拘束プレイと冥王

学校から帰るとさっそくゲームにログインをした。


「今日は何するの?」

「んー。プリンはまだ第2の街解放してないんだよね?」

「ん?してないよ。なんのことかすら知らないよ」

「よかった。プリンのことだから知らないうちに解放してるのかと」


私をなんだと思ってるの。


「それで?第2の街って?」

「んっとね。東西南北全てにフィールドボスが一体づつ配置されてるんだけど。そのボスをぜんぶ倒したら、第2の街が開放されるの」

「けっこー大変だね」

「うん」


んー。私は北のフィールドボス倒してるから、あと南と東と北か。


「そういえばさ。私が白熊倒した時初めて討伐されたって言われたんだけど、ってことはさ。第2の街解放してる人いないんじゃないの?」


そういうことになるよね。


「いや。一度フィールドボス倒した人が他のフィールドボス倒しても報酬は貰えないの」

「そうなの?」

「うん。だから、プリンは1度もフィールドボス倒したことない人の中で、倒したの初めてってこと」

「へー。それにしても、よく私以外に倒せる人いなかったね。1人ぐらい居そうだけど」


アカみたいなのはそうそういないかもだけど、そうじゃなくても普通に倒せそう。


「んー。まず、フィールドボス倒すまで、レベルは5までしか上がらないの。んで、フィールドボスはだいたいレベル15くらいだから、倒すのすごく難しいの」

「まぁ、そうだろうね」


10もレベルに差があればね。


「それで、フィールドボスに挑むには、1人から6人までの構成じゃないと戦えなくて、最高の6人で戦っても勝つのは難しいの」

「そうなんだ。アカは何人で倒したの?」

「一人」


やっぱアカすげぇ。


私はスライムさんとの共闘だったからなぁ。


「その上ね。白熊に関しては、足場がすごく悪い上、氷による遠距離攻撃は避けるの難しくて、さらにピンチになると強力な範囲攻撃するから、今まで倒せる人いなかったんだ」


へー。そういえば私は序盤に氷の遠距離攻撃無効化したからね。範囲攻撃もなかったし。私はスケートとか得意だったし。相性すごく良かったのかな。


実際、他のフィールドボスと戦っても勝てなかったんじゃないかな。戦ってないからわかんないけど。


「アカなら倒せる?」

「余裕……と言いたいけど。レベル1だときつい。8割の確率で負ける」

「それは私と同じステータス構成で?」

「いや、プリンと同じステータスで、スライムもありなら、ほぼ勝てる。スキルの封印は運もあるから絶対とは言えないけど」

「へー」


さすがアカ。ま、ゲームで私に出来てアカに出来ないことないか。運が絡む要素以外で、だけど。


昔からくじ運だけはいいんだよねぇ。よくアカに妬まれるよ。


「それで、今日は第2の街解放するってことでいい?」

「いいよー。面白そうだし」

「よし!それじゃあまずは東の冥王倒しに行こう。私が最初に倒したやつ」

「ん。わかった」


それから私たちは東の墓地へと向かった。




墓地にたどり着くと、少し空気が冷えた気がした。


墓地には墓石が沢山あって、その内のほとんどが乱雑に横たわっていたり傾いていたりした。


枯れ木や枯れた雑草が入り乱れており、もう日が暮れてしまったのも相まって怖い。


アカは逆にテンションが高い。


「んー!やっぱ夜に来るに限る!どきどきする!」

「相変わらず好きだね。怖いの。私にはよく分からないけど」

「うん!この高揚感たまらないよ」


私はアカの裾を握って離さない。さらにホワイトを片腕に抱えて強く抱き締めた。


1人では絶対来ない。少なくとも夜には来ない。来たくない。


帰りたい。


「さ、しばらく進むと冥王出てくるから。ちゃっちゃと倒そ」

「こわい?」

「ちょっとおっきめの骸骨だよ。そんなに怖くないよ」

「ほんと?」

「ほんと」


ほっと一息ついた私にアカが言った。


「少なくとも私には」

「よし、帰ろう」


そうしよう。


「だいじょぶだって。怖くないって」


アカはニコニコしながら私のうでをぎゅとつかんだ。


「……楽しんでるでしょ。怖がる私を見て」

「ちょっとかわいいなって思ってる」

「いじめだ」

「あはは。なんのことやら」


ここに登場するのはゾンビやらスケルトンやらだけど。こいつら地面から出てくる。


びっくりするのでほんとにやめて欲しい。


強くはない。さっきから出てきた瞬間アカが倒してる。


でも、こわい。


そうやってビクビクしていると、すっと私の横腹を何かが撫でた。


「ひっ!アカ!なにか通った!触れた!かえろ!おねがい」

「だいじょうぶ。私の指だよ」

「……」


銃を構えた。


「【氷雪──」

「まったまった!ごめんって」

「もうしない?」

「しないよ」


私はアカの体をギュと掴んだ。


「離れないでね」

「あ、うん。それはいいんだけど。なんで胸つかむの」

「何かされたらもぎ取る」

「……このゲーム、どんな攻撃でも部位欠損はしないよ」


そうなんだ。


「とりあえず試していい?」

「だめだよ?」


残念。


「っと。そろそろ冥王出てくるから。戦闘準備して」

「はーい」


