嫌いになる前のセクシャル18

エリー.ファー

嫌いになる前のセクシャル18

 左手で夢を描き、右腕を捧げるのだ。

 ここから先に進みたいのであれば神を崇めるしかない。

 教祖様になるのだ。

 上昇していくための思考。及び、志向。

 事実を重ねてはいけないと母親に注意されたことがあるので、そのままにしておく。重要なことはポイントだ。大切なことである。忘れてはいけない。

 父親と仲良くなかった。そのせいで声の出し方が分からない。もう十七歳なのに。人間関係が分からない。

 煩わしくなって死にたい。

 何もかも放棄して死にたい。

 もうすぐ十八歳になる。

 まだ十七歳だけど。

 十八歳が怖い。


 恋愛とか分からない。

 人に恋して気分が良くなる人の生き方を理解できない。

 以前から自分を見失うことが多い。

 これは家族のせいだと思う。今、流行りの毒親育ちだからしょうがないと思う。

 恋愛とか分からないのは、家族のせいだと思う。

 自分を失いたい。

 消えてしまいたい。

 殺してしまいたい。

 十七歳が続いている。いつもより、十七歳が長い。

 どうして、直ぐに十八歳になることができないのだろう。

 私ばかり巻き込まれている悩みは、他人にとって娯楽として機能しているのかもしれない。

 結婚をするのか。

 子どもを産むのか。

 分からない。

 それを選ぶ。


 十八歳、間もなく。

 今、十七歳。

 いや、十六歳に戻りたい。

 十八歳になってしまったら戻れなくなってしまう気がする。

 何に、と問われたら何も返せないのだが。

 でも、傷が。

 体にある傷が増える気がする。

 慎重に考えなければならないことばかりである。

 失ったものを知っているから、成長が怖い。

 酷く自分を罰したい気分になる。


 誕生日のプレゼントはいらない。

 期待はしたくないのだ。

 

 私は私を律することでしか、自分の形を理解できない。

 私と自分には大きな隔たりがあるが、定義が見つからない。

 光線銃で撃ち抜いて、黄色く発光させてほしい。

 そうしたら、私はここから先の人生に満足できる。


「先生」

「なんですか」

「十八歳って、なんでしょう」

「十八歳ですね」

「私、この十八って数字を特別に感じるんです」

「大丈夫ですよ。いつもと変わらない一年になりますよ」

「先生が十八歳になった時、何かありましたか」

「何もありませんでした」

「本当ですか」

「父親が亡くなりましたね」

「大きな出来事じゃないですか」

「でも、それは運命が十八歳という年齢を狙って起こしたわけではないでしょう。ただの偶然です」

「そうでしょうか」

「それ以外に何か」

「十八って、怖いです」

「怖れていると」

「はい」

「だとしたら、危険ですね」

「やっぱり、そうですよね」

「怖れる限りは危険です。怖れない限りは危険ではありません」

「そういうものですか」

「今までも、そうだったでしょう」


 十八歳になるまで十五分と十一秒。

 私は一人。月明りの下。

 踊り狂うのだ。

 ダンスは得意ではないけれど、自分の身を時間に捧げるのである。

 許可を頂く。

 私の命に十八以上の許可をもらう必要があるのだ。

 あぁ、体がきしんでいる。

 肉が喜んでいる。

 骨が叫んでいる。

 臓器が波打っている。

 十八を感じている。

 これは、エロスだ。

 あぁ、脈々と来る。

 何か来る。

 上がって来て、放たれる。

 間違い、私が増えている。

 この世界に。私が。いる。


 十八は最高だ。

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