第15話「まさにVIP扱い」
寝室の巨大なトリプルベッドへ寝ころんだ16歳のロイク・アルシェこと俺。
この先の自分の未来、将来について、いろいろと考えた。
そして自分の過去を振り返り、現在の状況を再認識した。
……何という環境の激変だろう。
感慨深いものがある。
……転生前のケン・アキヤマは、ダークサイド企業の『社畜』だった。
絶対的支配者のようにふるまう超ワンマン社長、
コバンザメのような超ごますり部長に、あごでこき使われ、
もしかすると、転職する前に、燃え尽きていたかもしれない。
そして転生してから、たった1週間前までは……
ごうつくなオヤジ店主に1日17時間もこき使われ、
ひいひい悲鳴をあげて、懸命に働いていた『最底辺の人生』だった。
それなのに、今のこのゆとりある生活。
所持金は金貨1,000枚強!
日本円にして1,000万円以上!!
滞在しているのは、ルナール商会が経営する、
王都ネシュラの10階建て高級ホテル。
宿泊しているのは、ハイクラスの部屋。
居間に、クローゼット、バストイレ付きの寝室、更に客室という3間続きの部屋で、
部屋は各20畳ほどあり、俺ひとりではもったいないくらい、とても広々している。
この部屋は、1か月の間は、商会持ちで、宿泊費、食事代等はタダ。
だから、よほど高額のものでなければ、多少買い物をしても、生活費の心配はない。
素晴らしい!
素晴らしすぎる!
と考えれば、やはり転生した俺は運が良い!
と言うか、多分この『ステディ・リインカネーション』の世界の、
ロイク・アルシェへ、俺ケン・アキヤマが融合してから、
運気がとんでもなく上昇している。
悲惨だったロイクの記憶をたぐってみても、
運気が変わったのは、俺が融合して以降である。
まず、俺には凄まじい身体能力がある。
更に500m先の敵を捕捉するとんでもない索敵能力を備えている。
そして、初級レベルだが、既に習得済みのいくつかのスキルもある。
結果、オヤジ店主と、山賊ども40人以上を倒した。
もしも……
仮説が的中していたら、
今後の俺自身の人生に大きく影響する事となる。
否!
大きな影響どころじゃない。
俺の生き方の選択肢は、限りなく、膨大なモノとなるだろう。
起こった様々な事象から仮説の確信はしている。
だが、それを明日、厳然たる事実として確かめる!
俺はそう決意。
先ほどの冒険者、商人のどちらへ進むか、で大いに迷ったが……
熟考の末、俺はまず、冒険者ギルド総本部へ行く事に決めた。
その後は時間次第だが、
この王都ネシュラ内で、ぜひ行きたい場所、
用足しをしたい重要な場所……ラッキースポットが、たくさんある。
但し、上手く行くか、はまるかは『運次第の部分がある』のも、
このステディ・リインカネーションをやり込んだ俺は知っている。
なので、ギルド後の予定は『成り行き』とした。
俺はルームサービスで夕食を摂り、この日は早めに就寝したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……翌朝、いつもの癖で、午前4時に目が覚めてしまった。
ハッとして、
よろず屋へ! 店に出なきゃ!
掃除して、倉庫から品出ししなきゃ!
と思ったが、もうその必要はないと気が付き苦笑する。
我に返りさえすれば、爽快な目覚めである。
……やはり、高級ホテルの素敵な寝室、ふかふかクッションのトリプルベッド。
シーツは肌触りの良いシルク、羽毛たっぷりの布団も温かい。
両親が亡くなり、既に取り壊された実家で使っていた粗末なベッド。
よろず屋で貸与された同じようなボロベッド……
馬車の中、もしくはキャンプではテントの中という、原野の睡眠とは全く違った。
ぐっすり安眠出来た俺は、熱いシャワーを浴び、
さっぱりしてから、クローゼットへ。
そこには俺が持ってきた数着のみすぼらしいブリオーとともに、
ルナール商会が用意したらしい服が、たくさん入っていた。
「す、凄いな……」
思わず声が出た。
普段着用のブリオーも全てが新品、デザインもおしゃれ且つ粋である。
スーツにタキシード、革鎧まである。
これらは「気に入ったら、遠慮せず貰ってください。会頭から命じられております」と、笑顔のオーバンさんからは言われていた。
既に昨夜チェックして、何着か、お気に入りのものに目星を付けている。
本当に、何から何まで至れり尽くせりだ。
自分が生き残る為に、山賊と戦ったが、結果、俺に素敵な幸せをもたらしてくれた。
まさに情けは人の為ならずだ。
そして俺が掲げた、目標、
俺は絶対!前世より1億倍!幸せになる!
の第二歩。
いや三歩、四歩くらいか。
気分が良くなった俺は、おしゃれなブリオーに着替え、ホテルの1階ラウンジへ……
ラウンジには、レストラン、カフェレストラン、バー、ロビーなどがあった。
俺はオーバンさんから教えて貰った通り、レストランへ。
レストランではバイキング形式の朝食が実施されており、これまた指示通り、
宿泊している部屋番号と魔導カードキー、
そして自分の名と、会頭セドリックさんの名を告げる。
すると、レストランの支配人らしき中年男性がすっ飛んで来た。
素晴らしい中庭が見渡せる展望席へと案内され、
「お客様、宜しければお料理とお飲み物を、何でもお持ちします」
と言われてしまった。
まさに、俺はVIP扱い。
こんな経験は前世でも全くなく、当然、生まれて初めてである。
しかし、さすがにこれではバイキングの意味がない。
固辞した俺は、自身で料理が並んだテーブルへ行き、
思う存分、ホテルのおしゃれなバイキング朝食を楽しんだ。
そして、朝食後、部屋へ戻ると……
用意してあった革鎧に着替え、
俺は、王都ネシュラ内にある冒険者ギルド総本部へと赴いたのである。
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