第150話「今日が初対面なのに、まるで、とても仲の良い3姉妹のようだ」

元女子騎士で、グレゴワール様の第三秘書だったシルヴェーヌ・オーリクさん。

冒険者ギルドで俺の業務担当者だったトリッシュさんことパトリシア・ラクルテルさん。

そしてルナール商会会頭セドリック・ルナールさんの孫娘シャルロットさん。


3人の専属秘書が決定。

俺は、オーバンさんへ頼み、ルナール商会の馬車を借り、

3人をリヴァロル公爵家別棟へ……

各自に下見をして貰う。


俺は、グレゴワール様から貰ったカギを使い、玄関を解錠、

3人の秘書を引き連れ、案内する。


大広間、食堂、厨房、使用人の部屋等がある1階。

地下には大きな倉庫に、ワインセラー。

2階は、宿泊可能な客間が10部屋、当然トイレ、風呂付き。


3階は主賓用の客間。

この別棟の主となる俺が使う応接室付きの書斎。

ここが執務室になる。


更に予備の部屋がふたつに、従者用の部屋が5つ。

そして2つのトイレ、岩風呂付きの巨大寝室。


まあ、この3階に俺が居住する事となる。

秘書の女子3人は従者用の部屋……か。


「秘書を同じ屋根の下に住まわせるって……ロイク様、手をお出しになるつもりですか?」


という、ジョルジエット様の言葉が気になったから、


俺は、「そんな事は致しません! 当然です!」と約束したし。


念の為、ここで俺は秘書3人へ言う。


「もしも、俺と同じフロアに居住するのが難ありなら、君達は、2階の客間に居住して貰って構わないぞ」


しかし、秘書3人は「は?」と、不思議そうな顔をした。


「何故? 近しい部下の私達が、わざわざ別の階へ?」

「おっかしいですよお!」

「不自然……だと思いますよ」


シルヴェーヌさん、トリッシュさん、シャルロットさんから言われてしまった。


仕方ない。

ここは正直に言おう。


「実は、ジョルジエット様から……」


リヴァロル公爵家邸へ来るまでの馬車車中において、

俺はジョルジエット様、アメリー様を、暴漢どもから救った出会いのくだりから、

結婚を決意するまでの話をした。


秘書3人は、「とっても素敵なお話しです」と、

目をキラキラさせて聞いていたけど。


その上で今、秘書3人と同居する際、

ジョルジエット様から、釘を刺された事を説明したのである。


すると……シルヴェーヌさんが、


「当ファルコ王国は、一夫多妻制を認めておりますから、ジョルジエット様が第一夫人。アメリー様が第二夫人になりますわね?」


「はあ、まあ……」


ルクレツィア王女様の件はあるが、まだ言えないからなあ。


「現状で、私達とロイク様は、主従関係。全員年上だし、まだ恋愛関係ではありませんが……」


と前置きしながら、


「もしも恋愛感情が生まれ、ロイク様と結婚したいとなった場合、ジョルジエット様と良く話し合って、私達は第三夫人以降になれば、宜しいと思いますわ。私は元々、グレゴワール様の第三秘書でしたし!」


とか言い切った。


えええ!?

シルヴェーヌさん!

奥さんと秘書は、全然違うんですけど。


続いて、トリッシュさんが、


「うふふ♡ 私、シルヴェーヌさんに大賛成! じっつはあ、ロイク様に、あつ~く片思い中ですからあ♡」


とか、言い出した。


おいおいおい!

俺が、唖然としていれば、シャルロットさんまで、


「私も祖父から! ロイク様は理想の男性だと言われておりますわ♡」


と頬を染めながら言われ、じ~っと見つめられてしまったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「「「「「くそお!! リア充!! 大爆発しろ!!」」」」」


「「「「「月夜の晩ばかりだと思うなっ!!」」」」」


という、怒りと怨嗟の声が聞こえてきそうな展開である。


ジョルジエット様の、超が付く憤怒顔が浮かび、脱力する俺をよそに、

秘書3人は、意気投合。

一気に仲良くなり……きゃっ、きゃっと、楽しそうに部屋選び。


3階の、5つある従者用の部屋をどれにするか、相談しているらしい。


俺は3人の経歴書を貰い、年齢を把握しているが。


シルヴェーヌさんは25歳で長女。

シャルロットさんが23歳で次女。

トリッシュさんが18歳の末妹。


今日が初対面なのに、まるで、とても仲の良い3姉妹のようだ。


こういうのも、

雨降って地固まる、災いを転じて福となす、

怪我の功名、結果オーライ、とか言うのであろうか。


ま、まあ、良いや。

何とかなるであろう。


そう、信じたい。

否、信じる。


………その後、俺と秘書3人は、改めて別棟の内見をし、

業務内容、引っ越しを含めたスケジュール等の打合せもして、

3人をそれぞれ、自宅へ送り届け……


その日は無事? 『お開き』となったのである。

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