「狂った時計」によせて

付き合いだしたときは、何もかもが新鮮だから、心躍る瞬間がたくさんあります。けれど、時を刻むにつれて、お互いの端緒がちょっとずつ見えてきます。

もしかしたらそういう人ばかりではないのかもしれないけど、私はこれまで短所を出しすぎて失敗してばかりでした。

失敗して後悔してもまた数年後に同じことをやってまた後悔しているんだから呆れます。


いったん狂いだした時計は、合わせてもまた忘れた頃に元に戻ってしまいます。

ついこのあいだ電池交換をしたばかりなのに狂ってしまったときは切なくなりました。

部品の寿命か、それとも扱いが雑だったのか……。


恋愛においても、こういうことってしばしば起こるのではないでしょうか。私はしょっちゅうでした。

次こそうまくいくかもと思ってルンルン気分でいたら、突然「別れよう」のメールが届いたり、不可解なことが立て続けに起こり始めたのを合図に、彼に「もう一つの顔」があるのを知ってしまったり……。

そのたびに「幸せになるのが怖い」と思うんです。一度時計が狂ったから、絶対次も失敗してしまうって。

次狂ってしまうのが怖くて、一歩を踏み出せずに怯えてしまうんです。


狂うたびに、信頼って何だろうとか恋って何だろうとかグルグル考えるけれど、いまだに正解は分かりません。

今は分からなくても、いつかは同じ時を優しく刻める日がくると信じたいです。

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