第217話 金のため
「とにかく、私が石川さんを利用したい――彼氏にしたい理由は」
もうこんな言い間違い程度じゃ動揺もツッコみもしませんからね。
「石川さんがクズの引きこもりだからです。グランダラにはそういう噂が流れているので、そんな人とつき合ってるとバレたらファンのショックがより大きくなるでしょう。それを考えるだけでもうゾクゾクロマンティック状態ですよ」
はぁっ……んんっ、と現役の大人気アイドルが、俺の目の前で妖艶に喘いでいる。
だが、悲しいかな、彼女は男です。
俺は彼女のもっこりを思い出す。
「あ、背徳感を得るために彼氏ってのが欲しいだけなので、私に対して過度にイチャイチャしないでくださいね。もしそれが守れないなら、ギルドの情報掲示板を担当している、サースデーの記者に通報します」
「通報されてヤバいのはホンアちゃんの方だと思うんだけど。恋愛禁止のアイドルなのに彼氏がいることがばれるんだよ?」
「襲われたと言えばいいだけです。引きこもりの石川さんと、大人気アイドルでファンがたくさんいて世間にも認められているこの私。世間はどっちの言葉を信じますかね」
ホンアちゃんは勝ち誇った笑みを浮かべる。
ぐぬぬ……なにも言い返せない。
「あと、ライブには適度に来てくださいね。あなただけにウインクするので。みんなのためと言いながら一人のためにウインクをするという背徳感もほしいので」
「どんだけ背徳感ほしがってんだよ。……ってかこんなの許していいのかよミライっ!」
ご主人様が、好き放題利用されようとしているんですよ。
「はい。なぜなら、ホンアさんは誠道さんが受け入れてくれた場合、報酬として多額のお金を払うと言ってくれました」
「俺は金で売られたのかよ!」
「それに、ホンアさんは男ですから……問題はないと判断しました」
「いや問題だから! すべてにおいて問題だから!」
「ああぅっ、ファンが貢いだ金を私がこんなクズの引きこもりに貢いでるっていう背徳感まで得られるなんて、私に得しかないわ!」
「ホンアちゃんは、背徳感背徳感うるさいんだよ!」
「誠道さん、すべては借金のためです。誠道さんは担保になってください。私たちの生活がかかってますから」
その後、ミライとホンアちゃんから再三説得を受け、俺はホンアちゃんの彼氏役を引き受けることになった。
はぁ、俺、このあとどうなっちゃうのぉ!!
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