そう言うと私はアカの胸を1回揉んで手を離した。


「んっ。ちょ、なんでもんだの!?」

「快感あるんだ。このげーむ」

「っ、このっ」


顔真っ赤。りあるぅー。


そうやってふざけていると、私たちの前の土が大きく盛り上がった。


「お、ボスかな」

「そうだよ」


その土の中から、3mくらいだろうか、ボロボロのローブと身の丈ほどの巨大な杖を持った骸骨が現れた。


「ニ、ニンゲン。ニンゲンッ!ウラメシイ。シアワセソウナ、ソノカオ、ゼツボウニソメテヤルッッ!」


あんまり怖くないな。アカの胸揉んだからかな。もうちょっと揉んだらもっと怖くなくなるかな。


「あれ?アカ、どうして離れてるの?もうちょっと近づきなよ」

「……貞操の危機を感じるからいや」


ちっ。


「【ヒャッキヤコウ】」


骸骨がそうつぶやくと、辺りの土が盛り上がり、次々とゾンビやらスケルトンやらが出てきた。


「お、アカと同じスキル」

「まぁ、私のスキルの大部分このモンスターから貰ったスキルだからね」


なるほど。


っと、それより、応戦しないと。


「【捕獲】【威圧】【公爵の威厳】【霰雲】【氷の世界】ホワイト。シールド貼って」


私の周囲をシールドが囲い、氷が地面を這う。


30メートルを氷の世界に変えた。その範囲で十分。地面が凍り、霰が降る世界。私の領域。


今回はパーティーを組んでいるので、アカの能力値までしか下げれないけど、ま、十分でしょ。


「私も戦おっと【百鬼夜行】【死界】【魔剣生成】」


アカの辺りにモンスターの軍勢が現れ、白い濃霧が立ち込め、鞘からは黒く光り輝く刀身が現れた。


そして。


「1の魔弾装填」

「死神流刀剣術。仇の音」



「【氷輪風斬】」

「【禁忌の序曲】」


銃口から恐ろしい速度で放たれた輪状の氷は、周囲のモンスターを刻みながら骸骨へ肉薄すると、その体を引き裂いた。


そして、いつの間にか骸骨に接近していたアカは、その黒い刀を骸骨目掛けて振り抜いた。


ほぼ同時に直撃した両者の攻撃は、いとも簡単に骸骨のHPを削り切った。


『フィールドボスを討伐しました』

『レベルが上がりました』


「あれ?めっちゃ弱くない?」

「うーん。まぁ、こんなもんでしょ。冥王は魔術師タイプだから、VITもHPも低いし」


うーん。そうなのかな?白熊に比べても弱いような。


そう言えば。


「アカがさっき使ったのってなに?」

「【百鬼夜行】、【死界】、【魔剣生成】と【禁忌の序曲】?」

「そう。あ、百鬼夜行は分かる。1日に一度だけ、モンスターいっぱい出すやつね。この前聞いた。」

「んっと。じゃあ【死界】は、濃霧作って、その中だとめちゃめちゃ確率低いけど、私の攻撃全部に即死効果着く。確率は千回に1回くらいだけどね」

「いや、強いよ」


どんな攻撃でも油断出来ないんでしょ?こわ。


あ、私はどんな攻撃でも当たったら死ぬか。1回耐えるけど、あとはほぼ即死だし。関係ないね。


「んー。【魔剣生成】は、HPとMPが生成中ずっと減る代わりに、INT依存の強さの刀身作る」

「強くない?」

「まぁ、ね。でも、このスキルで減ったHPとMPって回復アイテム効かないから、諸刃の剣なんだよね」


あと、こんなことになっちゃう。とそう言ってアカは袖をまくった。


するとそこには真っ黒なアザが浮かび上がっていた。


「わぉ。痛くないんだよね?」

「痛くないよ。むしろ厨二心燻られていい気持ち」


例え痛みが伴ってもアカなら許容しそうだなぁ。むしろいいって。


「【禁忌の序曲】は、【死神流刀剣術】ってスキルに内包されてる技だね。当たるとめっちゃ高威力。避けられると私にダメージ入るってやつ」

「へー」


【死神流刀剣術】ってのは、私の【六の魔弾】みたいな感じか。


さっき使った一の魔弾【氷輪風斬】は、高威力の輪っか状の氷を回転させながら打ち出す。【ローリングマスター】とも相性がいい。


他にも【六の魔弾】は、攻撃もう二つ、バフ1つ、デバフ1つ、攻撃、防御、バフ、デバフ全部ひっくるめが1つの合計六つ。一日1回しか打てないのが残念で仕方ない。


ちな、アカの【死神流刀剣術】は、13の型。アカが言うには音?らしいけど、それと、もう2つ奥義見たいのがあるらしい。


多い。つよい。私が言うのもなんだけど、チートだ。


ゲームバランスだいじょぶそ?


でも、アカでも勝てない人もいるらしいし。


怖いよねぇ。


ま、いっか。そんな強い人とは戦わない方針で行こう。最強目指してないし。


それよりも。


「次行こ。次はどこ行く?」

「西に行こう」

「おっけぃ。ん?西行くなら南先いこーよ」

「……できるだけ、長くプリントいたいの」


お前は私の彼女か。


「はいはい。ずっと一緒にいよーねー」

「うんっ」


ごろごろと猫みたいにくっついてくるアカを撫でながら思う。


さてと、次のフィールドボスはどんなかな。


今回早く倒しすぎて面白くなかったから。


次はもうちょっと遊び要素多めにしよう。


そう思いながら西へ歩き出した。



























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