第2話

その頃。


「仕事したくねーなー」


暖かい太陽の光を体いっぱいに浴びて殺し屋は屋上で昼寝をしていました。


世の人間はみな働いている。

でも俺はこうして日向で寝転んでいる。


この状況に酔いしれる一方で、頭の片隅では「働け。金がなくなると生きていけねーぞ」という声もしています。

その声を追いやるように殺し屋は大きく伸びをしました。


すると下から

「何やってんのよ、あんた!

 昼間っからビール飲んで!

 あたしばっかり働かせて、仕事しないならせめて家のことをしてちょうだいよ!」

「うるせーな!

 ここは俺の家だ。

 何しようと勝手だろうがよ!

 気に入らないならお前が出て行け、このクソが!」

「何よう!キー!」

「痛っ、やめろ、ばか、噛み付くな!」


殺し屋が寝転がっている真下の部屋で夫婦喧嘩が始まったようです。


「どこもかしこも大変だあ」

殺し屋は歌うように呟きました。


        ーーーーーーーーー


殺し屋は真面目な性格でした。

一つの目標に向かってコツコツと努力をして少しずつ達成させていくことに喜びを感じるほど辛抱強くもありました。

ただ、生きるのが下手でした。


殺し屋が殺し屋になったきっかけはよくある話でした。

大学の友人に連帯保証人になるように頼まれました。

友人から話を聞かされた時すぐに連帯保証人について調べた殺し屋はその頼みを断りました。そして

「借金はよくない。どうしたらいいか、じっくり話し合いたい」

と友人に伝えました。

友人は泣いて喜びました。

居酒屋に入り、友人の身の上話を聞きました。

周りから距離を取る人間ばかりの中、殺し屋はちゃんと自分と向き合ってくれる。反省しているし更生したいと思っている。でもどうしたらいいかわからず困っている。本当にやり直したいと思っている。

友人は鼻水と涎を垂らして訴えました。

殺し屋は一度も遮らずに最後まで話を聞きました。

おしぼりを友人に渡しながら

「金を借りた人のところに行こう」

と言いました。

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