第22話 決着の時です
「待ってくれ、全額だなんて無理だ。なあ、頼む。スカーレット。俺たちはかつて愛し合っていたではないか?頼む、考え直してくれ。もし金が払えなければ、俺は強制労働施設に入れられる。朝から晩まで働かされるんだぞ。可哀そうとは思わないか?」
確かにお金が支払えなければ、強制労働施設と言う場所に入れられ、支払いが完了するまで出られない。デビッドの場合、20年は出られないだろうとグレイ様が言っていた。
ただ強制労働施設は自由はないが、衣食住はしっかり与えられるし、真面目に働けば休みも貰えると聞いた。そもそも人のお金を勝手に使っておいて、許してくれはないだろう。それにデビッドの様な人間は、規則正しい生活が出来る施設で根性を叩き直してもらった方がいいだろう。
「デビッド、あなたは最初からキャロリーナさんを愛していたのでしょう?それに、勝手に人のお金を使っておいて、許してくれはないわ。悪いけれど、私は折れるつもりはないから」
デビッドにはっきりとそう告げた。すると、急に顔つきが変わったデビッド。
「ふざけるな!そもそもお前の両親が亡くなった時、誰がそばに居てやったと思っているんだ。その上、お前みたいな地味で何のとりえもない女と結婚してやったんだぞ。それなのに、こんな仕打ちをしやがって。お前は最低最悪な人間だ。お前なんかと結婚なんてしなければよかった」
顔を真っ赤にして暴言を吐くデビッド。その姿を見た瞬間、私の心の糸が切れた。
「貴様!スカーレットになんて事を…」
「アハハハッハ。デビッド、それ本気に言っているの?私が最低最悪な人間?それならあなたは鬼畜ね。だってそうでしょう?両親を一度に亡くし悲しみのどん底にいる人間に近づき、あろう事か人の財産を根こそぎ奪い取ったのだから。本当に鬼、悪魔、鬼畜だわ!でも、そんなあなたを信用した私も、大バカ者よ。でもね、あなたには1つだけ感謝している事があるの。あの日私と離縁し、家から追い出してくれたありがとう。そのお陰で、心から信用できるグレイ様と出会えた。さらに、私を支えてくれる大切な友人たちの存在にも気づけた。そして何より、あなたの様な鬼畜クズ男と離れられたのだから。デビッド、私を傷つけ、ごみクズの様に捨ててくれてありがとう。あなたが本当に鬼畜だったから、私もここまでできたのよ」
自分でもびっくりする程、酷い言葉が次から次へと出てくる。でも、もう我慢する事が出来なかったのだ。それでも全てを言いきってすっきりしたし、後悔はない。
そんな私を見て、固まるデビッド。その隣では、私は関係ありません見たいな顔をしているキャロリーナさんが目に入った。
「キャロリーナさん、あなたにも支払い義務があるのよ。デビッドが払えなければ、あなたに払ってもらうわ。もちろん払えなければ、あなたも強制労働施設行きよ」
「どうして私が…」
「あら、あなたも私の両親の遺産を使ったでしょう?ここにしっかり証拠があるわ」
にっこり微笑んでキャロリーナさんに伝えてあげた。
「嫌よ…そもそもデビッドが、あなたをだましたのが悪いのでしょう。私は関係ないわ。そうだわ、あなた、騎士団長をしているのでしょう?ねえ、こんな小娘なんか相手にしていないで、私と付き合わない?」
何を思ったのか、グレイ様にすり寄っていくキャロリーナさん。ちょっと、グレイ様に近づかないで!そう叫ぼうとした時だった。
「悪いが、俺から離れてもらえるかな。君のその鼻に付く強烈な臭いが不快でしょうがないんだ。それから、その下品な服は一体なんだ。君は露出狂なのか?そもそも、白お化けの様な顔も気持ち悪い」
そう言うと、心底嫌そうにキャロリーナさんから離れた。白お化けって…確かにキャロリーナさんは少し化粧が濃いけれど…それに露出狂って。ダメだ…笑いが…
必死に笑いを堪える。
「ちょっとあんた、頭おかしいんじゃないの?これは男に人気の香水の匂いよ。それに私の美ボディーを見て、露出狂だなんて失礼ね。そもそも、私は今まで沢山の男を魅了してきたのよ。私の魅力がわからないなんて、本当に男なの?」
「ほぉ、見苦しい姿の君に魅了されるバカがそんなに多いのかと思うと、男として恥ずかしい限りだ。そうそう、その魅了された残念な男たちの元婚約者や元妻たちから、慰謝料の請求書が届いているぞ。よかったな、この金額も上乗せされる。きっと一生強制労働施設から出られそうにないぞ。これからは、しっかり働いて罪を償うんだな。そうそう、デビッド殿が貢いだお金も、別の男との遊び代に消えていた様だが。デビッド殿は知っていたのか?」
満面の笑みでそう伝えたグレイ様。
「なんだって!キャロリーナ、まさか浮気をしていたのか?俺だけを愛していると言っていたではないか?」
「はぁ、あんた何て最初っから興味なかったわよ。ただお金を持っていたから、付き合ってあげただけ」
「ふざけるな。俺はお前を愛していたのに」
「何が愛していたよ。愛しているなら、あなたが私の罪も全て被ってよ。そもそも、あんたなんかに近づかなれば、こんな事にはならなかったのに。この疫病神!」
「誰が疫病神だ。お前がスカーレットをうまく利用して、遺産を手に入れようと言ったんだろう!お前こそ疫病神だ!」
目の前で繰り広げられる醜い争い。さすがにこのまま放置するのはよくないと思ったのか
「2人とも静粛に!とにかく2人を詐欺罪でまずは逮捕する。そして2人の財産を差し押さえした後、足りない分は強制労働施設に入り、そこで支払ってもらう。この2人を連れて行きなさい」
「ちょっと待ってくれ。スカーレット、俺はこの女に騙されていたんだ。やっぱり俺にはお前しかいない。頼む、やり直してくれ」
必死に私に叫ぶデビッド。この男、本当に頭が残念なタイプの様だ。
「さんざんキャロリーナさんを愛している、私の事なんて最初から好きではなかった、遺産目当てだったと言っていた人が、今更何を言っているのかしら。私を愛していると言うのなら、私の大切な両親が残してくれた遺産、耳をそろえてきっちり返してね。でも、お金を返してもらったとしても、あなたみたいな鬼畜とやり直すなんて死んでも嫌よ!さようなら、デビッド。もう二度と会う事はないと思うけれど、元気でね」
そう笑顔で伝えてあげた。私の言葉を聞き、呆然とするデビッド。そのまま連れていかれた。一方キャロリーナさんは、まぁ暴れる暴れる。ギャーギャー騒ぎながらも、両脇を固められ退場していった。
これで私の戦いは終わった。
ホッと胸をなでおろすスカーレットであった。
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