第225話「おいおい、ジョル、私も家族だぞ」

トークは一方的に押し切られた感はあったが……

アルセーヌ・サニエ子爵、イザベル奥様は、概ね俺に好意的であった。


「ア、アメリーさんを、僕にください!」


とサニエ子爵夫妻へ伝える事も出来て、


「喜んで!」


というどこかで聞いたような返事を貰い、『儀式』は無事完遂した。


元々、グレゴワール様がサニエ子爵に内諾を得た形とはなっていたが、

これで正式に俺はアメリー様と婚約した事となった。


……その後、場所を移し、大広間で一緒に昼食しながら歓談。


満面の笑みを浮かべるサニエ子爵は、

王国貴族として、義理の息子となる伯爵で王国執行官たる俺の

シンパとなり、大いにバックアップしてくれるという。


しかし、ギブアンドテイク。

世の中はそう甘くはない。

バックアップして貰うには見返りが必要である。


使用人も居る公の食事の場だし、

サニエ子爵とイザベル奥様は、さすがに見返りを言わなかった。


……だが、平民の俺でも分かる。


見返りとは、貴族家としてお約束の目標設定である。


つまり、サニエ子爵家の名と爵位を上げ、現当主の子爵を良い役職に就け、

出来る限り領地を広げる事だろう。


そして一番求められる見返りとは、

アメリー様との間に、元気で聡明な子供をたくさん作る事だ。


まあ、結婚して子供を作るのは、

アメリー様が、ロジエ女子学園を卒業する『3年後以降』と決まっている。


……俺は18歳になったアメリー様と結婚するのだ。


それまでに『出来る事』をやっておこうと思う。


という事は、子供を作る以外、今の俺にやれる事は、

サニエ子爵家の名と爵位を上げ、子爵を良い役職に就け、領地を広げる事。


でも言うは易く行うは難し。

一朝一夕に出来る事ではない。


それにまだまだ情報不足。

俺はもっともっとサニエ子爵家の事情を知り、把握しなければならない。


この件で、アメリー様と相談した俺は、食事へ入る前、

特別客室にて、サニエ子爵夫妻と4人だけで相談。


ルナール商会のように懸念事項、問題点を出して貰う事にしたのである。


次回、サニエ子爵夫妻と会った時、聞き取りをし、

その後、解決の為の提案をするつもりだ。


当然、サニエ子爵家の寄り親である、グレゴワール様とも相談しなければならない。


そんなこんなで……

義両親に認めて貰う儀式は無事終了。


俺とアメリー様は、リヴァロル公爵家邸へ帰宅したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


帰宅した俺とアメリー様は、夕食前、グレゴワール様とジョルジエット様へ報告。


話を聞いたグレゴワール様は、「予想以上に上手く行ったな!」と大喜び。


一方、ジョルジエット様は、「おめでと! アメリー!」と言い、

アメリー様の手をぎゅぎゅ!と握り大喜び。

当然、アメリー様も満面の笑みで、

「ジョルジエット姉、ありがとうございます!」と言う。


続いて俺は、大広間前にスタンバっていた秘書達3人へも簡単に報告した。

全員、儀式が無事完了した事を喜んでくれた。


そして、夕食。


お約束と言う事で、

ジョルジエット様、アメリー様は俺が座った席の両脇に座って「あ~ん」攻撃。


そしてグレゴワール様も、俺が婚約した秘書、シルヴェーヌさん、シャルロットさん、トリッシュさん、タイプが全く美女3人に囲まれ、

ちやほやされる形で、楽しく食事を摂っていた。


食事が終わったら、全員で夜の合同連絡会議を行う。

グレゴワール様に許可を取り、今夜からジョルジエット様、アメリー様も加わる事となった。


まだまだ業務にはかかわらず、まずは聞き役に徹した、

オブザーバー的な参加になる。


ジョルジエット様、アメリー様は以前から、

俺の秘書をやりたいと希望を出していた。


まあ、卒業してからという事にはなるけれど。

その秘書修行の為と、俺の仕事を知りたいとの事。


更には、姉妹の契りを結ぶほど、仲間意識が強くなった秘書達と、

仲良くやりたいのだろう。


そっかあ……いずれはその中へ、ルクレツィア様も加わるだろうなあ……と思う。


夕食が少し押したので、ジョルジエット様、アメリー様が参加するのと、

行き帰りの移動時間がもったいないと、いう事で、今夜は本館の客間でやる事となった。


すると、何と何と!

ご機嫌なグレゴワール様までが「今回イレギュラー参加する!」と言い出したのだ。


対して、ウチの秘書達とアメリー様は「大歓迎!」という表情であったが、

ジョルジエット様だけは「ぶ~ぶ~」と不満顔であった。


聞けば、ジョルジエット様は

「家族だけで、やりたいの、部外者はNG」という事らしい。


「おいおい、ジョル、私も家族だぞ」


と苦笑いするグレゴワール様。


確かに、ジョルジエット様の実のお父上で、俺にとっても義理父なんだけどなあ。


最近は、グレゴワール様に対して、結構優しくなっていたジョルジエット様だったが。グレゴワール様、カワイソス。


という事で、新たな形となり、今夜の合同連絡会議が始まったのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る