第7話
「なっ!?」
「ぐわっ!?」
「ぐひっ!?」
シエラに迫っていた数名の悪人達が、うめき声をあげて床に倒れていた。そして、彼らは動かなくなった。
「は? なんで?」
「何事だ?」
「メイドだ!」
「なんだと!?」
「……」
それは、一瞬の出来事だった。イアンは何が起こったのか理解できずに混乱する。ざわつき始める、残りの悪人達。そんな状況を冷静に見つめるシエラ。
次に口を開いたのは、ここまで沈黙していたライラ。
「お嬢様。もうそろそろ、助けに入ってもよろしいですか?」
「ありがとうライラ。うん、もう全員やっちゃって」
イアンを見つめながら、シエラは答えて頷く。
「了解しました。では」
「な!?」
「がはっ!?」
今まで息を潜めて待機していたライラが、シエラに許可を得て動いた。次の瞬間、残りの悪人達も全員が倒れていた。瞬殺だった。
イアンは混乱したまま、呆然と立ち尽くす。
「な、なんで……」
「私が護衛もつけずに過ごしていると、本気で思っていたのですか?」
婚約破棄を告げた時から、ライラは備えていた。
イアンと悪人達は、ミスを犯した。部屋の中に居るのが、令嬢のシエラとメイドの女が一人だけだと思って油断していた。
ライラは普通のメイドではなく、シエラが依頼して派遣されてきた諜報員だった。戦いにも慣れている。相手の戦力を見極め、危険そうなら保護対象のシエラを連れて逃げようと考えていた。
だが、悪人達が戦闘訓練もしていないようなガラの悪い程度の連中だということを瞬時に見破ったので、様子を見ていた。
他に敵は居ないか。危険はないかどうか。正面ドア以外の退避経路は。状況を観察して、問題ないように準備した。敵が動き始めると予想していた通り、すぐ始末することが出来た。
残っているのはイアンだけ。他は、全員が床に倒れている。
「ぐっ……」
イアンは懐に手を伸ばした。けれど、ライラが近づいてイアンの腕を振り払った。金属の鳴る音が部屋に響き渡って、床に何か落ちる。それは、短刀だった。護身用にイアンが持っていたもの。それを、シエラに突きつけるつもりだった。一瞬で、その動きは止められたが。
それでもイアンは、抵抗を続けようとする。シエラを睨みつけて、どうにか彼女に言うことを聞かせようとする。だけど。
「がはっ!?」
イアンは、ライラに取り押さえられた。両腕を取られて顔を床に押し付けられる。彼は身動きが取れないように、拘束される。
「その男は、今回の事件について聞き出すまでは生かしておかないと駄目ね。責任も取らせないと」
「そうですね。まだ生かしておきましょう」
シエラとライラの会話を聞いて、ようやく恐怖がこみ上げてくるイアンだった。
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