第227話「グレゴワール様! シルヴェーヌ姉! そんな些細な事は、どうでも良いではございませんか!」

俺のコメントを聞き、グレゴワール様が同意する。


「うむ、ロイク君の言う通りだ。我々家族にこれから必要になるもの、3つの徹底か。金儲け、つまり蓄財、すなわち経済力。次に人……つまり貴重な人脈の構築と良好さの維持、更なる発展と拡大、最後に情報……つまりありとあらゆる情報の迅速な収集と真贋の確認、優先順位をつけての取捨、それらの有効活用。……うむ! 他にもいろいろあるとは思うが、どれも納得だな!」


ここで「はい」と手を挙げ、質問したのはシルヴェーヌさん。


「私はロイク様のおっしゃる事、何となくは分かりますが、もう少し具体的に知りたいと思います」


シルヴェーヌさんの言葉を聞き、ジョルジエット様以下、他の女子達も頷く。


グレゴワール様が言う。


「……だそうだ。ロイク君、もう少し具体的に説明してくれたまえ」


「分かりました。補足説明致します。……まず金儲け、蓄財、すなわち経済力ですが、金儲けという表現はベタで品がありません。ですが、我々家族が生活するのに金は絶対に必要です。金は労働の対価であり、モチベーションが得られるもの。または数多の人々が生産した物を得る為の対価として必須なのです」


「…………………………………………」


その場の誰もが黙って聞いていた。


俺は引き続き、話を進める。


「誰もが知っていますが、金で愛は買えません。だが、金は潤いと余裕を与えてくれると思います。我々家族が、潤い且つ余裕を持った愛の生活を送る為に、生きがいを持てるような仕事を、且つ効率的な蓄財の方法をいろいろと模索すべきだと思います」


「…………………………………………」


「次に人……つまり人脈の構築と良好さの維持です。貴重な人脈なら尚更です。ありきたりな表現ですが、人間はひとりでは生きていけません。我が家にはいろいろな人の助けが必要です。俺自身、いろいろな人に出会い、助けられ、ここまで来ました。これから我々家族は、行動、活動範囲も広がりますし、新たな出会いも多くなる。利害関係のみというわけではありませんが、我々家族を支えてくれ、またはこちらから支える多くの方々と良き関係を結び、その関係を維持、更に向上、拡大させて行きたいと考えます」


「…………………………………………」


「最後にありとあらゆる情報の迅速な収集と優先順位に基づく取捨、それらの真贋の確認、有効活用です。情報を上手く活用すれば、我々家族は数多のメリットを得る事が出来ます。魔法で言えば、常に索敵、魔力感知を行い、いち早く状況を把握し、我々家族は、いろいろな事に備え、素早く対処しなければならないのです」


「…………………………………………」


「迅速というのは、まず情報とは生ものと一緒で鮮度が命。先手必勝、先んずれば人を制す、とも言いますから。また誤った情報に惑わされないようしっかりと真贋を確認し、有益か否かを素早くも慎重に判断、使える情報をしっかりと選択しなければなりません。最終的に使える情報を有効活用し、家族にメリットをもたらす事をこころがけるべきなのです……だいぶ、はしょりましたが、とりあえずは以上です」


「…………………………………………」


俺が話し終わると……


グレゴワール様も、女子達も全員が俺を見て、

ひどく驚いたような顔をしていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「…………………………………………」


しばし、誰もが無言で、俺をじ~っと、見つめていた。


俺、何か、変な事言ったかな?


と思っていたら、最初に口を開いたのはグレゴワール様である。


「ロイク君。……君は本当に16歳か?」


「え? そ、それはどういう意味なのでしょう?」


「どうもこうもない。人生経験がまだまだ浅い16歳で、ここまで弁が立つとは……まるで、君は20代半ばの大人だぞ」


おお、グレゴワール様、鋭い突っ込み。


「弁が立つ? 20代半ばの大人?」


「うむ、君がそこまでしっかりした考えを持ち、且つ適切な言葉で語れるとはな……今すぐ、私の内閣の閣僚に加えても良いくらいだ」


いや、今すぐ俺が内閣の閣僚にって……


ここで「はい」と手を挙げ、質問したのはまたもシルヴェーヌさんだ。


「閣下」


「何だね? シルヴェーヌ」


「私も前々から思っていまして、ですから、先日ロイク様へ申し上げましたわ。まだ16歳なのに全然そう思えません。中身はまるで大人の男性だと」


「うむ、私もそう思うよ」


「はい、それに弁が立つだけでなく、とても思慮分別がおありです。いつも落ち着き払い、細やかな気配りをされますわ」


「うむむ……ロイク君、改めて聞こう、どうしてだね?」


ああ、何だか、話がヤバイ方向へ進んでいる。


と思ったら、救世主が現れた。


「はい」と手を挙げ、発言の許可を求めたのは、アメリー様だ。


「グレゴワール様! シルヴェーヌ姉! そんな些細な事は、どうでも良いではございませんか! ロイク様は、とても頼りがいのあるお方なのです。15歳の私とは、たったひとつしか違わないのに大人の魅力がバリバリ出ている! 本当に素敵ですわっ!」


すると、ジョルジエット様も追随。


「そうですわ! お父様! シルヴェーヌ姉! アメリーの言う通り、そんな些細な事はどうでも良いのです! 竜退治に、大破壊の収束! ロイク様は全てにおいて、我々が計り知れない、とんでもなく規格外のお方なのですわっ!」


続いて、シャルロットさん、トリッシュさんも俺を大絶賛。


しまいには、シルヴェーヌさんも俺を「規格外だ」と認め、褒めてくれた。


こうなるとグレゴワール様も、矛を収めるしかなく、苦笑。


その後いろいろな確認をして、グレゴワール様から新たな話もあり……


この夜の合同連絡会議は和気あいあいで、無事、終わったのである。

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