第115話「驚いた顔もめちゃ可愛いけれど、驚かせすぎて、ごめんねぇ」

「でも、ロイク様はおひとりで行かれて、犬の使い魔を1体召喚されるくらいだから、ドラゴン10体は関係なかったですよね」


トリッシュさんはそう言うと、にっこり笑った。


よし!

そろそろ、種明かしを……

真実を話して構わないだろう。


「トリッシュさん」


「はい」


「実は」


「実は?」


「トレゾール公地における依頼……完遂しました」


「へ!? か、完遂??」


「はい! まずは、採取した金、宝石を納品しますね」


「は、はい?」


俺が依頼を完遂し、金と宝石を納品すると言っても、

トリッシュさんは、いぶかしげに首を傾げていた。


そりゃ、そうだろう。


俺は、てぶらで、何も荷物を持っていないのだから。

ゲーム知識でゲットした、お宝『収納の腕輪』へ、

今回の収穫は全てしまってあるのだ。


さて、どうしようか。


そうだ。

全てのネタばらしをするつもりはないが……

空間魔法を行使可能……という事にしておこう。


「論より証拠。空間魔法で出しますね。……これっす」


俺は『搬出!』と念じ、テーブルの上に、

ギルドから支給された金、宝石用の袋を10全部出した。


全てが、ぱんぱんに膨らんでいる!!


「うっわ!! びっくり!! 金、宝石とも全部、いっぱいになってるうう!!」


「ですね! ご確認お願いします」


「はっ、はいっ!! こ、こ、このままお部屋で!! し、し、し、少々お待ちくださいっ!!!」


驚き、ふためき、トリッシュさんは、部屋を出て行き……

やがて、職員さんを5人連れて来た。

貴金属の鑑定士も兼ねた職員さんらしい。

魔導計量器も持って来た。


「ロイク様! すぐにご確認致しますね!」


「はい、宜しくお願い致します。……それとトリッシュさん」


「はい!! ロイク様!! 何か!!」


おいおいおい!

何か、のんびり屋さんだった、トリッシュさんの反応が、全く違う。


「はい、トリッシュさん。改めて確認です。依頼書に記載がありましたら、金と宝石は鑑定価値の30%の現金を受け取りですが、倒した魔物の死骸は、全て受け取りって事で構いませんね?」


「は、はいっ!! ロイク様のおっしゃる通りですが!!」


「はい、屋内解体作業場を予約しておいてください」


補足しよう。

冒険者ギルドの屋内解体作業場とは……

討伐した魔物を解体。

武具防具等の材料にする場所である。


「わ、分かりましたああ!!」


……そんなこんなで、計量と鑑定が終わった。


これでトレゾール公地の依頼は無事完遂。


何と何と何と!!!

金と宝石を合わせ、鑑定金額は、金貨3万枚3億円分となった!!!


つまり、俺は金貨9,000枚、3億円の30%、

報奨金として、現金9,000万円を受け取る事となったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


所属登録証へ、金貨9,000枚、9,000万円をプール。


俺はトリッシュさんと、作業を予約して貰った屋内解体作業場へ向かった。


ちなみに、屋内解体作業場はギルドの敷地の一画にあり、

本館から数分の位置にある。


とても気になるのだろう。


歩きながら、トリッシュさんが、尋ねて来る。


「ロイク様」


「はい」


「屋内解体作業場をご希望されるという事は、トレゾール公地において、魔物を討伐されたのですね?」


「はい、そうです」


「あの……差し支えなければ、何を討伐したのか、教えてくださいます? ゴブリンですか、オークですか? まさか、オーガじゃないですよね」


「いいえ! ドラゴンっす! ノーマルタイプのドラゴンっすけど」


「ド、ドラゴンっっ!!??」


「はい、実はまず、オーガ100体を討伐しました」


「え!? まずオーガ100体!?」


「ですが、そちらは、採集作業を優先したので放棄し、その次に、体長20mくらいのノーマルタイプのドラゴンを10体討伐しました。ドラゴンのみ、空間魔法で死骸を収納してあります」


「ひええええええええ!!! ド、ド、ド、ドラゴンを!!! じゅ、10体ぃぃぃ!!!」


先ほどの金、宝石の比じゃなく、驚きのけぞるトリッシュさん。

驚いた顔もめちゃ可愛いけれど、驚かせすぎて、ごめんねぇ。


さてさて!


ここで補足しよう。


不可思議な現象だが……

トレゾール公地内で倒した魔物の死骸は、公地内で放置すればそのまま消滅する。


しかし、公地外へ持ち出せば、消滅しない。


そのまま持ち帰り、ギルドや商人へ売却すれば、結構な副収入となるのだ。


そして、先ほど改めて確認した通り、金、宝石と違い、

討伐者が全て受け取る事が出来る。


今回、ノーマルタイプのドラゴンとはいえ、莫大な金額が期待出来る。


やがて……

俺とトリッシュさんは、屋内解体作業場へ到着した。


魔物を解体するせいか、独特な異臭がする。

大変な仕事だと、思ってしまう……


トリッシュさんが、話しかけて来る。

だいぶ興奮しているようだ。


「ロイク様」


「はい」


「わ、わ、私! ……う、う、生まれて初めて、ドラゴンを見ます! な、なんか! 凄くわくわくしますっ!!」


「成る程、良かったですね」


「はいっ! そしてドラゴン10体討伐ですと、確実にランクアップ、ロイク様はランクA、もしくは特例で、ランクSになるやもしれません!」


「おお、そうですか! 素直に嬉しいですよ」


「はいっ! じゃあ、屋内解体作業場の担当職員へ伝え、早速、場所を空けて貰いますね」


「お願いします」


トリッシュさんは、とことこと駆けて行き、

作業をしていた屋内解体作業場の統括職員らしき男性へ、何か、言った。


すると!

職員も大いに驚き……行っていた作業を中断。

あっという間に、片付けがされ、ドラゴン1体を置ける広い場所が出来たのである。

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