第4話 騎士団長様との生活が始まりました
「とにかく今日はもう遅い。スカーレット殿も色々とあって疲れただろう。そうだ、腹が減っていないか?さっき帰りにサンドウィッチを買って来たんだ。2人で食べよう」
そう言うと、テーブルにサンドウィッチを出してくれた騎士団長様。でも、1人分しかない。さすがに騎士団長様のお食事を奪う訳にはいかないわ。それに、私はあまりお腹が空いていないし…
「騎士団長様、お気遣いありがとうございます。でも、私はあまりお腹が空いておりませんので、どうぞ騎士団長様が召し上がってください。そうだ、今お茶を入れますね」
急いで台所に行き、お湯を沸かしお茶を入れた。ふと台所を見ると、真新しい調理器具がそろっていた。ただ、調味料や食材などは一切見当たらない。
「すまん、食料などは一切なくてな…無駄に調理器具だけは買いそろえたんだが…」
そう言って苦笑いしている騎士団長様。
「それでは明日、調味料や食材などは私が買ってきますね。明日の朝ごはんだけは、どこかで食べてもらえますか?」
「ああ、わかった。すまんな。それじゃあ、今日は早く食べて寝るか。ほら、君の分。ショックで食欲がないかもしれないが、食べないと良くないぞ」
半分に割ったサンドウィッチを渡してくれた騎士団長様。騎士団の仕事は物凄く体力を使うと聞く。きっと物凄くお腹が減っているだろう。それなのに、サンドウィッチを半分私にくれるなんて…
そう言えば転んで動けない私に声をかけてくれたのも、手当てをしてここに住むことを提案してくれたのも騎士団長様だ。きっとただの同情だろう。それでも、こうやって優しくされることが、今の私には嬉しくてたまらない。気が付くと、涙が溢れていた。
「どうした?もしかして食事の量が少なくてショックだったのか?すまん、今すぐ何か買ってこよう」
私が泣いたため、大慌てで部屋を出て行こうとした騎士団長様。
「お待ちください、騎士団長様。急に泣いたりしてごめんなさい。サンドウィッチを分けていただいた事が嬉しかったのです。それに騎士団長様は、私を助けてくれました。こんな誰からも必要とされていない私なんかにも優しくしてくださり、ありがとうございます」
心優しい騎士団長様に拾っていただけて、本当によかった。騎士団長様に出会わなければ、きっと私は今頃凍えていたわ。
「スカーレット殿、誰にも必要とされていないなどと、悲しい事は言わないでくれ。少なくとも、君が食堂で笑顔を向ける姿を見て、俺たち騎士団員は癒されている。それに、困っている人を助けるのも、俺たち騎士団の仕事だ。どうか、あまり気にしないで欲しい」
困っている人を助けるのが、騎士団の仕事か…
「いつも街を守ってくださっているだけでなく、困っている人たちにも手を差し伸べる、本当に素晴らしいお仕事ですね。私、増々騎士団員様たちを尊敬いたしましたわ。それに、私の笑顔で癒されると言ってくださり、ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」
「別にお世辞ではないのだが…」
なぜかブツブツと何かを言っている騎士団長様。その後は2人でサンドウィッチを食べた後、それぞれお風呂に入り、自室に戻って来た。
そうだわ、荷物を出さないと。
カバンから荷物を取り出していく。雑に入れられているが、私の服や下着などは一応全て入れられていた。そしてお金も…と言っても、本当に少ない金額だ。それでも、お金を入れてくれただけでも感謝しないとね。
早速洋服をクローゼットにしまっていく。あっという間に片付いた。本当に必要な物しか入れてもらえていなかったものね。両親からもらったネックレスなどのアクセサリーも置いてきてしまったわ。出来れば返して欲しいけれど、きっと無理よね…
片付けが終わると、ベッドに入った。なんだか物凄く疲れたわ。とにかく今日はもう寝よう。ゆっくり目を閉じ、あっという間に眠りについた。
翌日
「スカーレット殿、これ、この家のカギだ。それからこのお金で必要なものを買うといい」
朝早く騎士団へと向かう騎士団長様を見送る際、お金と鍵を手渡された。
「お金は結構ですわ。一応少しですがお金は持っておりますし…」
家に置いてもらうのだから、お金まではもらえない、そう思ったのだが…
「何を言っているんだ。今日帰りに必要なものを買ってくると昨日言っていただろう。とにかく、金の事は気にしなくていい。俺は無駄に金だけは持っているんだ。遠慮せずに使ってくれ。それじゃあ、行ってくる」
そう言って出かけてしまった騎士団長様。押し切られてしまったが、一体いくらお金が入っているのかしら?気になって早速封筒の中を確認すると、なんと平民の1ヶ月分のお給料と同じくらいのお金が入っているではないか!
こんな大金、さすがに受け取れないわ。とりあえずこのお金は騎士団長様に返そう。そう思い、一旦封筒を机にしまった。
さあ、食堂に行く前に洗濯と掃除スタートだ。
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