第212話「ははははは! ルクレツィア! ロイクにしっかりエスコートして貰え!」
王立闘技場『王族控え室』にて、俺は初めて王女ルクレツィア様と言葉を交わした。
その後、バシュラール将軍は長椅子へ。
俺は別の椅子へ座り、しばし歓談。
話題はさりげない雑談から始まり、本日の公式発表の段取りがメイン。
簡単に、はしょって言えば、
午前10時30分開場。
この時点で、フィールドへ討伐したオーガの死骸を展示。
午前11時、公式発表開始。
司会進行は宰相グレゴワール様。
グレゴワール様一旦退場。
簡単な挨拶の後、
アレクサンドル陛下、ごあいさつ。
そして、陛下による大破壊収束の公式発表。
アレクサンドル陛下一旦退場。
ここで、バシュラール将軍登場。
バシュラール将軍による大破壊発生から、収束までの経緯説明。
ここで俺、登場。
バシュラール将軍からのねぎらいの言葉を頂く。
ここでグレゴワール様、再登場。
同じく俺へねぎらいの言葉をかけ、大破壊収束の功労者として、
伯爵の爵位授与を告げる。
ここでアレクサンドル陛下再登場。
同じく同じくねぎらいの言葉をかけ、爵位授与を告げ、勲章を授ける。
以上で終了。
アレクサンドル陛下、ルクレツィア様お帰り。
グレゴワール様、バシュラール将軍、俺、お帰り。
警護の騎士、兵士を残し、
本日は午後4時まで王立闘技場のフィールド解放。
討伐したオーガを自由に王国民へ見学させる。
午後4時で閉場。
ちなみに特別貴賓席にて、ルクレツィア様が、
貴賓席にて貴族達が、特別席にて冒険者ギルド幹部、ルナール商会関係者が観覧するとの事。
スケジュールと段取りの確認をして、ここでアレクサンドル陛下が軽く手を挙げた。
「陛下、何かおありでしょうか?」
「うむ、ルクレツィアにも入って貰おうと思ってな」
「え!? わ、私に!? は、入るって!?」
「ああ、ルクレツィアには、ロイクへ勲章を授けるプレゼンテーターをやって貰おうと思う」
「ええええ!? プ、プレゼンテーター!?」
「うむ、ルクレツィアよ。私がロイクへ爵位授与と勲章授与の旨を告げるから、お前は私から勲章を受け取り、ロイクにかけて貰う」
「ええええ!?」
「グレゴワール、フレデリク、問題ないな!」
「はい! 全く問題ないと思います!」
「陛下! 宜しいかと思います!」
あららら。
まだ戸惑っているルクレツィア様をよそに、アレクサンドル陛下、話を強引に進めちゃった。
ルクレツィア様、前振り全くなく、いきなり言われたらしく、
どっと疲れてため息が出てる。
にこっと笑ったアレクサンドル陛下、
「ロイク、ルクレツィアを連れて、グレゴワールの控室で休んでいてくれ。あ、そうそうグレゴワールのふたりの秘書をこちらへ来るよう伝えてくれ」
……ええっと。
アレクサンドル陛下が、俺へ直で命令されるのって珍しいな。
俺がルクレツィア様を『王国宰相控室』へお連れして休憩、
秘書室長の、アルフォンス・バゼーヌさん、
第二秘書のフォスティーヌ・アルノーさんへ、
『王族控え室』へ行くよう伝えれば良いのか。
『王国宰相控室』へ行くまで、
俺がルクレツィア様とふたりきりにもなる!?
まあ、俺の秘書達が居るから、さすがに部屋でふたりきりにはならないけど。
何かあれば、ストップをかけるはずのグレゴワール様は、何も言わない。
……問題はナッシングだろう。
「かしこまりました!」
と俺は大きな声で返事をしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アレクサンドル陛下の指示通り、俺とルクレツィア様は、
『王族控え室』を出る事に。
その出がけに、アレクサンドル陛下は、
「ははははは! ルクレツィア! ロイクにしっかりエスコートして貰え!」
「はっ、はい!」
ルクレツィア様は、慌てて返事をし、
「ロ、ロイク様。宜しくお願い致します」
と言い、そっと手を差し出して来た。
補足しよう。
エスコートとは、公共の場や社交場、帰宅の際に、
男性が女性に付き添う事であり、またはそれらに付き添う人を指す。
環境が充分に安全でない場合や、補助や警護を必要とする人に対し、
付き添い、送り届ける意味を含むのである。
護衛の意味が強いため、送る女性を安全に、
気持ち良くリードすることが求められる。
……ええっと、前世のケン・アキヤマは、リアルな生活で、
ジェントルマンとして女性をエスコートなんかした事はない。
でもでも!
こういう場合、ステディ・リインカネーションを、
ジェントルマンとしてアラン・モーリアでやり込んだ経験が役に立つ。
……俺はエスコートの作法について、記憶をたぐる。
エスコートする女性には、優しく手を差し伸べてあげる。
段差のある場所や椅子から立ち上がる時は、
男性が女性を先導するように手を引いてあげる。
女性が迷子になったり、離れたりしないよう、自然に腕を貸してあげる。
……ってのもあるけれど……初対面のルクレツィア様へそれはやり過ぎだし、
アレクサンドル陛下の目の前で行う勇気も俺にはない。
え?
オーガやドラゴンとは戦う勇気があっても、可愛い女子と腕を組む勇気がない?
何だよ、それ! お前、くそだっせえ!
ジョルジエット様、アメリー様には腕を取られて歩いてるじゃないかよ!
……すまん。
言い返せない。
「し、し、失礼します。ルクレツィア様!」
という事で、俺はそ~っと、ルクレツィア様へ手を差し出し、
彼女の手を取ったのである。
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