第180話「おお、そうか! ナイスアイディアだ!」

現場の検分が終了。


俺が生け捕りにした100体を除く、オーガキング以下4千900体。


ボドワン・ブルデュー辺境伯以外にも、従士長のデジレ・バランドさん、

彼の配下の騎士達、兵士達にも、目へ焼き付けるくらいたっぷり見せた。


これで大破壊収束の『証人』は充分だろう。


俺は、ブルデュー辺境伯、デジレさんへ『報告用』にすると、断ってから、

オーガどもの死骸を収納の腕輪へ入れた。


ぱっ、ぱっ、ぱっ、ぱっ、ぱっ、とおびただしいオーガの死骸が消えて行く。

全員が大いに驚いたが、空間魔法の一種だと告げ、何とか納得して貰う。


さあて!

今後に向けて、打合せだ。


「閣下、この後の対応、処理について打ち合せをしたいのですが」


ブルデュー辺境伯が良い人だっただけでなく、

俺のファーストインプレッションも◎だったらしい。


辺境伯はにこやかである。


「うむ、そうだな、ロイク殿。とりあえず我が城へ参られよ」


という事で、俺はブルデュー辺境伯、デジレさんに誘われ、城館へ。


城内へ入ると、騎士達、兵士達から、感謝の大拍手が起こった。

こういうの結構、嬉しい。


そんなこんなで、城館内にある辺境伯専用の書斎において打合せを行う。


ここでも主導するのは王国執行官たる俺となる。


但し、辺境伯の立場を考えた物言いと対応が必要となる。


いくら王国宰相に準ずる権限を持つ王国執行官御免状があったとしても、

それをかさに着て、おいこら! みたいな上から目線と態度は、

とんでもなく反感を買う。


王国執行官として、伝えたい事ははっきりと伝え、通すべき意思は必ず通す。

しかし、基本的には低姿勢で、言葉を選ぶ事が必要だ。


このような時に役に立つのは前世で培った営業スキルである。


そして散々やり込んだステディ・リインカネーションの世界の経験値も役に立つ。


この中世西洋風のゲーム異世界ステディ・リインカネーションにおいて、

王国に対し、貴族が欲するのは名誉と褒賞である。


今回、ブルデュー辺境伯の評価は結構なものだろう。


大破壊の発生を受け、グレゴワール様へいち早く報告。

自らが盾となって、王国民を避難させたのだから。


しかし、ここで俺は更に手を打つ。

将来、義理の父となるであろうグレゴワール様とのパイプを活かし、

ブルデュー辺境伯へ便宜をはかるのだ。


「グレゴワール・リヴァロル公爵閣下へは、辺境伯閣下麾下の勇猛果敢な騎士と兵士が、オーガどもを引き付けて頂いたおかげで戦い、自分は勝利する事が出来たと報告致します」


「おお、それはありがたい!」


まずは、少々オーバー気味でも、

ブルデュー辺境伯の名誉を強調する。

王国へしっかりと伝わるように。


俺の言葉を聞き、辺境伯は驚いているようだ。


オーガ討伐を為しえた俺の武功を、自分との共同作業の如く言うというのだから。


「はい、それと自分から、閣下と境避難民の方へ義援金が出るよう働きかけます。最終決定は王国なので、確約は出来ませんが」


……こちらはズバリ金。

騎士隊や軍を動かすだけでも金がかかる。

ましてや、避難民の生活保障の問題がある。


金はいくらあってもOK!


その原資はといえば……俺にあてがある!

但し、保険をかけ、確約はしない。


それでも、ブルデュー辺境伯は喜んだ。


「いやいや、ロイク殿にお気遣い頂くだけでもありがたい!」


と、気分を良くして貰った上で、俺は具体的な段取りの話を始めたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「まず、公爵閣下経由で国王陛下へ、大破壊収束の一報を入れます。この城から魔法鳩便を飛ばしましょう。文官の方にお命じになり、報告書を作成して頂けますか? 校正の上、閣下と自分の連名でサインを入れましょう」


「分かった! すぐに作らせよう」


俺が第一の指示を出すと、ブルデュー辺境伯は快諾。

すぐ文官へ指示を出した。


「魔法鳩便を放ったら、自分はすぐ出発致します。街道を走り、王都へ向かい、3万人からなる騎士隊と王国軍の連合部隊へ、大破壊収束の一報を入れます。彼らがここへ来ても完全に無駄足ですから」


「うむ、確かにそうだ」


「連合部隊を率いるフレデリク・バシュラール将軍へ、自分から報告を入れます。その際にはやはり、辺境伯閣下麾下の勇猛果敢な騎士と兵士が、オーガどもを引き付けて頂いたおかげで戦い、自分は勝利する事が出来たと報告致します」


「おお、そうか!」


「はい、あ、そうだ。オーガどもが半壊させた正門はどうしますか?」


「ああ、あれは廃棄し、新たなものと取り換える。予備の門があるからな」


「閣下、取り換えるのは当然ですが、破壊されかけた正門自体は廃棄せず、城内へ絶対に残しておいてください。何かあった時、自分の報告の裏付けとなりますから」


「おお、そうか! ナイスアイディアだ! 成る程。あの半壊した正門が、ロイク殿の報告の証拠になるという事だな!」


「はい! その通りです!」


その後も、ブルデュー辺境伯はいろいろ話し……

任務を完遂した俺は、連合部隊と遭遇すべく、王都方面へ走りだしたのである。

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