第16話「冒険者ギルド総本部へ」

朝食後、部屋へ戻ると……

用意してあった革鎧に着替え、


俺は、王都ネシュラにある冒険者ギルド総本部へと赴いた。


ネシュラの冒険者ギルド総本部は広大だ。


10階建ての本館。

5階建ての別館が3棟。

地形を模した実戦訓練場が5つ。


図書館。

大中小の闘技場。

ミニ市場を擁する商店モール。

ホテル。

倉庫。


それらがすっぽり入る広大な敷地は青々とした芝生も綺麗に植えられており、

まるで王立公園の趣きがある。


ファンタジー世界ではあまりにも有名な冒険者ギルドだが、

念の為、補足しよう。


ご存じの方は、当たり前、常識だねと思いながら、読んで頂きたい。

若干異なる部分があるのは、ご了解して頂きたいが。


『ステディ・リインカネーション』の冒険者ギルドは、主要な街に存在。

世界中の冒険者を統括、管理している。


国王や貴族領主からは独立した組織であり、

国々を超えて存在する中立的な位置づけだ。


このファルコ王国王都ネシュラに総本部があり、

他の各国には支部が設けられている。


冒険者ギルドは所属する冒険者に様々な仕事を斡旋し、

基本、王や貴族領主とは依頼等で友好的な協力関係にある。


冒険者志望者は、まず冒険者ギルドで、登録をする事が必要である。


登録の手順は、まず冒険者講習を受講させ、冒険者ギルドの業務、ルールを理解して貰った上で、ランク判定の実戦を行う。


そして犯罪歴や所有スキルなどを念入りにチェック、

当該者の能力を最終確認した上で、冒険者ギルドはランク認定。

身分証明付きの所属登録証を発行するのだ。


冒険者は、冒険者ギルドに所属することによって、様々な税金が免除され、

所属登録証は、全世界で信用される身分証明書になる。


また冒険者には実績と実力に応じたランクがある。


そして依頼にもランクがつけられ、受諾する為には、

冒険者にも同程度以上のランクが求められる。


冒険者にランクは、F~Sのランクがある。


Fが素人から初心者クラス、E、D、Cが中堅。

B以上をランカーと呼び、一流と評価される。


Aが超一流と評価され、冒険者ギルド幹部の殆どはA以上。

フリーだと、ギルドの幹部へ勧誘される事も多い。


その上のSは人外レベル、つまり英雄とか、超人、魔人と評価され、

いわゆる『レジェンド扱い』だ。


ちなみに俺のアバター、アラン・モーリアは王国の貴族で魔法騎士であり、

何と、冒険者も兼務、ランクは伝説のSであった。

名が売れた後は、英雄と称えられた。


さてさて!

冒険者ギルドはの主な業務は、

依頼の募集、受付けと受諾、報酬の支払い、税金の処理等々。

冒険者ギルドは、各所から依頼を受け、仲介し、冒険者に委託するのだ。


依頼には難易度に応じてランクがある。

そのランク分けを行い、金額設定を行うのも冒険者ギルドの仕事なのだ。


冒険者が依頼を達成した場合、冒険者ギルドが審査確認の末、報酬を支払うのだが、

判断基準は依頼の種類によって異なる。


冒険者ギルドの業務は他にも、様々な素材の採取、解体及び買取り。

文武魔法等、様々な講座を設けた冒険者の教育。


人的交流のフォロー。


銀行、保険業務を請け負う場合もある。


はしょった部分もあるが……


そんな感じの冒険者ギルド総本部、その本館へ、俺は足を踏み入れたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


俺が今日、冒険者ギルド総本部へ来た目的はいくつかある。


まずは冒険者登録をする事。


冒険者は将来就く職業の中で、選択肢たるひとつである。

なので、一応、登録だけはしようと決めた。


ルナール商会から、商人に誘われてはいる。


だが、その際、返事をした通り、将来の事はじっくりと考えたい。


そして冒険者登録の際、

発行される『身分証明付きの所属登録証』をゲットする事も重要である。


依頼を受諾する際に必須なのと、身分証明、各種税金免除等々、

数多の特典が山盛りだからだ。


そして最大の目的は、俺自身の初期スペックを知り、把握する事だ。


ここで再び、補足しよう。


『ステディ・リインカネーション』の世界では、

「心の扉を開く」という特別な方法がある。


もしも心の扉を開けば、『心の内なる声』が明確に聞こえるようになる。


『心の内なる声』が明確に聞こえると、通常のスペック確認は勿論、

レベルアップや能力獲得の際は、

特別なファンファーレでしらせて貰う事が可能となるのだ。


また、本能的な危機回避能力もアップし、

『心の内なる声』がしらせてくれる。


なので、騎士、兵士、そして冒険者など危険を伴う仕事の従事者は、

「心の扉を開く」事が多い。


俺は魔力はあるだろうが、現状では、わずかみたいだし、

スペックを知る「心の扉を開く」魔法やスキルを使えない。


なので、有償で、つまり冒険者ギルドの本部で登録の際、

金貨100枚……100万円を別途支払う事で、

「心の扉を開く」事にしたのである。


ちなみに、創世神教会でも、お布施金貨200枚で、

「心の扉を開く」事が可能だ。


現在の所持金ならば、俺はどちらでも、受けられるが、

料金が倍も違うのは、理由がある。


冒険者ギルドの方は、あくまで冒険者登録の際のオプションサービスである事。

加えて、個人の初期スペックデータが、

ギルドに知られるというデメリットがあるからだ。


そう、冒険者登録の際は、魔法で調べられ、

登録時の、個人初期スペックデータ報告が義務付けられている。

これはギルドが登録した冒険者を個々に把握する為だ。

但し、レベルアップした時や成長の履歴の報告義務はないから安心である。


という事で、冒険者登録をすれば、自分の初期スペックを知る事は可能なのだが、

先に述べた数々のメリットを含め、今後の事もある。

それゆえ、冒険者ギルドの方で「心の扉を開く」事を決めたのだ。


あと、これも先述したが……俺は『ある仮説』を立てている。

この仮説は、もうほとんど確信に近いのだが。


この仮説が当たっている、いないにかかわらず、

俺は自身の素質、及びスペックを確認するつもりだ。


それによって、これから自分の育成計画を立て、

強くなる事が肝要だと、俺は考えている。


『ステディ・リインカネーション』の世界において……

俺は、ケン・アキヤマ、ロイク・アルシェ、そしてアラン・モーリア、

3人の記憶を持つ、特異なゲーム転生人である。


アランの記憶から勝手知ったる冒険者ギルド総本部へ足を踏み入れた俺は、

まっすぐ受付に受付けに向かった。


内ポケットには、後々役に立つと考え、

クラン『猛禽ラパス』の盾戦士リーダー、ジョアキムさんに頼み、

作成して貰った『紹介状』が入っている。


ちなみに……

このような紹介状がないのなら、業務カウンターで、登録手続きをするのが、

ギルドの規則である。


という事で、俺は受付の職員へ、


「失礼します。自分はロイク・アルシェと申します。クラン『猛禽ラパス』のリーダー、ジョアキム・ベイロンさんのご紹介で、冒険者登録をしたいので、宜しくお願い致します」


と、丁寧な物言いで頭を下げ、紹介状を渡したのである。

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