【 第6話: 名古屋国? 】


「ねぇ、タロー。このプレゼントありがとう……」


 その『ミャー』と名乗る少女は、俺のクレジットカードを大事そうに胸に抱くと、恥ずかしそうにほっぺを赤く染めて、何やらモジモジとした仕草を見せた。


「そ、それ、俺の大事なクレジットカードだから……。おじさんに返してくれる」

「えっ? これ、タローがミャーにプロポーズしてくれた時のプレゼントでしょ?」


 その猫耳少女ミャーは、きょとんとした顔で俺の顔を、上目遣うわめづかいで見つめてくる。


「ミャーちゃん。そんなね、知らない人にいきないプレゼントなんかしないんだよ。だから、おじさんに返そうね」


 すると、ミャーは、こんな不思議なことを言ってきた。


「男たる者、一度、女にプレゼントした物は、取り返してはいけないにゃ」

「はっ?」


 俺は、自分の耳を疑った。


「女は、男からプロポーズされた時に渡されたプレゼントは、一生大事にしないといけないにゃ」

「へっ??? 何言ってんの……?」


 俺は、このイカれたことを言う、ミャーの言うことが理解できなかった。

 すると、ミャーは続け様に俺にこう言った。


「さっき、『名古屋国』で、タローはミャーに、『』してくれたにゃ」

「な、な、な……、プロポーズ!?」


「そうだにゃ。熱い熱いプロポーズをタローはミャーにしてくれたにゃ」

「何言ってんの? おじさんは、ミャーちゃんみたいな少女にプロポーズなんてしないよ。犯罪になっちゃうし」


「してくれたにゃ! さっき! タロー忘れたの!?」


 そう言うと、この猫コスプレのミャーは、ほっぺたをプク~っと膨らませて顔を赤く染めた。


「してない! する訳ねーし! それに、知らねぇやつに、いきなりプレゼントもしねーし! それは、おじさんのクレジットカードだから返しなさい!」


「男たる者、一度、女にプレゼントした物は、取り返してはいけないにゃ!」

「何だその、『おきて』みたいな言い方は!? それは、おじさんの命の次に大事なクレジットカードなの!!」


「タローが命の次に大事な物だから、ミャーにプレゼントしてくれたんでしょ!?」

「ちげーし!! 初対面のやつに、プロポーズもプレゼントもする訳ねーし!! 返しやがれ、このイカれコスプレ野郎!!」


 ミャーは一瞬たじろぐと、その大きな瞳から涙があふれ出し、やがてポロポロと頬を伝い地面にこぼれ落ちた。

 ミャーは、猫ニャンニャンの手で目をおおい、泣いているようだった……。



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