14話目

「わたし、は_______」


気がつくと、目の前に扉があった。



___________見覚えのある天井。

何度も何度も、嫌という程見続けた天井だ。

「あ、さ…?」

子鳥のさえずりが聞こえる。

きっと、これを世の中では『心地良い朝』というのだろう。

(…何を、していたんだっけ)

上手く回らない頭で、アイは必死に思考を巡らせた。

(最後にわたしは、何を言ったんだっけ)

少しずつ、少しずつ動き始める頭で、アイは思い出していく。

すると、窓の外から声がした。

「…い。おーい!」

アイは、急いでカーテンをあけた。

すると、そこには______

ひっくり返っている長髪の女性が居た。

「おっ!やっと起きたんだ!おはよ!」

女性が笑顔で言うと、アイはジトッと見て

「なに、してるの…レン」

脳で思い出すより先に、その名が出た。

アイは困惑しながらも

(そうだ、不思議な世界で会った人…)と徐々に理解していった。

「あ、よかったぁ!すぐ思い出せたみたいだね!」

レンが笑うと「ところで窓開けて!」と言った。

アイは呆れながらも、窓を開けると「よっ!」と掛け声をかけながらレンが家に入ってきた。

「アイちゃん、君、ご両親は?」

レンが尋ねると、アイは顔を逸らし「仕事、2人共…」と小さく言った。

レンは「ありゃ、地雷?」と言うと「ご、ごめんね?」と心配そうにアイを見ていた。

アイは「別に大丈夫だけど…」と少し困ったように言うと

「それより、なんで家の場所知ってるわけ?」と呆れて尋ねた。

レンはニコリと笑って

「ボクは魔法使いだからね、なんでもありだよ!」と言った。

(訳がわからない…)

アイは頭をおさえ、ため息をついていた。

「じゃあ、何しに来たの?」

「無論、君の願いを叶えるためさ!」

アイが尋ねると、レンはアイの両手を掴み笑顔で言った。

「わたしの、願い…」

アイは小さく呟くと、俯いた。

レンは不思議そうに「どうかした?」と尋ねた。

アイは、レンの方をじっと見つめると

「わたし、何を願ったのか覚えてない…」と言った。

レンはキョトンとして、それからニコリと微笑んだ。

「覚えていなくても大丈夫だよ!

じゃあね…次は何をするべきだと思う?」

レンが笑って尋ねる。

「何って…決まってるでしょ。」

アイはレンをまっすぐ見つめて言った。


「コウを探しに行く。」

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