愛憎の卒業に猫パンチはいらない編
第1章 いざ猫族の里へ
第156話 まどもあぜる
心出たちは、俺たちに赦してもらえたことに安堵したようで、リビングの床の上でぐっすりと寝てしまった。
マーズとの壮絶な戦いの疲労も影響しているのかもしれない。
聖ちゃんもふわわぁとかわいらしくあくびをしながら目を擦っており、心出たちと同じくいまにも寝てしまいそうだったが。
「いま寝ると、誠道さんになにをされるかわかりませんから寝ませんよ」
「なにもしないって」
ミライもいるし、それに聖ちゃんは妹のような存在だ。
「でも、さっきはどさくさに紛れて意識を失っているミライさんのおっぱいを揉んでましたよね?」
「それは偶然だ! 不可抗力だ!」
ってか聖ちゃんには揉まれるような大き――
「その視線はなんですか? 私の成長期はまだなんです! いつか必ずミライさんみたいなグラマラス……って、その大人に憧れる子供を見るような穏やかな目はなんですかっ!」
「いやぁ、だってまあ……いい子にしていればきっと成長期はやってくるよ」
「成長期をサンタクロースみたいに言わないでください!」
「魔物をぐちゃぐちゃにする癖をやめないといい子にはなれないと思うけどね」
「ぐちゃぐちゃ道をやめるくらいなら、一生おっぱいなんていりません!」
いや、さすがにそこはおっぱいを取ってよ。
いや、取られるようなおっぱいなんてまな板の聖ちゃんにはな……
「なんですかその憐れむような目は! そんなに誠道さんは睾丸を取ってほしいんですね」
「取られてたまるかよ!」
「みなさん! ようやく彼女が起きたの!」
俺が股を両手で覆ったとき、マーズが長い髪を靡かせながらリビングにやってきた。
どうやら猫族の女の子が起きたらしい。
マーズは部屋を見渡してから、最終的に俺の股間に目を向け、にんまりする。
「なるほどね。誠道くんには、みんなに見られながら自家発電をする趣味があるのね」
「なわけないだろ!」
俺は股間を押さえていた手を離し。
「それより早くいくぞ。ようやく起きたんだろ?」
俺たちは、寝ている心出たちを残して、猫族の女の子が寝ているミライの部屋へ向かう。
ベッドの上には、猫耳をぴくぴくと小刻みに動かして、怯えたように俺たちを見る猫族の女の子がいた。
「一応事情は説明しておきましたし、私がつけてしまった傷も、なんとか治癒魔法で治せました」
マーズがネコさんに近づきながら説明してくれる。
「よかったぁ。もう大丈夫なんだね」
霊に取りつかれても死ぬことはないと聖ちゃんは言っていたが、正直ネコさんはかなり無理をしていた。
マーズの攻撃もその体に受けているし、とても心配だった。
俺もマーズにつづいて、猫族の女の子に歩み寄っていく。
「……あ、あなたは」
猫族の女の子は俺をじっと見たあと、恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めた。
……え?
もしかして俺に惚れちゃったの?
俺の格好よさに気がついちゃった?
やったぁ!
きっと俺は猫族にモテる体質なんだぁあああ!
「ふっ、もう体は大丈夫なのかい? マドモアゼル?」
とりあえず、ベッドの横でしゃがんで、イケメン王子がするみたいに髪を手で靡かせながら問いかけると。
「私に近寄らないでくださいっ!」
頬に思いっきり猫パンチをくらって吹っ飛ばされましたとさ。
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