第205話「さあ! ロイク様! 皆様! 会頭がお待ちです! どうぞ、お入りください!」
ギルドマスター、テオドール・クラヴリーさんは俺を大絶賛。
ロイク様、貴方は、まさに私が子供の頃、夢見て憧れた、伝説の勇者なのです。
……とか。
ロイク様が、我が冒険者ギルドの近しい身内という事をとても誇りに思う。
……とか。
そして、昇格もしてくれた。
俺はランクがAから最上位のSとなり、役職はエヴラールさん達サブマスターより上、
ギルドマスターのテオドールさんに準ずるという最高顧問となったのだ。
最高顧問の執務室も新設してくれるというし、具体的な条件提示こそないものの、
ギャランティも大幅にアップするみたい。
今まで通り、出勤日、出退勤時間、労働時間は自由。
仕事の義務、ノルマなし。
希望しない限り、幹部会議に出る必要もなし。
楽ちんだ。
加えて、いつでも好きな依頼を受諾可能。
王国執行官の仕事をメインに、ルナール商会の仕事も優先して構わない。
俺から意見、提案、要望があれば、内容を精査し、案件によっては検討する。
という至れり尽くせりさ。
とんでもなくフリーダムじゃないっすか。
な~んか、俺が就任した最高顧問の最高って、
最高の仕事内容と条件、待遇って意味じゃね?
その上、テオドールさんは、
「これも会議で決議されましたが、最高顧問は、ロイク様が亡くなるまで終身雇用ですよ、新たな契約書に記載致します」
とか言ってくれた。
おお!
定年どころか、死ぬまで?
終身雇用なのか!
俺は素直に大喜び。
秘書達イコール嫁ズも一緒に大喜びしてくれた。
万が一の万が一、他の仕事に何かあっても、冒険者ギルドのみで食っていけるもの。
という事で話は大いに弾む。
話題は、俺の仕事の細かい条件面とか、
冒険者ギルドの依頼で、完遂したトレゾール公地の竜退治が中心となる。
テオドールさんが、竜退治の模様をいろいろ聞きたがったので、
念の為、俺は事前に了解を取り、面白おかしく話す。
依頼は基本的に守秘義務があるからね。
……という事で更に話は弾む。
そんなこんなで……
あっという間に時間は過ぎ、午前11時前となった。
壁に掛かった魔導時計を見た、上機嫌のテオドールさんは、
「おお、もうこんな時間ですか! 少し早いですが、この後もロイク様には予定がおありだとの事。宜しければ昼食と致しましょう」
と誘って来た。
元々、ギルドで昼食を摂ってから、ルナール商会へ行こうと思っていた。
なので、全く問題はなし。
「ありがとうございます。ギルドマスターのお言葉に甘えます」
「そうですか! もしかしたら、こうなるかもと思い、事前に手配しておりました。ギルド内のレストランから、ケータリングで運ばせます」
という事で、テオドールさんと、俺、秘書3人で楽しく昼食。
……俺、トリッシュさん、だけでなく、
シルヴェーヌさん、シャルロットさん、秘書達ともテオドールさんは、打ち解け、
食事は、大盛り上がりのうちに終わったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
良い話づくめで、和気あいあいで終わった冒険者ギルド。
テオドールさんは、帰り、魔導昇降機まで送ってくれた。
「新たな執務室は、8階の倉庫を3つ潰して造る予定です」
とか言ってくれた。
テオドールさんへ、丁寧にあいさつをした俺達は、ギルドを辞去。
馬車に乗り込み、次に商業街区のルナール商会へ向かう。
「午後早めに伺います」と、魔法鳩便で連絡しておいたので、
午後1時に到着すると、本館前には社員が数人、出待ちをしていた。
その社員がすぐに館内へ知らせたのだろう。
馬車の扉が開くと、社員達がずらりと並び、お出迎え。
中には、理事のオーバンさんも居て、一歩前へ進み出る。
「ロイク・アルシェ顧問、ようこそ、いらっしゃいました!」
「オーバンさん、お出迎えありがとうございます!」
という事で、オーバンさん達社員軍団に先導され、本館内へ。
長い廊下を歩き、案内されたのは、セドリック会頭専用の応接室。
先導して来た社員のうち、理事のオーバンさんだけが俺達とともに入るようだ。
とん! とん! とん! とん!
リズミカルにノックをしたオーバンさんが声を張り上げる。
「会頭! 失礼致します! オーバンです! ただいまロイク・アルシェ顧問とシャルロットお嬢様を始め、秘書の方3名をお連れ致しました!」
対して、部屋の中からは、
「おお! 待っていたぞ、オーバン! ロイク様達がいらっしゃったか! すぐに入って貰いなさい!」
と、セドリック会頭の大きな声が返って来た。
「失礼します! 会頭! 入ります!」
オーバンさんも大きな声で返し、俺達を見て、「にこっ」と柔らかく微笑み、
がちゃ!と、のぶを掴み扉を開ける。
「さあ! ロイク様! 皆様! 会頭がお待ちです! どうぞ、お入りください!」
オーバンさんの言う通り、
開いた扉の向こう、豪奢な会頭専用応接室の中には、
長椅子から立ち上がったセドリック会頭が、満面の笑みを浮かべていたのである。
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