一緒に遊びに行った日。
裕子ちゃんとの別れは思ったよりもあっさりしていて、スマホでメッセージを交換して終わらせただけだった。
今までの裕子ちゃんとの思い出はなんだったんだろう。虚しいな。
でも、僕と裕子ちゃん、あの時点で二人とも浮気していたようなものだったと思う。だから、時間の問題だったのかもしれない。
それでも、なんかしっくりこないって言うか。
失恋がてら、今日は休みだったから、俺は真奈ちゃんとショッピングモールへ出かけるようと誘ってみた。
「自分が失恋したからって、私をデートに誘うって何?俺は乗り換えないって言う態度取っていたくせにぃ。」
真奈ちゃんは意地悪そうな笑顔で俺を見て言った。それに対して、正しいっちゃあ正しいけど、俺は少し苛ついてしまった。
「そうだよね。ごめんね。」
「しょうがないなぁ。旭日さんに養ってもらっているんだもん。付き合ってあげる。」
真奈ちゃんが誘いに乗った瞬間に、俺の目の前で服を脱いで着替え始めた。
「いきなり、着替え始めないでよ!」
「だって、部屋着じゃ決まらないでしょ?」
まだ、段階踏んでないのに。と思いつつ、俺は後ろを向いて、俺も着替えることにした。
お互い少しオシャレな格好をして、真奈ちゃんを車に乗せて、外へ出てみた。相変わらず、田舎だなぁ。電柱と田んぼばかりだ。僕の地元と少し違う。
ショッピングモールの駐車場に着いて、駐車して車から降りて僕と真奈ちゃんは、ショッピングモールの中に入った後、二人でやることを思いつかなかったから、とりあえず、フードコートに行った。
財布を持っているのは俺しかいないから、真奈ちゃんが欲しいものと同じものを俺は買って、席に着いて二人で食べた。
久しぶりだ。何故か照れるしドキドキする。
二人で、少しぼそぼそ話しながら月見うどんを食べていると、鬼が一瞬また見えて、めまいがしたので目を閉じて眉間をつまんだ。
「あっ、旭日さん、大丈夫ですか?」
「あー、ごめん。大丈夫。」
僕は大丈夫なそぶりをして、目を開けた瞬間、若干怒っている顔の真奈ちゃんと知らない男の子が話しているのを見た。
「…真奈子ちゃん、この人、誰?」
「私の愛する、社会人の公務員の彼氏。」
と淡々と答えていた。
…え?彼氏?
色々、真奈ちゃんにも事情がありそうだったので、一応、話を合わせてあげてみた。
「え?そ、そうだよ。僕の彼女に何か用?」
「いつの間にこんな男と?」
「どんな人と付き合うのは、真奈ちゃんの勝手でしょ?で?君、誰?」
俺は少し大人気ないけど、真奈ちゃんに話しかけてきた、雰囲気がイケメン風の男の子に睨みつけてみた。
「あぁ。別に何でもないです。すみませんでした。」
と言い残して、去ってしまった。
なんだったんだろう。真奈ちゃんって、案外モテんのかなー?あー言う、女の子好きな男も結構いるよね。
俺は少し不機嫌そうな顔して、真奈ちゃんに聞いてみた。
「あの男の子、誰なの?」
「私もあんまり記憶がないんですけど、何か私のことが好きだった癖に色々、何か私の芸術的感性とか真似ばっかして、それを自分の作品として売り付けていた音楽家兼アパレルデザイナーとでも、言っておこうかな。」
「へえ。」
「でも、自分が何の学校へ行って何を勉強していたかとか、記憶がないんですよねー。あの男が嫌いなのは、記憶に残ってるんですけど。」
初耳だ。某ホラー映画みたいにテレビから出てきたからか知らないけど、記憶があんまりないだなんて。
気を取り直しにゲームセンターに行って、百円玉に両替して、真奈ちゃんと二人で、格闘ゲームやシューティングゲーム等して遊んでいた。あと、恥ずかしいけど、真奈ちゃんと二人でプリクラを撮った。
学生時代は遊んでなかったし、女性経験も社会人になってからだから、正直、女の子とこんな遊び方をしたことがない。
正直、初めてかもしれない。こんな所でゲームして女の子と遊ぶなんて。若い女の子からのリクエストだったからね。まるで遅れてやってきた青春を過ごしているような気分だった。
ひと段落着いて、俺たちはまたフードコートへ行って遊び疲れたので、飲み物を飲むことにした。
真奈ちゃんと二人で撮ったプリクラを眺めて僕はニヤけてしまう。
「どうしたんですかー?まさか、女の子と二人でプリクラ撮ったことなんですかぁー?」
「ま、まさかっ!そんなことないでしょ!」
「しょうがないなぁー。この優しい真奈子様に感謝してくださいねー。」
「調子に乗ってんじゃねえぞ。クソガキ。」
と、俺は少し、ボソッと言ってしまった。
「ひっどーい。」
真奈ちゃんはふくれっ面になってしまった。けど、何か、彼女の反応が可愛くてつい、構ってしまうというか。
「ごめんごめんって。」
二人でこんな感じでイチャついていたら、今度は僕の同僚の刑事と会った。
「あ、旭日。」
「あー、お疲れ様。今話している女の子はそのー…。」
「女の子?誰のこと?お前、何を言ってるんだ?」
え?
「隣に誰もいないじゃん。誰と話してんの?」
次の瞬間、俺は真奈ちゃんに目を向けたら、真奈ちゃんがいなくて、彼女が頼んだオレンジジュースだけが残っていた。
そして、その日に撮ったプリクラを見たら、加工された俺しか映っていなかった。
「旭日、お前、何か最近変だったぞ。お前、ちょっと病院に行くか?」
あの男の子には見えていたのに、他の人には真奈ちゃんが見えていない?
「とりあえず、お前、全力で休めよ。上にはこの事一応黙っておくから。」
「え…?あ、あぁ。ありがとう。」
この時以来、ショッピングモール内で真奈ちゃんのことを見知らぬ人達に聞いても、真奈ちゃんのことを全員見てないと言って、真奈ちゃんの姿も現れなくなった。
俺は焦って、閉店ギリギリまで真奈ちゃんのことをいろんな人に聞きに行ったけど、やはり、真奈ちゃんのことは誰も知らなかったし、この日に真奈ちゃんに話しかけてきた男の子にも、真奈ちゃんのことを聞いたら、存在は知っているけど、話しかけていないと言われてしまった。
そして、一人でショッピングモールを後にして、俺は家へ帰ってしまった。
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