第40話「よっしゃ!  試運転大成功!!」

俺は、登った岩壁から「すたっ」と軽々、地へ降りる。


そして、たったひとりだが、余裕で戦うケルベロスの下へ、

再び、弾丸のように駆け出していた。


砦内を駆け抜けた俺は、あっという間に、

ケルベロスへ襲いかかるオークどもの背後に立つ。


獅子奮迅のケルベロスに減らされたとはいえ、100体のオークは、ぱっと見、

まだ数十体も残っていた。


俺はここで剣……スクラマサクスを抜いた。


オークどもとの距離は10mない。


さすがに最後方に立つオークどもが俺に気付く。


振り向いた。


猪を思い切り荒くれさせ、醜悪にしたような面構え。


そして、一斉に激しく吠えた。


ぶおおおっ! ぶおおおっ! ぶおおおっ! ぶおおおっ!


俺に対し、敵だあ! 人間だあ! 餌だあ! 喰ってやるう!


という凄まじい殺気と欲望を放ち、襲いかかって来る。


こういう場合、暴力反対! 殺すのは可哀そうなんて言っていられない。


反撃しなければ、殺される! 喰われる!


しかし!

いくら相手が多くても、数十倍でも、数百倍、数千倍でも!

余裕のよっちゃん。


俺の動体視力から見れば、オークどもの動きは超が付く緩慢かんまんさ!


やはり、スポーツ中継における特殊なハイスピードカメラを使った、

見せ場のシーン再現のように、

スローモーションで、オークどもの動きが、はっきりと読み取れる。


はっきり言おう!

奴らが、固まったように、止まって見えやがるぜ!


いや、大サービス。

せいぜい『かたつむり』ぐらいのスローモーさにしといてやる!


そんな奴らに無双するのは、超が付く大楽勝!!


ずばっ! ずばばっ! しゅばっ! ざしゅっ!


どこっ! がっ! ぶしゃ! がん! どしゅ! 


俺は非情な気持ちを心身に満たし、一方的に剣を振るう。

更には、ジャブに、ストレート、アッパー、フック、

拳法の突き、前蹴り、回し蹴り、シールドバッシュ各種も使う。


良い練習だとばかりに、わざと奴らの動きに合わせ、

習得した防御も全て試してみる。


バックステップ、サイドステップ、スウエー、ダッキング、

ウェービング等々の身のこなし。


本当に奴らの動きが遅すぎて、却って合わせるのが大変だった。


悪いな! 

俺の練習台にして!


しかし!

お前らはここから街道へ、村や町まで出張って人間を襲い、容赦なく喰い殺す。


捕食者たる人外の魔物は、人間社会の敵。


そういう設定の存在なんだ。


『ステディ・リインカネーション』がリアルな現実となったこの世界で、

俺は生きて行く。


お前達のような魔物どもと戦い倒し、心身を鍛える。


たくさんの経験値を得て、魔法とスキルの才能を開花させ、俺は成長する。

そういう設定なんだ。


そして今日の課題は、1か月間行った修行の成果を存分に試す事。


よし!

剣、格闘で10体倒した!


次は、魔法で戦う。

俺は少し走り出し、奴らをおびき寄せた。

味方であるケルベロスへ誤射しない為だ。


まずは『公式な属性』とした風属性。


風弾をぶっ飛ばし、風斬を浴びせる。

おお、見えない大気の塊にオークどもはボディブローを浴び、

鋭利な『かまいたち』の刃で「ずたずた」に斬られる。


そして地属性で岩弾を、水属性の水弾を浴びせ、

とどめが火属性の炎弾と火炎放射で燃やし尽くした!

改めて俺が全属性魔法使用者オールラウンダーである事が確認された。


さてさて!

砦内をくまなく探索しないと分からないが、

ケルベロスとともに、オーク100体のほとんどを倒したはず。

当然、こちらはノーダメージ。


先日見た限り、同じような依頼が冒険者ギルドから出されていた。

それによると、報奨金は金貨300枚……つまり300万円。


そして、この世界はゲーム仕様。


いつもではないが、イレギュラーに、

倒したオークどもが落とす人間から奪った金、品物などもゲット出来る。

それが合わせて金貨10枚。

廉価版の剣、こん棒、ポーション、薬草などを少々。


時間はまだお昼前。

半日で、300万円プラスアルファなら全然悪くない。


オークどもを倒した俺は、はっきりとした手ごたえを感じ、

『個人事業主』としてやって行く事に、目途を立てたのだ。


勢いに乗った俺は、照明魔法を発動し、真っ暗だった砦の本館を始め、

各所の探索も行った。

この砦は前世で何度も探索していた事もあり、楽勝だった。


身体能力を活かして楽々、壊れた難所も軽~く移動。

仕掛けられていた罠も、全て華麗にスルー。


残党のオークどもも倒し、

この砦内にある宝箱の場所も憶えていたから、効率よく全部開けて余裕でゲット。


当然、探索やバトルの際は、今まで習得した数多の魔法、スキルを行使しまくった。


よっしゃ!

試運転大成功!!


ぱららら、ぱっぱ~!!


ファンファーレが鳴り渡り、心の内なる声が、

レベルのアップ、各パラメータのアップを告げてくれた。


全てを記載しないが、こんな感じである。


〇名前:ロイク・アルシェ


〇種族:人間族


〇性別:男子


〇年齢:16歳


〇LV:レベル:10⇒11


〇属性:プラス地、水、火全属性魔法使用者オールラウンダー


〇職業:元農民⇒元店員⇒元プー⇒冒険者ランクB、ランカー


〇STR:ストレングス:6,800⇒6,900


〇DEX:デクステリティー:10,000《MAX》


〇VIT:バイタリティー:10,000《MAX》


HPは、4,800⇒5,000


〇AGI:アジリティ:10,000《MAX》


〇INT:インテリジェンス:4,600⇒4,800


〇MND:マインド:5,000⇒5,300


MPは、4,600⇒4,800


〇LUK:ラッキー:10,000《MAX》


〇CHA:カリスマ:4,100⇒4,200


使用したスキルも中級スキルの字面は変わらないが、着実に経験値を得た。

こちらも全てを上級にするよう頑張ろう。


……こうして俺は、己の能力を存分に試し、支障なく課題をクリアしたのである。

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