【 第3話: パラレル・ワールド? 】


 俺とその子猫との見つめ合いは、しばらく続いていた。

 俺は、ハッと我に返り、「いかんいかん」と首を横に数回振り、再び子猫に近付き、そう~っと手を伸ばしていった。


「ニャ~」

『チリリリリン……』


 すると、その子猫の首にぶら下がっていた紫色の鈴が、一瞬激しく揺れると、突然、まぶしい光を放った。


『ピカーーーーッ!!』


「な、何だ……? ま、眩しい……」


 その瞬間、行き止まりだったはずのコンクリートの壁の下の方に、何やらブラックホールのような穴が突然現れ、その子猫は俺をまるで手招きするような仕草で、穴の中へと入っていった。

 俺は、咄嗟とっさに手を伸ばして子猫を捕まえようとしたが、湿ってヌルヌルした路地に足を滑らせ、丁度大人の俺がスッポリ入るくらいに大きくなった穴の中へ足先から滑り落ちていった。


『ツルッ! ドスン! ツルツルツル……』

「うわっ! な、何だぁっ!? うわぁーーーーーーっ!!」


 俺は、暗闇の中のウォータースライダーのようなチューブ状の穴の奥へと、物凄いスピードで滑り落ちていた。


「うわぁーーーーっ!! 何だぁ!? どこまで続くんだこのすべり台はぁーーーーっ!!」


 どれくらい滑り落ちただろう……。

 しばらくすると、段々穴の先の方に、小さな光らしきものが見えてきた。

 その光は徐々に大きくなり、気付くと、急にそのすべり台のような穴から、体がスポッと抜けた。

 俺は、一瞬宙へと舞ったが、そのまま飛んでいける訳もなく、手足をバタバタさせながら、重力と共に、緑色の芝生のような草の上に尻餅しりもちをついて落ちた。


『ドスンッ!!』

「痛てっ!! つつつぅ……。どこまで落ちたんだ俺は……」


 俺がお尻をさすりながら、周りを見渡すと……。


「な、何だ……? ここは……」


 そこは、地下であるはず場所にも関わらず、まるで地上と同じような明るく開けた空間が広がっていた……。



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