第128話「再び、俺はここへ来た!」

いろいろな部分を考慮して貰った形で、王国執行官に任命され……


国外逃亡とか、名前を変えて隠遁生活とか、

最悪の結末は回避出来た。


俺はグレゴワール様始め、3人全員に深く感謝すると同時に、

大いに安堵した。


ほっと、ため息をついた俺へ、グレゴワール様は言う。


「ロイク君、すぐに出かけるぞ!」


「え? すぐに出かけるって?」


「うむっ! 馬車で王宮へ行く! 早速だが、国王陛下に謁見して貰う。宰相たる私、ギルドマスター、ルナール商会会頭も一緒だ」


グレゴワール様は、敢えて名前で言わず、肩書で告げた。


「では、俺を入れ、4人で?」


「そうだ! 先ほどの話通り、3人から国王陛下へ、ロイク君を推挙したという話にするのだ」


「分かりました」


ああ、国王陛下にお会いするなんて、一番高価で綺麗な革鎧を着て来て良かった!

再び、安堵する俺。


「馬車2台に分乗し、1台目が私とロイク君、2台目が、ギルドマスターとルナール商会会頭だ」


……成る程。


このような組み合わせにするという事は、王宮に行くまでの車中、

グレゴワール様は、俺へ対し、ふたりきりで話したい内容の話があるという事だ。


「当然、護衛もつく。ロイク君も良く知っている面々で、警護主任のバジル・オーリク以下、20名の騎士だよ」


「了解です」


「という事だ。さあ! 行こう! テオドールさん、セドリック会頭も出ますよ」


「「「はい!」」」


という事で、廊下に出れば、バジルさん以下騎士5名が居た。


俺達へ向かってびしっ!と敬礼する。


対して、グレゴワール様は大きく頷く。


「バジル! 護衛を頼むぞ!」


「は! かしこまりました!」


「はきはき」と答えたバジルさん。

俺の方をちらと見た。


もしかしたら、今回の件、ある程度話を聞いているのかもしれない。


バジルさんに先導され、俺達は本館を出て、表玄関へ。


玄関前には、残りの騎士15名、騎士達の乗る馬が20頭。

そして俺達が乗って行く馬車が2台止まっていた。


1台目の馬車の御者が扉を開け、まずグレゴワール様が、そして俺が乗り込む。

2台目も同様にテオドールさんとセドリック会頭も乗り込んだようである。


間を置かず、馬車が動き出し……

俺達は、国王陛下が待つ、王宮へ向け、出発したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


バジルさんの騎馬が先導。

都合2台の馬車、20名の騎士からなる一行は、王宮へ向かい、

王都の街中を粛々と進む。


念の為、俺も索敵……魔力感知を張り巡らす。


騎士達が護衛にあたるから大丈夫なのだが……

いざとなれば、俺も護衛組に合流し、戦う気構えだ。


そんな俺へグレゴワール様が、話しかけて来る。


「ロイク君」


「はい」


「国王陛下が、今回の件を快くご了解してくださったのは、いろいろ理由がある」


「いろいろな理由がですか?」


「うむ、そして君に了解を取らず話を進めてしまった事を詫びよう」


「いえ、そんな」


「それでだな。今回のドラゴンの売却先に関しては、私に任せてくれないか。金額等、悪いようにはしない」


「分かりました」


グレゴワール様に、いろいろと執り成して貰い、事なきを得た。

冒険者ギルド、ルナール商会に売却しようと思っていたドラゴンの死骸だが、

グレゴワール様の判断で売却する事で、円滑に物事が進むのなら、全然OKだ。


そんな話をしている間も、馬車は走る。


幸い、何の妨害もなく、俺達は無事、王宮へ到着した。


王宮内へ入り、やはりバジルさんの先導で進んで行く。


長い廊下を歩いて行くと、王宮内の護衛を務める大勢の騎士達、

美しい侍女を始め、同じく大勢の使用人達が目に入る。


……少し、懐かしいかもしれない。


前世において『アラン・モーリア』でステディ・リインカネーションをプレイしていた際、王宮にも何度も来ている。


再び、俺はここへ来た!

という思いである。


さて!

一体どこで、国王陛下に謁見するのだろうか?


基本的に公式の謁見ならば、王宮の大広間で行う。


しかし、今歩いているのは、大広間へのルートではない。


そう、俺達が向かっているのは、グレゴワール様によれば、

王宮の奥にある国王陛下のプライベートルームのひとつ、

特別応接室付きの国王専用書斎なのである。


王宮内へ入って15分以上歩き、俺達は国王陛下の専用書斎へ到着した。


入口には、やはりというか騎士が2名、護衛として立っていた。


まずは、バジルさんが騎士達へ敬礼。


「王国宰相、グレゴワール・リヴァロル公爵閣下と、そのご一行をお連れした!」


続いて、グレゴワール様が、声を張り上げる。


「事前にお願いし、お時間を頂いておる! 陛下にお会いしたい!」


すると、騎士のひとりが、びしっと敬礼。


「かしこまりました! 陛下より、お聞きしております! どうぞ! 中へお入りくださいませ!」


と言い放ち、更に書斎へ向かい、


「陛下! 王国宰相、グレゴワール・リヴァロル公爵閣下と、そのご一行がいらっしゃいました!」


とひときわ大きな声で言い放った。


対して、


「うむ!! 大儀である!! すぐ中へ通してくれ!!」


と、ファルコ王国第81代国王、アレクサンドル・ファルコ陛下の声が、

大きく大きく響いていたのである。

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