第43話 俺君、海鮮バーベキューでアワビがエロいことを知る

俺達は砂浜から歩いて10分位のペンションに向かった。


荷物はビーチに出かける前に既に置いて来ていた。


そして到着すると?


「ご飯の用意できてますよぉ! すぐに召し上がりますか?」


「はい。生徒達、みんなお腹空かせてると思うから、すぐによろしくお願いします」


そんな訳で宿に着くや否や海鮮バーベキューが始まったのである。


「に、肉がある! お兄ちゃん、これもしかして和牛て言う幻の肉じゃないかな?」


「陽葵、恥ずかしいからやめてください」


高校生二人の食欲で仕送りだけで食べてると__そこは察して。


甲斐性のないお兄ちゃんでごめん、陽葵。


「おお! これ伊勢海老?」


「こっちはアワビかな?」


「な、なんか、似てる」


ゲシッ


冬月さんに後ろから蹴られた。やっぱ__あれ? マジ?


ちびはるちゃんと陽葵がどうも奉行気質らしく二手に分かれてそれぞれの網焼きの管理を始めた。


俺はアリーさんと陽葵、秋月は冬月さんとちびはるちゃんとに別れる。


焼かれていく食材達。美味しそうになってお腹を満たしてくれる。


目の前でゆっくり和牛を自ら育てる俺。俺はじっくり火を通す派なんだ。


血の滴るような肉? いや、火を通さないとアミノ酸が美味しく化学変化しないだろ?


もう少しかな?


ひょい


「ええっ!」


「もーらいぃ!」


「あ! アリーさん! それは俺が育ててた肉!」


「あら? いいのかしら? あんなことしたくせに?」


「うう、また脅しか? 肉に罪はないぞ?」


「むんずってしたのこの場でバラすよ? それとも大人しく人質を引き渡す?」


「__ひ、引き渡す」


交渉失敗。


「おいしー!」


和牛を頬張るアリーさん。俺の肉だったのに。


高くついた一揉みだった。


「お兄ちゃん?」


「何、陽葵?」


「私の分けてあげる♪」


そう言ってお肉をナイフで切り分けて半分くれる陽葵。


ありがとう、陽葵__俺の妹、マジ天使だ。


あの金髪の天使は中身が悪魔だからな。


それに__俺にはまだアワビがある。


初めて食べるアワビ。凄く美味しいと聞き及ぶ。


形が冬月さんのと__共通点が__いかん、考えちゃダメだ。


焼いているとグネグネ踊る。


ヤバい。エロい。エロ過ぎる!


ゴクリ、なんか生唾飲んじゃった。


でも、そろそろ食べ頃かな?


「もーらい!」


「ああ!」


今度は冬月さんにアワビを掻っ攫われた。この人達テンション上がるとトンビの前世を思い出す遺伝子持ってんのか?


「ずるいよ冬月さん?」


「あら、そんなこと言う? 磯風君?」


「言うよ。とっておきだったんだぞ?」


『私のアワビ見たくせに』


耳元で囁かれて一瞬でかぁと顔が赤くなる。昼間の記憶が鮮明に思い出される。


「今のうちー!」


そう言って、アワビは__冬月さんの口の中に消えていった。


「因果応報よ。お兄ちゃん」


「面目次第もございません」


んん? 陽葵にバレてる?


冷や汗が大量に出て来た。


そんな感じで俺は唯一、伊勢海老を一人前何とか堪能できて満足した。


なんか伊勢海老以外は野菜ばっかり食べたような気がするが__気のせいにしとこ。


「じゃあ、ご飯食べ終わったら、お風呂順番に行って来てねー♪」


「「「はーい」」」


ちびはるちゃんの引率で食事を終えると各自部屋に戻った。


俺は秋月と同室。


陽葵とアリーさんと冬月が同室でちびはるちゃんは個室だ。


そして俺は一人お風呂に入っていた。秋月ももうじき来るだろう。


「磯風ぇ! 背中流しにきたわよー! 安心して何も着てないからねー♡」


「お兄ちゃん、アリーちゃんには気をつけてね♪ 赤ちゃん狙ってるからね。あはッ、陽葵もなんだけどねぇ♪」


「磯風君、赤ちゃんはこの冬月さんのモノだからね、もちろん生まれたままの姿だから安心してねぇ♪」


ブクブクブクブク


俺は温泉に沈んで行くのだった。


☆☆☆


温泉に沈んだものの俺は水中を泳ぎ、隠れ潜んだ。


「あれ? お兄ちゃんがいない?」


「ええッ? せっかく赤ちゃん作ろうと思ったのに」


「冬月さんはせっかく今日凄く危険な日なのにぃ!」


冬月さん、何考えてるの? 俺達友達だろ?


ましてや危険日をそっちの方向で管理するとか__あれも計画的?


昼間のテントの中で危うく一線を越えそうになった。


いや、陽葵が来なければ夢と信じてそのまま襲っていた。


ていうか襲う気でいた。


だって夢だと思ってたんだもん。


夢じゃなかったら、躊躇するよ。


冬月さんは大事な友達だし__ツッコミは覚悟する。


「私、大事なとこまで見られちゃった、あはッ」


「冬月さんいいなぁ。私もそんな扱いされたい」


「お兄ちゃんがそんな大胆な行動とるなんて信じられないな」


「でも、私も突然胸を鷲掴みされたよ」


「うそぉ!」


いや、この子達何話してんのかな?


マジか?


俺は身の危険を感じて三人が湯船に入るのを音で確認すると温泉を出た。


幸い湯煙が凄くてわからないと思う。


俺の隠密作戦が功して三人に襲われるという事態は避けられた。


だが、明日の朝まで身の危険を感じる。


これは__部活を厳しくしてみんな疲れて寝させよう。


海で疲れているはずだしな。


☆☆☆


そんな訳で、お風呂上がってみんな各部屋に戻ったら陽葵達の女子の部屋に全員集合をかけた。


「みんな本来の目的を忘れてると思うけど今から小説執筆な!」


「ええ? だって磯風が海で寝込んだから書いてる時間なくなったんでしょ?」


「そうだよ。お兄ちゃんが悪いよ!」


「磯風君、みんな疲れてるんだから今日は諦めようよ」


「ダメー! 部長命令!」


そんな4人の仲間に秋月とちびはるちゃんは混ざっていない。


どっかで乳繰りあってるんだろうけど、野暮なことはしない俺だった。

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