第217話「7人の1個連隊で来た俺達を見て、3人はさすがに驚いた様子だ」

なんやかんやで……午前9時30分を過ぎた。


『公式発表』の、

午前10時30分開場まで後1時間。

午前11時の開始まで後1時間30分。


そろそろ支度にかからねばならない。


ほぼ準備は完了している。

俺がやる事はそうない。

だが、王立闘技場のフィールドへ、

討伐したオーガの死骸を3千体並べなくてはならないのだ。


でもグレゴワール様はまだ俺達が居る『王国宰相控室』へ戻っては来ない。


いまだに『王族控え室』でアレクサンドル陛下、バシュラール将軍と打合せをしているのだろう。


ただ時間が押している。


俺から『王族控え室』へ出向いて、指示を仰いだ方が良いだろう。


一方、女子達は盛り上がって、まだまだ話が終わらない。


このまま残して行くのもいかがなものかと思うが……


仕方がない。


女子騎士のアンヌさん、ジュリーさん、元女子騎士のシルヴェーヌさんが居るし、

入り口にも警護の騎士が立っている。


警備的には問題ないはずだ。


「会場のセッティングがありますから、俺はそろそろ、行きますね。『王族控え室』へ行き、グレゴワール様から指示を仰ぎますよ」


すると、ルクレツィア様が、


「ロイク様! 詳しい事はさておき、私はお兄様とグレゴワール殿、バシュラール将軍へ、とりあえず結婚合意の一報だけを入れたいのですが……」


ああ、そうかあ。


俺との結婚に自分の意思で合意した事を兄上アレクサンドル陛下へご報告したいんだ。


そもそも、ルクレツィア様を『王国宰相控室』へエスコートしろとアレクサンドル陛下が命じたのは思惑があってのことだと思う


思惑とは、俺がルクレツィア様をスキンシップ――エスコートする事で、

会話もしやすくし、心身とも距離を縮め、結婚に支障がないようにする事。


この作戦を立てたのは、アレクサンドル陛下とグレゴワール様だったのだろう。


結果……その仕掛けは大成功した。


俺とルクレツィア様は手をつないだ事もあり、会話は弾み、心は通い合い、

結ばれる事に何の不満もなく合意したからだ。


加えて、ジョルジエット様以下の嫁ズとも、

懇親を深める事が出来たのは予想以上だった。


ここで「はい!」と手を挙げたのが、ジョルジエット様だ。


「ロイク様! ルクレツィア様が、陛下とお父様、バシュラール将軍へ結婚のご報告にいらっしゃるにあたり、私達からも、ひと声おかけしたいのですわ」


ジョルジエット様はそう言いながら、俺を見てにっこり。


「宜しいですか、こう申し上げます。陛下、お父様、バシュラール将軍。ご心配する事は全くありません、私達はルクレツィア様を盛り立てつつ、夫君のロイク様とともに妻6人の7人家族で助け合って暮らして行きますからと!」


そうか!

ルクレツィア様が結婚のご報告するにあたり、俺達家族7人の団結力を見せ、

アレクサンドル陛下が、妹君の結婚生活をご心配されないよう、

強力な援護射撃をするということか!


俺同様に、ジョルジエット様の意図を理解し、ルクレツィア様は涙ぐむ。


「ジョ、ジョルジエット! あ、ありがとう!」


ルクレツィア様へ、笑顔のVサインを送ったジョルジエット様。


更に声を張り上げ、


「アメリーは勿論! シルヴェーヌ姉! シャルロット姉! トリッシュ姉! 全員で一緒に『王族控え室』へ行くのですよ」


有無を言わさずという面持ちで、きっぱりと、言い切っていたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


という事で……


俺は帰りもルクレツィア様をエスコートしつつ、『王族控え室』へ。

ジョルジエット様、アメリー様、シルヴェーヌさん、シャルロットさん、トリッシュさんも引き連れて。


警護騎士のチェックを受け、入室。


やはり、アレクサンドル陛下、グレゴワール様、バシュラール将軍は最終の打合せをしていたみたい。


7人の1個連隊で来た俺達を見て、3人はさすがに驚いた様子だ。


まずルクレツィア様が、息を大きく吸うと吐き、大きく声を張り上げる。


「お兄様! グレゴワール殿! バシュラール将軍! ご報告致します! このたびルクレツィアは、ロイク・アルシェ様に嫁ぎますわ! 同じくロイク様の妻となる、ジョルジエット達とともに幸せになります!」


と言い放ち、


続いてジョルジエット様が、


「陛下! お父様! バシュラール将軍! ご心配する事は全くありません! 私達はルクレツィア様を盛り立てつつ、夫君のロイク様とともに妻6人の7人家族で! 助け合って暮らして行きます!」


と言い切っていた。


対して、アレクサンドル陛下、グレゴワール様、

バシュラール将軍3人の反応はといえば、


「う、うむ! そうだな! 良かったな! ルクレツィア! おめでとう!」

「お、おお、ルクレツィア様! おめでとうございます!」


アレクサンドル陛下、グレゴワール様は驚きつつも、

「うんうん」と頷き、「してやったり」という感じであったが、


俺がルクレツィア様をエスコートした理由の説明は受けたかもしれないが、

ただひとり、「事情を全て知らないであろう」バシュラール将軍だけは、

現実を受け入れられないらしい。


いくら大破壊を収束させたとはいえ、ど平民の俺が、

王女様に公爵家令嬢、子爵家令嬢に元女子騎士、

大手有名商会の会頭孫娘、そして、元気印のボーイッシュスレンダー少女6人を嫁にする。


加えて、全員が超美人と くれば、

「何だこいつ! 信じられない!」と思うのも無理はない。


「……………………」


バシュラール将軍は、しばし無言のまま、俺達を見つめた後、軽く息を吐き、


「ルクレツィア様、おめでとうございます!」


と告げた後、呆れたように微笑んだのである。

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