる、細くて長い、きれいな指。

 先生は、私の右耳に唇をほとんどくっ付けながら、低く囁く。

「あなたって、本当、私を喜ばせる天才よ。 もう卒業したんだから、今日から、大人のお付き合い。 夜更かしして、お互い、たっぷり気持ち良くなりましょうね……」

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