10話目

『終わったんだ?


そう、一人じゃないんだ


その子を助けたいの?


君一人の力で?


できるといいね。


ほら、待ち人のお出迎えだよ。』


真っ白な光に包まれて、目を開くと、室内のような空間だった。

「アイちゃん!」

聞き覚えのある声がした。

そちらを見ると、レンが走ってきた。

「よかった!無事だったんだ!」

レンは安心したような笑顔を浮かべると、眠っているコウを見て「あれ?その子は?」と言った。

「この子は、コウだよ。優しいお花畑で会ったの。」

「優しいお花畑…?」

レンはよくわかっていないような反応をしていた。

「うん、すごく優しいお花畑…」

「…そっか、アイちゃんが言うなら、優しいんだろうね」

レンは微笑むと「じゃあ、その子が起きたら自己紹介しないとね!」と笑った。

(本物のレンだ…)

アイの目から、涙が溢れ出した。

「あ、れ…?」

アイが困惑の声を漏らしていると、レンはキョトンとしてから、優しく微笑み、アイの頭を撫でた。

「よく頑張ったね、アイちゃん。」

アイは涙を流した。ただ、静かに。

それから暫くして、アイが泣き止むと、コウが「う…」と声を漏らし、目を開けた。

レンは「お!生きてた!」と失礼なことを言う。

アイは泣きはらした目でレンをジトッと見ると「失礼」と一言いった。

「初めまして〜!ボクはレンだよ!よろしくね!君はなんて言うのかな?って、もうアイちゃんから聞いてるけど!あははっ!」

コウが、レンのテンションの高さに怯えていると、アイは「レンやめて。コウが怖がってる」と怒った。

レンはパッと離れると「ごめんごめん」と笑った。

(よかった…ちゃんとレンだ…)

アイはどこか安心しながら「ごめんね、コウ」と言った。

コウは「だ、だいじょうぶ…」と小さく言った。

(なんだか、お花畑の時と雰囲気違うな…)

アイがそう思ってコウの方を見ると、コウは困ったように「アイちゃん、ありがたいんだけど…そろそろ離してくれる…?」と言った。

アイはそれを聞いて、ようやく自分がずっとコウを背負っていたことに気がついた。

「あ、ごめんね」

アイはそう言うとコウのことをおろした。

コウは布をギュッと掴み、アイの後ろへ行った。

「…?」

アイは困惑しながら(もしかして人見知りなのかな?)と思った。

すると、レンは「あれ?」と声を漏らした。

「よく見たら君、初めましてじゃなくないかな?」

その言葉を聞き、アイはコウを見た。

「そうなの?コウ」

「ねぇアイちゃんなんでその子ばっかりなの」

レンはジトッとアイを見ながら言っていた。

アイはレンを無視してコウの返事待っていた。

コウは、アイの後ろから顔をひょこっと出し

「いっかいだけ、その人があのお花畑に迷い込んできたの」と答えた。

アイは「なるほど」と言うと、レンの方を見て「で、なに?」と尋ねた。

レンはムッとして「いやー?別にいいけどさ〜…」 と不満げだった。

「まあ、この場所がなんなのか、調べよう」

そう言うと、アイはコウに手を差し伸べた。

コウが恐る恐るその手をとると、その様子を見たレンは「よしきた!」と言い、アイのことを引っ張った。

「早速、探索開始だ!」

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