第155話 これでようやく
俺たちは、真枝務のテレポートで我が家に帰ってきた。
みんな満身創痍だったが、マーズが回復魔法(気休め程度のものですよと謙遜していた)をかけてくれたおかげで、なんとか体を起こして話ができる状態までは回復している。
……あ、ネコさんが憑依していた猫族の女の子だけはまだ目が覚めていないので、ミライのベッドに寝かせている。
マーズが俺たちに今回の件の謝罪をしたあと。
「この方は私が見ていますから」
と申し出て看病してもらっているので、心配はないだろう。
「みなさん。この度は誠に申しわけありませんでした」
みんなの前に立ったミライが恭しく一礼する。
「私の軽率な行動でみなさんを危険に晒してしまいました。そして、私を助けにきてくれて本当にありがとうございます」
「俺からも、みんなに改めてお礼が言いたい。今日は本当にありがとう」
ミライにつづいて俺も頭を下げる。
「そんな、感謝されることじゃありませんから。ミライさんが無事で本当にによかったです」
聖ちゃんはそう言って謙遜した。
「俺たちだって、感謝されるようなことはなにもしていない。当然のことをしたまでだ」
心出の言葉に、光聖志、真枝務、五升もうなずく。
「本当にありがとうございます。でも……」
隣のミライが俺の方に手を置く。
「どうして誠道さんまで頭を下げるんですか? 私は誠道さんにも向けて感謝と謝罪をしたんですよ。今回は誠道さんだって巻き込まれた側で」
「そういうわけにはいかないよ。だってミライのためにみんなが動いてくれたんだ。俺にも感謝させてくれ」
「誠道さん」
ミライはきらりと目を輝かせて。
「そういう優しいところが、誠道さんの強さなのですね」
「……べ、別に普通だから」
なんか聖ちゃんや心出たちからニヤニヤした目を向けられているが、俺が言った通り普通だから!
俺が感謝したかったから感謝しただけだ。
「ってかさ、心出」
俺は頬をかきながら心出を見る。
「それに……光聖志と真枝務と五升も」
同じように、他の三人の目も順に見ていった。
「どうした? 誠道くん」
俺が真面目な空気を出したことに驚いた様子の心出たち。
心出が正座をすると、他の三人も同じように正座した。
そんなかしこまられると、なんか、まあ…………別にいいけどさ。
「その……なんだ。お前たちのこと、もう恨んでないっつーか、俺は許すよ」
今回の心出たちの行動を見てそう思った。
彼らの必死さ、後悔の感情は充分に伝わってきた。
「私も、あなた方のことを許します」
ミライも俺の隣に立ってそう言った。
俺が許すのとミライが許すのは別の話だと思っていたが、ミライも心出たちを許すことに決めたようだ。
ミライにも心出たちがどれだけ体を張ったのか、誠意を見せたのかは、すでに話して聞かせている。
それを聞いたうえでどうするかはミライに任せるとも。
「……え?」
目を見開いた心出は、他の三人と目を見合わせる。
「いいのかい、誠道くん。ミライさん」
「ああ。俺もミライもそう決めた。心出たちの誠意は充分に伝わったから、もう恨んでいない」
「誠道くん、ミライさん……」
心出の声は震えていた。
目には涙が浮かんでいる。
「本当に、本当に、すまなかった」
そして心出が頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。
他の三人も心出と同じように頭を下げている。
「俺たちは……本当に、本当に……申しわけなかった」
「おいおい、もう許してんだからさ、そんなことしなくていいんだって」
……ってか、なにこれ。
許してもらってから正式に謝るって、順序が逆だろ。
そういう謝り方があってもいいのかもしれないけどさ。
「わかっている。わかっているけど、ようやく二人から謝る資格をもらえたんだ。だから、本当に、これまで……申しわけなかった」
「だから、もういいって」
なんかすげぇ恥ずかしくなってきた。
でも、悪くない気分だ。
心出たちの謝罪を見て、俺はこの世界に転生してよかったなと思う。
この世界にこなければ、きっと俺も心出たちも、永遠に不幸の中をさまよったままだっただろうから。
過去のトラウマから真の意味で解放されることはなかっただろうから。
第三部 決意と謝罪の性感帯編 完
====あとがき====
ここまでお読みいただきありがとうございました。
明日からは、第四部『愛憎の卒業に猫パンチはいらない』編が始まります。
今後も誠道とミライのわちゃわちゃ異世界生活をどうぞお楽しみください!
また、フォロー、評価していただけるとすごくすごく嬉しいです。泣いて喜びますのでまだの方はよろしくお願いいたします。
田中ケケ
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