第13話 妹ちゃんがお兄ちゃんのパンツをクンクンする話

陽葵ひまりSide


「ん、んん」


私は目を覚ました。


見るといつの間にかお兄ちゃんが帰って来てソファーで寝込んでいる。


時計を見るとまだPM10:00だ。


そして目の前にお兄ちゃんが作ったらしいサンドイッチが。


「__ありがとうお兄ちゃん」


鈍感だけど優しいお兄ちゃん。


でもね、好きな人が目の前で違う女の人に目を奪われていたり他の男を押し付けようとされたりしたら傷付くからね。


「お兄ちゃんには何か罰を与えないとね」


とは言うものの、とうの本人が寝ているから何もできない。


『ぐぅーーー』


お腹が鳴る。良かった♪ お兄ちゃんが寝ていてくれて。


危なく乙女のお腹が鳴るとこ、お兄ちゃんに聞かれるとこだった。


「疲れたんだね。今日はありがと、ちゅ♪」


私は大好きだけど鈍感で困った兄の唇にキスした。


起きる様子はない。私は兄の作ってくれたサンドイッチを食べた。


「__ハムハム。お兄ちゃん、料理の腕は私より上かも__いい旦那さんになるよ♪」


思わずチャペルの下でウエディングドレスを着た私をお姫様抱っこしてキスをしようとしているお兄ちゃんを想像する。


「__うふ__。うふふふふふふふ__。」


そうこうしているうちにサンドイッチを食べ終わる。


「暇だからお風呂入っとこ」


海に入ったから少し身体の感じが変だ。綺麗に洗い流したい。


そう思って風呂でシャワーを浴びた。


髪をまとめて、シャワーを終えると。


「ん?」


私は見かけないものを見てしまった。


「ん? んんんんんんん?」


それはパンツだった。男モノの。


当然お兄ちゃんのだろう。だから当然お兄ちゃんの汗や__いけない汁とか__。


普段、脱衣場には籠が二つ置いてあり、必ず布で覆っておく決まりだ。


私は欠かすことはないけど、お兄ちゃんは稀に忘れる。


普段なら__普段なら決して興味を持ったりしない。


でも__今日はお兄ちゃんとキスしたし、お兄ちゃんに__その__胸を__。


だから決して、決して私はそんなにお兄ちゃんのトランクスに心を奪われたとかじゃなく。


私はなんとなくだけどお兄ちゃんのトランクスを手に取った。


__これがお兄ちゃんが一日中履いていた下着?


「__ハッ!?」


わ、私は一体何してるの?


お、乙女が男モノのパンツを手にして何考えてたの?


大丈夫? 私? 涎垂らしてないよね?


違うの! 私は男モノのパンツを見て興奮するとか変な趣味なんてなくてぇ!


こ、これはきっと地球外生命体による精神攻撃!


私は一瞬精神を乗っ取られたのに違いない!


それ以外に考えられない!


しかし。


ゴクッ。


思わず喉が鳴る。仕方がないのだ目の前にお兄ちゃんの__男の子のパンツがあるなんていう非現実的なことがあるんだから。


「奥から1枚抜けばわかんないよね?」


私とお兄ちゃんは当番制でお洗濯をしていた。


下着はもちろん別々に洗っていた。


お兄ちゃんは何日も下着を溜め込む傾向にある。


そして慌ててバスタオルを被ると自室に戻った。


私は完全犯罪を犯した。


☆☆☆


「はあはあはあ」


お風呂上がりということもあるけど、完全犯罪を実行中の私の息は荒い。


そしてお兄ちゃんのパンツを広げて、改めて思った。


「__どうしよう」


衝動的にとってしまった行動。


私は決して男の子のパンツを性的な性癖で盗むタイプの女の子じゃない__筈。


なのに目の前のお兄ちゃんのパンツを見ていたら__。


気がついたら一枚くすねてしまった。


「これじゃ、わ、私、ち、痴女だよぉー」


いや、もう既に手遅れかもしれない。


変な快感を知ってしまったし。


でも、私を更にヤバい衝動を襲うとは夢にも思わなかった。


「そうだ。お兄ちゃんは寝てるし、さっさと返せばいいだけ」


ゴクリ。


また、喉が鳴る。


つまり誰も見ている人がいないんだ。


お兄ちゃんは寝てるし__部屋の鍵はかけた。


神様にもわからない筈__。


そして目の前にはお兄ちゃんのパンツがある。


「だ、だめだぁ! これ以上は乙女がしていいことじゃないぃ!」


私はパンツを握りしめたままベッドに逃げ込んだ。


慌ててお布団を被る。


パンツを握りしめたまま。


「わ、私、今日はおかしいよー」


きっと、今日の私はおかしい。ちょっと疲れているだけという結論に達して安心する。


パンツが顔の目の前にあるのも忘れて__。


でも、でも、これは偶然で、全然狙ったモノなんかじゃなくて、ほんとに偶然にもお兄ちゃんのパンツは私の目の前にあったのだ。


ちょっと疲れているだけの筈の私の胸の鼓動が高まる。恋する乙女固有の病気かしら?


決して興奮して心臓の心拍数が高くなっているとかじゃない。


それにお兄ちゃんのパンツが目の前にあるのもただの偶然。


だけど__。


目の前にあるという事は鼻のすぐ近くにあるという事で__。


いや、だめだ。これ以上この案件に関して考えることは止めよう。


そうだ、深呼吸をして頭をリフレッシュしよう。


そして、私は深呼吸した。


くんくん。


「ハッ!?」


わ、私は一体何を? 身体が勝手にぃ!


深呼吸で肺一杯にお兄ちゃんの匂いを一番奥まで入れちゃった。


でも、人として、女の子として絶対やってはいけないことしたような気がした。


これで私、痴女確定では?


そんな悶々とした1時間を過ごしたが、私は悟りの境地に達した。


「誰も見てないんだし、自分に正直になろう♪」


私は誰にはばかることもなくお兄ちゃんのパンツをくんくんした。

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