第157話「果たして……グレゴワール様の反応は?」
午後は、シルヴェーヌさんから、王宮の『勝手』についてレクチャーを受ける。
かつてアラン・モーリアだった頃の知識とはまた違う新たなしきたりも加わっており、とても勉強となった。
そんなこんなで、午後5時となった。
退勤の時間である。
宰相第二秘書のフォスティーヌ・アルノーさんから、連絡があり、
グレゴワール様より、帰宅をともにしよう。
つまり「一緒に帰ろう」とのお誘いがあった。
午前10時30分の重役出勤なのに、午後5時にぴったり帰るという素敵なスケジュール。
申し訳ないが、今日無理に残業する理由がない。
理由もなしに「無理やり残業させていた」前世のダークサイド会社とは、えらい違いだ。
馬車に乗り込む、グレゴワール様。続いて乗り込む俺とシルヴェーヌさん。
宰相秘書室長、アルフォンス・バゼーヌさん、
第二秘書、フォスティーヌ・アルノーさんに見送られ出発。
馬車の中で、グレゴワール様が話しかけて来る。
「ロイク君、どうだ、仕事は上手くやれそうか?」
「はい、何とか」
俺が答えると、シルヴェーヌさんがフォローしてくれる。
「ロイク様は大丈夫ですわ」
「そうか、シルヴェーヌがそう言うのなら安心だな」
笑顔のグレゴワール様。
機嫌の良さそうなここで、先ほどシルヴェーヌさんと相談した、
お披露目イベント件を前振りしておこう。
「グレゴワール様」
「おう」
「以前、俺のお披露目イベントの件で仮案があると申し上げていましたよね?」
「ああ、
「その件ですが、シルヴェーヌさんには賛成して貰いました。後ほど、他の秘書ふたりとも話した上で、グレゴワール様へご提案したいのですが」
「……ああ、構わんよ。今夜は11時までは起きている。夕食後ならいつでも構わない。ロイク君の王国執行官お披露目イベントは優先事項だからな」
優先事項か……
最優先事項である王女ルクレツィア様の件は、まだ俺へ話す段階ではないのだろうな。
と思ったら、
「そういえば、今朝はジョルジエットとアメリーが本館の大広間へ来ず、騎士宿舎の食堂で朝食を摂ったと聞いたぞ。君達と一緒にな」
と、グレゴワール様は少し寂しそうに言った。
朝、ジョルジエット様、アメリー様と食事をするのが楽しみだったのかもしれない。
とりあえず、謝っておこう。
シルヴェーヌさんも一緒に謝るようだ。
「申し訳ありません」
「申し訳ございません」
俺が騎士さん達とメシを食うと言えば、ジョルジエット様、アメリー様は、
「一緒に食べます」と、ついて来たのだ。
結果、グレゴワール様は、使用人に囲まれているものの、
ひとりさびしくメシを食う事となってしまった。
グレゴワール様は言う。
「まあ、ロイク君と騎士達とのコミュニケーションは、今後を考えると、とても大事だ。あまり気にしないでくれ」
「分かりました。騎士達との食事は、週に1回ペースで考えていますので、何卒宜しくお願い致します」
俺が言えば、グレゴワール様は「すまんな」と苦笑したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「お帰りなさいませ!」
「お帰りなさいませ!」
リヴァロル公爵家邸玄関。
帰宅を迎える使用人達の中に、
既に帰宅していたジョルジエット様、アメリー様も居て、
大きく手を打ち振っていた。
ジョルジエット様、アメリー様の姿を見て、グレゴワール様は苦笑。
さりげなく聞くと、ふたりはグレゴワール様を出迎えたなど、した事がないらしい。
まあアメリー様は寄り子の娘さんだから、お出迎えは『あり』かもしれない。
だが、彼女の現在の立ち位置としては、ジョルジエット様の侍女。
主のジョルジエット様を差し置いて勝手な真似は出来ない、というのが真相だろう。
そんなこんなで……
俺達一行が帰宅して少し後……
シャルロットさん、トリッシュさんも帰って来た。
俺達とは別便の馬車で回収し、帰宅したのだ。
それから各自が部屋へ戻り、入浴。
着替えてから、別棟の大広間で夕食の予定であったが……
また朝の二の舞いとなるので、予定を変更し、本館の大広間で食事。
お約束で、ジョルジエット様、アメリー様も一緒。
満面の笑みを浮かべ、俺にばっかり話しかけて来る。
となれば、グレゴワール様は渋い顔。
こうなると……
ふたりに対して、言葉を選んで話すのは勿論、
食事のローテーションやメンツは、考えないといけないなあ。
そんな夕食が終わり……
俺と秘書達は、別棟へ。
夜の合同連絡会議を行う為、そのまま書斎へ。
当然ながら主要議題は、俺の王国執行官お披露目イベントプランの件である。
俺が改めて、シャルロットさん、トリッシュさんへ話せば、
ふたりは、文句ない!と大賛成。
そして、シャルロットさんからは、ルナール商会へ。
トリッシュさんからは、冒険者ギルドへ。
他部署の秘書が来て、仕事をする事がOKとの話も出た。
ルナール商会はセドリック会頭から。
冒険者ギルドは、ギルドマスターのテオドールさんからOKを貰ったそうだ。
後は王宮だけど、これは難しく、一筋縄ではいかないだろう。
でも、よし!
万事が順調。
すぐにグレゴワール様へ、提案する事に。
という事で、会議を終了し、速攻で、本館へ移動。
まずは、俺の王国執行官お披露目イベントプランを話す。
果たして……グレゴワール様の反応は?
「うむ! 良いんじゃないか! いや、良いどころじゃない、最高のプランだ!」
と、大絶賛。
文句なしのOKを出してくれたのである。
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