第6話 シャチホコの子 その2


 ムラ村さんと出会って半年ぐらい経ったころ。

 僕は毎日、彼女のことばかりを考えていた。

 そう、気がつけば、僕も惚れていた。

 つまり、相思相愛なのだろう。


 席替えして、ムラ村さんが前の方の席になっても、僕は暖かく後ろの席から彼女の小さな背中を見つめる。

「この想い……届け!」

 いや、もう彼女も僕を見つめている……気がする。


 そんなことを考えていると、秋になり運動会が始まる。

 ある日、練習を体育館でしないといけなくなった。


 着替えるのが早かった僕とムラ村さんは、二人きりで体育館にいた。

 まだ他の生徒たちと先生は来ていない。


 暇そうにしていたムラ村さんは「ねぇ、童貞。これ見てだぎゃん」と僕にあるものを指差す。

 それは体育館の窓近くに備えられていた、大きなカーテンだった。


「それがどうしたの?」

「なんかぎゃ。ドレスに見えないだぎゃ?」

「え? カーテンが?」

「そうだぎゃ。ちょっと見ててだぎゃん」


 そう言うと、ムラ村さんはカーテンの中に潜り込む。

 身体をくるむように巻き付けると、「ばぁ」と小さな顔を出す。


「どうぎゃ? ドレスぽくないぎゃ?」


 言われてみると確かに、ドレスに見えなくもない。

 女の子ってのは、なんにでもおままごとにするのだなと、思った。


 カーテンには裏地があって、銀色のツルツル生地。サテンと考えてもらえるとわかりやすい。

 ムラ村さんは、楽しそうにしている。

 今度は裏地を表にして、身体にまきつけ、「どうぎゃ?」なんてドヤ顔する。


「こ、これは……」


 ツルツルピカピカに光ったドレス。

 そして、カーテンの合間から見えるのは、細い脚と紺色のブルマ……。


 何か別の扉が開く、音が聞こえてきた……。


「ねぇねぇ~ 童貞! コレ、いいだぎゃん? でも、童貞には貸してやんないだぎゃ!」

「う、うん……別にいいよ」


 僕はそんなことより、ツルツルピカピカ生地の隙間から見えるブルマ。股間から目を離すことができない。

 あれだ。

 当時ドラマなんかで、流行っていたヤツだ。

 彼氏の家にお泊りした女の子が、大き目のYシャツをパンティー一丁で、料理する……みたいなデジャブを感じる。

 

 健気にカーテンで作ったドレス、あざとく見せつけるブルマ……。


 まさか!? この子、僕に惚れていて。尚且つ、結婚したいのかもしれない!?

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