第2話 出会い
バイトと大学生活の両立に慣れ始めた6月ごろ。この日も俺はいつものように通勤ラッシュの時間帯の満員電車に揺られ、学校へ向かい1限の9時30~4限の16時40分まで授業を受けていた。そして時刻は16時40分になり、すべての授業が終わり帰る準備をしていると、大学の数少ない男友達の健太が、
「圭、菜々美と海空が一緒に帰ろっだってさ」
と言ってきた。菜々美(ななみ)と海空(みく)は大学の中で仲のいい女友達でいて、授業の終わりの時間が同じの時はいつも俺と健太と菜々美と海空の4人で帰ることが多い。そのため今日も誘ってきたのだろう、だけど俺は今日この後バイトがあるので
「悪い、今日は急ぎで帰んないといけないんだわ、バイトなので」
と今日は断った。けして一緒に帰りたくないわけではない、ただ俺のバイト先は大学から電車で約1時間はかかる距離にあり、出勤時間が18時なため今日のように16時40分に終わる授業の場合、ダッシュで帰らないと出勤時間に間に合わないのだ。そのため今日は断り、一人で急いで帰ることにした。しかし、一応大学の友達も大事なので俺は
「また次一緒に帰ろーぜ」
と言ってからバイト先へと向かった。
そして俺はバイト先の最寄りの駅につき、その駅ビルへと向かった。バイト先が駅からすぐという点は結構よかったと毎回思う。そして従業員エレベーターに乗り、3階から更衣室のある7階まで向かった。この更衣室が7階にあることは、エレベーターに乗れればいいけど、階段で登らざるを得ない時もあるため、はっきり言ってめんどくさいと思う。そして7階につき、更衣室の暗証番号を入力し、次に男子更衣室の暗証番号を入力して入った。この暗証番号は月1くらいで変わるので覚えるのが結構めんどくさい。そして更衣室で大学のカバンをおろし、洋服を着替え始める。俺のバイト先は食品関係の仕事なので衛生面上、上下すべて着替えなくてはいけなく、さらには髪の毛が入らないように帽子までかぶらないといけない。一式全部着替えなくてはいけないことはめんどくさいがこの帽子のおかげで髪色は何色でも大丈夫であるため髪色が金の俺にとってはとても好都合であった。そしてすべての準備がそろいまた仕事場である3階へ向かった。そして3階へつきタイムカードを切り、出勤状態になったことを確認し、いつものように店長に挨拶をし、仕事場へと向かおうとした。すると
「おはようございます。今日もよろしくお願いします!」
と、木村さんに声を掛けられる。木村さんは同じスーパーの食品部門で働く大学4年生の女子大生である。実は俺の働くスーパーには3つ部門があり、俺の働く総菜部門、木村さんの働く食品部門とあとレジ部門がある。そして声をかけられたので俺も
「おはようございます!今日久しぶりに出勤なんですね」
というと、木村さんは、
「そーなんだよね。でも、就活も落ち着いてきたからまた出勤数増やしていくよ」
と言った。そう、木村さんは就職の時期ということもあり、最近は休んでいたため久しぶりの出勤だったらしい。どうりで最近会わないなと俺は思っていた。俺は結構木村さんと話すのは好きである。それは木村さんは俺より3つも上なのに敬語を使っていたり、礼儀正しく、でもたまに関係ない話とかになるとため口になるのがかわいらしいと思ってしまうからである。そんな木村さんのことをはじめのころ、俺は年下だと思ってしまっていた。それは木村さんは誰にでも敬語を使う人であって、さらにはこんなこと直接本人には言えないけど、木村さんは童顔であるためかわいい年下だと思っていた。そんなことを思い出しながら俺は木村さんとあいさつを交わしていた。
「じゃあ今日も一日頑張りましょう!」
「そうだね、がんばろ!」
とお互い言い、再び俺は仕事場へと向かった。
そして仕事場である、厨房に入ると同時に
「おはようございます。お願いします。」
と言いながら入ると、
「おはようございます」
と金田さんが奥のほうから言った。そこで今日のシフトは俺と金田さんなのだと気づく。金田さんは最近入ってきたばかりの新人で、俺と同じ大学1年の女子であり、大学は料理の専門学校に通っているらしい。そしていつものように俺が手を洗い準備していると、金田さんは
「今週の○○のアニメ見ました?」
と聞いてくる。そう金田さんは大のアニメ好きである。俺は今までアニメ系はあんまり見てこなかったが金田さんにおすすめされたものを見るようになってからすっかりアニメ好きになっていた。とはいっても金田さんほどアニメオタクではないためたまに何を話しているのかわからない時がある。だがまあ金田さんと話すのも面白くてとても楽しい。なので俺は
「ちゃんと見たよ。次がめっちゃ楽しみだね」
と質問に答えた。その後も
「私○○の漫画全巻持ってるので今度貸しますよ」
「まじ?じゃあ読みたくなったら借りるわ」
と何気ない会話をしながら俺はいつものようにごみ出しの準備を始めた。俺のバイト先は駅ビルなのでゴミ出しも従業員階段や従業員エレベーターなどを使い、一階までもっていかないといけないのでその準備を始めた。そしてまとめたゴミを持って従業員エレベーターのある従業員roomへ向かった。思った以上に今日のゴミの量が多く、持ち運ぶのに手こずっていると木村さんが
「大丈夫ですか?手伝いますよ」
と少し持ってくれた。木村さんはほんとにいい人だなと改めて思ったと同時にきっと木村さんがもう少し年齢が近かったら俺は好きになっていたのかなとも思った。そんなことを考えながら、木村さんに手伝ってもらい、なんとか従業員エレベーターのある従業員roomにつき、一人でエレベーターを待っていると、後ろから元気な声で
「お疲れ様です!」
と言いながら一人の小さい女の子が従業員roomに入ってきたので振り返り彼女のほうを見て、俺は、
「へえ~初めて見る子だな。こんな元気に挨拶してくれる子いたっけ?でも制服的にスーパーの隣にあるお肉屋さんのひとだから、同じ駅ビルでバイトしてる子なんだな」
と心の中で思いながら、俺も
「お疲れ様です」
と言い返した。
この時の俺はまだ彼女のことを元気のある子としか思っていなかったのだが、この彼女こそがのちに俺にとっての小さな太陽となる「中村 日向」(なかむら ひなた)であった。
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