拘束プレイとダンジョン一階層

目が覚めた。


私は水の中にいた。


「っ!!??」


お、溺れる!アカっ。アカは!?


辺りを見渡した。


アカは平然とした様子で立っていた。


「プリン。呼吸できるよ」

「えっ……ほんとだ」

「いやー。最初が水の中だと焦るよねー」


その割にはなんか平然としてたように見えたけど。


あー。いや。焦りが一周回って冷静になってたのかな。どうなんだろう。


「とりあえず、どうする?このまま水中探検する?たぶん上に上がれば地上に出ると思うけど」

「……宝箱、ありそうだし、探検しよう」

「おっけぃ」


しっかし。水の中でも歩いたり喋ったりできるのはやはり不思議だ。


ちょっと動きにくいけど。水の中だし仕方ないか。


「ホワイト。一応シールド貼ってて」


そう言うと、私とアカを覆うようにシールドが貼られた。


これで、不意打ちはある程度防げるかな。


私の周りには色んな見たことも無い魚が沢山泳いでいる。どれがモンスターなのかは分からない。かなりの数がいるので、これ全部モンスターだよと言われるときつい。


HPがあるのはモンスター。ないのはオブジェクトとアカから聞いたけど。数がいすぎて見分けつかん。


私たちはしばらく泳いで宝箱を探した。一応、宝っぽいものも探す。宝箱に入ってるとは限らないからね。


すると。


「おっ。あったね。木の宝箱だ」

「幸先いいね」


あー。でも。千あるんだよね。この宝箱。簡単に見つかるのもうなずけるよ。


「中身は何かな?」

「さあ?大したものは入ってないと思うよ」

「いいものだといいけどねー」

「うん」


そう言い合って、宝箱を開けてみる。


中に入っていたのは。


「んーっと。これは……」

「……石?だよね」

「たぶん」


ただの石だった。たしかに綺麗で、装飾品としてはいいのかもしれない。


けど。


「なんの、役にも、立たないよね」

「うん」


なにせ。この石の説明はこうだ。

──────────

綺麗な石。100p。

──────────

終わり。


「……まぁ、うん。最低ランクだろうし。こんなもんでしょ」

「隠されてもなかったもんねぇ」


「「はぁー」」


「つぎいこ、つぎ」

「今度は銅の宝箱でもあるといいけど」


私たちはそれから、もう1つ木の宝箱を見つた。中に入っていたのはこれまた石だったけど。

──────────

魔除けの石。モンスターに投げることで1度だけ戦闘を避けることが出来る。100p。

──────────

さっきのとは違って、ちゃんと使えるものだった。


「中身にもかなりの差があるっぽいね。ポイントは変わらないみたいだけど」

「んー。にしても、木の宝箱から出てくるのは石で統一なのかな」

「さあ?他にも色々入ってるんじゃない?」

「そうだといいね」


それから、しばらく泳いでいると、私たちは大きな建物を発見した。


それは、とても大きな石造りの建物で、神殿のように見えた。


所々が劣化して壊れており、水中にあることも相まって神秘的だ。


それを見た私たちは顔を見合せた。笑顔だった。


「「いこう!」」


「絶対すごいお宝あるよね!」

「先越される前にちゃっちゃと探索しちゃおうか」

「うん!」


そして、探索を開始しようとしたのはいいものの。


やはりと言うべきか、少ないとはいえプレイヤーの姿がチラチラと見えた。


未だ戦闘には転じて居ないものの、おそらく誰かが宝箱を入手したら襲いかかる気でいるのだろう。


「どうする?」

「まぁ、襲いかかってきたら撃退すればいいでしょ」

「複数相手はキツくない?」

「強いプレイヤーはある程度記憶してるから、そのプレイヤーさえ気をつけてればなんとかなると思う」


複数相手はアカに任せよう。私のスキルは燃費悪いからあんまり使いたくないんだよね。


特に、今回は長期戦になるから、温存できるならしときたい。


「じゃあ、できるだけ背後に気をつけながら探索しようか」

「うん」


そして私たちは水に沈む神殿の中へと入っていった。


それからしばらく泳いでいた。


神殿の中はたくさんの通路があった。


「む、また分かれ道だ。どうする?」

「じゃんけんで、勝った方の道に進も」

「おっけー」


私が右、アカは左に居た。その配置はずっと変えてない。


私が右利きで、アカは左利きなので、必然こういう配置になるのだ。


と言っても、アカは右も普通に使える。ゲームするのに両利きだと便利だからって練習したらしい。


さて。


「「じゃーんけーん!!」」


「「ぽんっ!」」


私がぱー。アカがチョキ。


「かった」

「まけたぁー!」


くやしぃ。


「じゃ、左ね」

「うん。次は勝つからね」

「やれるもんならね」


くっ。次は勝つ。


先に進んだ私たちを出迎えたのは、1つの扉だった。


それは仰々しく大きな扉で、所々コケやら海藻やらがついていた。


「当たりだね」

「うん」


喜ぶ私たちに突然、背後から声がした。


「【ディフェンスブレイク】!」

「【サンダーランス】」

「【刺突】!!」


光る剣が振るわれ、電撃が走り、槍が貫こうと私たちを襲った。


しかし。


それらはスライムシールドによって全て防がれた。


そして。


「【魔剣生成】」


アカの手に、黒い刀が握られた。


「覚悟は出来てるよね」


3人組の男性のうちの一人は焦ったように叫んだ。


「くそっ!にげろ!」


逃げられたら面倒だなーと思ったので、一言。


「ほわいと、逃がしちゃだめ」


そう言うと、私たちと3人組をまとめてスライムシールドが包んだ。


「ナイスゥー。プリン」


と、アカは言っていたが、その後に、ま、逃がすつもりはなかったけどね。とぽつりと言っていたのを私は聞き逃さなかった。


アカならたぶんほんとに逃がさないと思う。


退路を絶たれた3人組は、逃げることを諦め一か八かの戦闘を仕掛けた。


アカは剣と槍をするりとかわして魔剣で斬りつけていく。


相手のHPはグングンと減り、焦った相手の攻撃は烈火のごとくましたが、アカは対照的にとても静かに、流れる水のように攻撃をしていく。


……あれ、魔術師なんだよねー。


ありえないよねぇ。とおもう。


結局、勝負はすぐに着いた。


「さ、早く宝箱さがそー」

「うん。相変わらずすごいね」

「まーね」


最後まで、使っていたのは【魔剣生成】だけだった。それくらいの相手、ということなんだろうけどさ。


邪魔者の居なくなった私たちは早速とばかりにその大きな扉を開けた。


そして、中から出てきたのは。


大きなタコの怪物だった。










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