第124話「おお、ロイク君、急に打合せがしたいとは、どうしたんだね?」

セドリック会頭、オーバンさんとの打合せは和気あいあいで、終わった。


という事で、俺はホテルへ戻る。


フロントで、伝言が入っていると告げられた。


スタッフさんは、その場でどこからとか言わない。


もしやと思う。


部屋へ戻り、すぐ封書を開けてみれば、やはり鬼宰相グレゴワール様からであった。


明日、リヴァロル公爵家邸において、

午後1時以降ならその日中は、会えるという。


少しホッとした。

謁見場所が、王宮とかじゃなくてよかったという安堵感。


俺がドラゴン10体を倒した事に関しては、

冒険者ギルドがかん口令を敷いているが、

万が一漏れて、グレゴワール様とともに、王族あたりが出張ると、

ややこしいと思ったから。


まあ、話が知れ渡ったら、『呼び出し』が来るかもしれないし。

世界を救う勇者になれ! とか言われたら、嫌だなあ。


さてさて!

謁見OKの返事を伝えるのは、魔法鳩便を使っても良かったが、手配が面倒。

伝わるのに、少し時間もかかる。


なので、俺は、再び外出。


貴族街区のリヴァロル公爵家邸へ赴き、

「グレゴワール様から、ご連絡を頂きました。ありがとうございます。明日午後1時少し前に、こちらへ伺います」と、セバスチャンさんへ伝えた。


これで確実に伝わる。


そんなこんなでもう夜。


明日に備え、寄り道せず、さっさとホテルへ戻る。


法衣ローブを脱ぎ、装備を外し、

部屋着のブリオーに着替え、夕食を摂る為、階下のレストランへ。


いつものように、ビュッフェ形式の夕食を摂りながら、俺は「つらつら」と考える。


グレゴワール様への切り出し方は、

今日のセドリック会頭、オーバンさんと同じで行く。


そこからは成り行きで、もしもルナール商会側の回答は?と尋ねられたら、

「グレゴワール様の回答に合わせ、検討するみたいですよ」

という、曖昧な言い方で返す。


まあ、それは良いとして、明日グレゴワール様はどういう反応をし、

どのような答えを戻して来るだろうか?


ファルコ王国と、冒険者ギルドの兼ね合いも見えるかもしれない。


あ、そうだ。

勇者認定対策とかの、相談もしておこう。


グレゴワール様は何か、良いアドバイスをしてくれるかもしれないし。


うん!

今日は風呂入って早く寝よう!


部屋へ戻り、シャワーではなく。

久しぶりにお湯を張った風呂に入り、俺はぐっすり眠ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌日、午前7時に起床。


ストレッチをし、シャワーを浴びる。


午前9時に、階下のレストランにて、少し遅めの朝食を摂った。


部屋へ戻り、グレゴワール様へ話す内容、質問等を再確認。


なんやかんやで、午後0時過ぎ。


革鎧に着替え、革兜を被る。

愛用のスクラマサクスを腰から提げ、出発。


途中で、武器防具屋、魔道具屋を冷やかしながら、時間を潰し、

0時45分くらいに、貴族街区のリヴァロル公爵家邸へ到着。


「お疲れ様でっす!」


「ようこそ! ロイク様!」


昨日も来たし、顔なじみでもある門番担当の騎士さんと、軽くあいさつを交わす。


取次ぎがされ、正門へセバスチャンさんがやって来た。


同じくあいさつすれば、本館へ案内され、グレゴワール様の書斎へ。


俺だけ、室内へ入る。


グレゴワール様は席で、デスクワークをしていた。

仕事を持ち帰り、作業をしているようだ。


「お疲れ様です、グレゴワール様。ご無沙汰しております」


「おお、ロイク君、急に打合せがしたいとは、どうしたんだね?」


ああ、この言い方。

まだ、俺がドラゴン10体を討伐した事は伝わっていないらしい。


「まあ、座ってくれ」


「はい」


という事で、応接の長椅子に座り向かい合う。


「実は……」


と俺は話を切り出した。


ここからは、ルナール商会と同じ手順。


冒険者ギルドのとある依頼を完遂し、その際、魔物を討伐した事。


討伐したのは結構な大物クラスで、結果、Aへのランクアップは確定と言われた事。


ギルドからサブマスター就任のオファーを貰った事。


ランクアップは受けるが、サブマスター就任のオファーは、丁重に断ろうと考えている事。


何故なら、サブマスターに就任した場合、

毎日、煩雑な事務仕事や会議があり、護衛任務の契約遂行は困難である事。

現状のフリー個人事業主が性に合っている事。


俺の説明が終わると、グレゴワール様は言う。


「成る程、話はもろもろ理解した。ロイク君ほどの逸材ならば、冒険者ギルドがオファーを出すのも当然だろう」


「ええっと……」


「ただ、現状で私からの依頼はジョルジエット、アメリーの警護のみで、不定期発注かつ拘束日数は、休日を含む2日間だ」


「ですね」


「ロイク君へ、基本的には3週間前に発注するし、日数的な余裕はあると思う。事前に申し入れするなどして、ギルドの融通はきかないのかね?」


これは予想された質問である。


「難しいと思います。サブマスターに就任した場合、一旦、グレゴワール様の護衛依頼を受諾しても、後から何か業務が入った場合は、ギルドを優先するようにと言われております」


「そうか」


「グレゴワール様、その件も含め、こちらがギルドからのオファーを記載した書類です」


ここで俺は、冒険者ギルドの業務担当トリッシュさんから託された書類を、

グレゴワール様へ提示したのである。

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