第12話「9歳も若返ったしね。 人生を思い切り、楽しみたい!」
いきなり来て、吹き荒れた嵐は呆気なく過ぎ去った……
襲って来た山賊100名強は、
腕利きクラン『
山賊どもは最後まで抵抗、投降しなかったので全員が倒され死亡、捕虜はナシ。
そのうち、俺が倒したのは40人強。
オヤジ店主をあっさり倒し、もしや! と思った勝利への予感が、
この戦いで確信となり、大きな自信となった。
これで何とか、戦えるめどがついたと思う。
冒険者を始め、職業の選択肢も一気に増えたという事だ。
さてさて!
倒された山賊どもの死骸は、証拠品と戦利品を接収した後、
『
葬送魔法で塵にしていた。
ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ!
ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ!
ガタガタゴトゴト…… ガタガタゴトゴト……
ガタガタゴトゴト…… ガタガタゴトゴト……
ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ!
ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ! ぱかぽこ!
街道を走るルナール商会商隊の馬車3台。
俺は先頭を走る馬車の御者台に、幹部社員のオーバンさんと御者台に座っている。
周囲には、護衛役の冒険者クラン『
馬のひずめが響き、馬車の車輪がきしむ、
のんびりした牧歌的な風景が戻って来た。
「は~はははははははは!」
頭上に広がる青い大空に、
オーバンさんの、上機嫌な高笑いが響く。
上機嫌なのも無理はない。
絶体絶命の危機が回避され、全員が無事、金も積み荷も無事。
その上、山賊が所持していたおびただしい金品、
装備していた武器防具のめぼしいものを回収。
今回の売り上げに加算出来るからだ。
残酷と言うなかれ。
相手は戦う事をやめなかったし、
そして、外敵の襲撃があった際、この『ステディ・リインカネーション』の世界、
ファルコ王国の法律では、当然『正当防衛』が適用される。
加えて、凶悪な犯罪者の財産は被害者に慰謝料として与えられるのだ。
このような場合、でっちあげとか、冤罪の狂言が懸念される。
だが、ルナール商会の商隊はこれまで何度も外敵に襲われており、
商会社員以外に、クラン『
なので、王国の衛兵隊へ、被害を報告し、確認の報告書類を提出するだけで、
基本は問題がないという。
第一、襲撃者は100人以上。
こちらは総勢たった11人。
一方的に数を頼んで襲われ、相手が10倍近いという、
圧倒的な不利を打ち破ったのだし、なんやかんやと責められる『理由』はない。
オーバンさんは言う。
「いやあ、クラン『
「はあ、そうおっしゃって貰えると嬉しいです。馬車に乗せて頂いた恩返しが出来たかな、と思います」
「ふむふむ、奥ゆかしいな! ロイクへは、我がルナール商会から相応の謝礼を支払うだけでなく、山賊どもから接収した戦利品からも、しっかりと報酬を払うからな!」
「ありがとうございます。俺は王都で新生活を始めるつもりなので、物入りなんです。たくさん頂けるのなら凄く助かりますよ」
「おお、新生活で物入りか……よろず屋でもまじめに勤めていたようだし、良かったら、ウチの商会へ勤めてみないか? 良き商人修行が出来るぞ!」
おお、退職証明書、及び退職金支払い証明書が役に立った!
やっぱり一筆、直筆&サイン入りで書いて貰うのは大事だ。
しかし、俺はクラン『
「ロイクというんだな。君のおかげで助かった。大勢の敵に対し、各個撃破と陽動の囮&挟み撃ち作戦は見事だよ」
そして、
「戦い方も凄かったぞ。俺は勇気を称えると同時に、とんでもない素質と才能だと思う。良かったら、ギルドに登録して、冒険者にならないか」
とべたぼめされた。
また、
「ウチのクラン『
と誘われてもいた。
メンバー全員からも、おおむね好意を持って貰い、
「ウチのクランへ入隊すれば、実力は『けた違い』に上がるし、いっぱい稼げるぞ!」
と熱く誘って貰った。
クラン『
機転を利かせ、勝利に導いた俺を高く評価してくれた。
圧倒的な数の敵に対し、はっきりとした実力を見せた事も大きいらしい。
ともに立ち向かった『戦友』として、俺を見てくれているようだ。
う~ん、迷う。
将来、商人になるにせよ、冒険者になるにせよ、それぞれに良さがある。
商人は、前世のダークサイド企業において、
外道の社長と部長に鍛えられた地獄の営業経験が、
また転生して、よろず屋で3年間、
これまた鬼畜のオヤジ店主の下で務めた地獄の勤務経験が、
それぞれ、だいぶ役に立ちそうだ。
また、これだけ戦闘能力があれば、オーバンさんみたいに、
商隊を率いて旅をするのも良いと思う。
一方、冒険者は、今回で戦えるめどがついた事。
身体能力やスキルを活かせる事。
そして、ラノベ、マンガ、アニメ、そしてゲームの知識に加え、
この世界そのものたるRPG『ステディ・リインカネーション』の、
プレイ経験、攻略知識が、とても役立つはずだと思う。
他にも、仕事はいろいろあるだろうし……
どちらにしろ、これから長い人生だ。しばらく、いろいろ考えたい。
9歳も若返ったしね。
人生を思い切り、楽しみたい!
俺は絶対! 前世より1億倍! 幸せになる!
改めて決意した俺は、にっこりと微笑み、
「オーバンさん、お誘い頂き、ありがとうございます。でも俺は『よろず屋』を辞めたばかりです。申し訳ありませんが、いろいろ考えたいので返事は当分の間、待ってください」
と答え、
「ああ、良いよ。じっくり考えて、構わない」
と、オーバンさんからは、ありがたい言葉を戻して貰ったのである。
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