保健室 三年生

下野 みかも

第1話 三年生 春 いつもの日


「こんにちは」

「こんにちは。 どうしました」

「どうって…。 生理痛です。 休ませて下さい」

「ベッド、空いています。 お好きなところに」

 お好きなところ、といっても、決まっている。 私の定位置は、先生の机の一番近く。

 上履きを脱いで、乱れると嫌だから、セーラー服のリボンも外して、ベッドに入って、布団を掛ける。

「今月、4回目ですね。 生理痛」



「みんな、そんなもんでしょ」

「4日続けて、ならまだ分かります。 あなたのは、毎週」

「人それぞれだって、授業でやりました」

「婦人科の受診をお勧めします。 そんな周期なら」

 そう言って、先生は椅子のまま、こちらに来る。 おでことおでこをくっ付ける。 一応、聞いてみる。

「先生、私、熱、ある?」

「ないでしょ。 仮病なのだから」

 そのまま、先生は私の頬に唇を押し当てる。

「先生、えっちね」

「やめます?」

「だめ。 やめないで」

 私は、先生の首に腕を回す。 唇と唇が、くっ付く。 すぐに、お互いの舌も、くっ付く。 

「ん…」

 先生。 私の、先生。 いつも保健室で待っていてくれる、背の高い、きれいな、細くて長い指の、すてきな声の、先生。

「先生、気持ちいい…」

「それはよかった」

 先生、私、キスすると、すぐに気持ち良くなっちゃうの。 それに、あと20分で授業が終わっちゃう。 そしたらきっと保健室に、大した用もないのに誰かがやって来るわ。

「先生、指で、して…」

「えっちですね」

「先生が、教えたんだよ」

 ベッドに腰掛けて、先生は私のスカートのなかに手を入れる。

 先生の、冷んやりした指が、パンツの中に入ってくる。

「こんなにして」

「我慢してたんだもん。 5時間目まで。 我慢してた分、キスしたら、すぐそうなっちゃうの」

 言い訳を聞いてから、先生は、私の唇を塞ぐ。 

「んっ、ん…」

 声が出ないように、塞いでくれる。 先生の左手は、私の右の手首を掴んで。 右手の指は、私の中を、やさしく蠢く。 先生、きれいな指、汚してごめんなさい。 でも、して。 そこを、たくさん、触って。

「んぅ」

 脚が、ぴんと伸びてしまう。 そして、脱力。 

 私の息は、まだ荒い。

「すぐにいってしまって、真面目な子。 お利口さん」

 唇を離して、先生が言う。

「真面目じゃない子、お利口じゃない子は、すぐいかないの?」

 私以外に、こういう事する子、いるの?

「さぁ…。 今ここにいる生徒は、あなただけ」

 何それ。 ずるい。 先生は、私のせいで汚れた右手の指を、ちゅっと舐める。

 チャイムが鳴る。 どたどたと、走ってくる音が聞こえる。

「私、もう少し休んだら、戻ります」

「そうですか。 お大事に」

 先生は、そう言って私のおでこにキスをして、カーテンを閉めた。



「先生、指、紙で切った! 絆創膏、くださーい」

「一応、消毒しましょうね…」

 カーテンの向こうから、誰かと先生の声が聞こえる。

 私も、指を切ったら、消毒してもらおうかな。 先生の声を聞きながら、今度は自分の指を、まだ濡れているそこに差し込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る