第116話「俺がノーマルタイプのドラゴン10体を討伐したというニュースは、 すぐ冒険者ギルド内へ知れ渡った」

トリッシュさんは、解体作業場の統括職員らしき男性へ、何か、言った。


すると!

職員も大いに驚き……行っていた作業を中断。

あっという間に、片付けがされ、ドラゴン1体を置ける広い場所が出来た。


どうやら、ドラゴンが搬入されると、周知されたようである。


統括職員が、トリッシュさんへ大きく手を振り、合図を出す。


頷き、同じく大きく手を打ち振って応えたトリッシュさん。


そして俺へ向き直る。


「OKです。ロイク様、どうぞ、討伐したドラゴンをお出しください」


「了解です。とりあえず1体出しますね」


そして俺の言葉に大きく反応するトリッシュさん。


「ううう……す、すっごく! こ、こ、興奮しますう!」


「よし、じゃあ、出します。ほいっと!」


本当は収納の腕輪を使用しているのだが、目をつけられ、盗難等が面倒なので、

表向きには、「空間魔法を行使している」と告げている。


搬出!


と、心で念じれば……収納の腕輪が即座に作動。


でででででで~~~んんんんんんん!!!!!


空けてくれた場所へ、俺が倒したドラゴンの死骸が現れた。

体長20m、緑色の巨体。

白目をむき、舌を出して、完全に、こと切れている。


「わあおおう!!! ド、ドラゴン!!! す、す、すっご~いいい!!!!!」


ドラゴンの死骸を見たトリッシュさんが、躍り上がって喜んだ。


何故か、思いっきりガッツポーズ。

相変わらず、可愛いなあ……


ドラゴンの死骸が出ると同時に、

解体作業場の統括職員始め、他の作業をしていた者も含め、


全職員が、


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっっ!!!!!」」」」」


と、大きなどよめきを発した。


そして、どよめきを発した全職員が一斉に、ドラゴンの死骸へと駆け寄って行く。


俺の傍らで、大興奮していたトリッシュさんが話しかけて来る。


腰が浮いている。


何を言いたいのか、仕草で分かる。


「ロイク様!!!」


「はい、何か」


「わ、私!! もう我慢出来ません!! ドラゴンの近くへ見に行って構いませんかっ!!」


「あ、全然OKっすけど」


「ありがとうございます!!!」


笑顔のトリッシュさん。

ぺこっ!と頭を下げ、脱兎の如く、駆け出して行ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


俺がノーマルタイプのドラゴン10体を討伐したというニュースは、

すぐ冒険者ギルド内へ知れ渡った。


すると、緊急幹部会議が開かれ、俺はしばし待つように言われた。


メンバーはギルドマスター、サブマスターなど幹部全員。

俺と模擬戦を行ったサブマスター、エヴラール・バシュレさんも当然参加している。


聞けば、全ての予定を返上しての緊急幹部会議なんだそうだ。


当然ながら、議題は、ドラゴンの死骸処理と俺のランクアップについてだという。


待つ間、俺はトリッシュさんと話し、自分の希望を伝えた。


討伐したドラゴン10体のうち、7体をギルドへ売却。

2体をお世話になっているルナール商会へ売却。

残りの1体で、自分用の武具を製作というもの。

またランクアップして貰えるのならば、快くOKしますとも伝えた。


トリッシュさんとの打ち合わせは約30分で終わった。

俺の希望はシンプルだからね。

後は、いろいろ雑談をしていた。


ドラゴンに興奮したせいか、

トリッシュさんは、自分のプライベートな話もしてくれた。


こういう場合、何も尋ねず、俺はただただ聞き役に徹する。


結果、トリッシュさんの趣味、好物、休日の過ごし方、

彼氏が居ない事まで判明した。  


まあ、トリッシュさんに彼氏が居なくとも、万が一喧嘩とかした場合、

仕事がやりにくくなる可能性がある。


だから、トリッシュさんとステディな関係になる気はないし、彼女をデートに誘おうとも思わないが。


ちなみにドラゴンの死骸1体は、上代金貨10万枚……10億円。

俺への支払いは、ギルドの買い上げ金額は半分の金貨5万枚で、5億円だと教えてくれた。


これは、俺がステディ・リインカネーションをプレイしていた時と変わらない。


これだけ高価なのは、20mの巨体なのは勿論、

それだけ、ドラゴンのうろこや皮が武器防具として貴重だという事。

また肉も高く売れ、内臓は薬の材料にもなるという。


そう!

ドラゴンは捨てる部位が全くない、素晴らしい魔物なのだ。


ルナール商会がどれくらいで購入するのか分からないが、

約50億円の実入りとなるだろう!


まあ、ルナール商会には凄くお世話になっているから、

1体まるまる寄付しても構わないけど。


やがて……会議は終わったという連絡が入った。


果たして、ギルドからはどのような話があるのだろうか?


トリッシュさんに誘われ、俺は幹部達が待つ、大会議室へ向かったのである。

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