第87話 中二病?
「まあいっか。ってかミライ。これ見てほしいんだけど」
「これ、って。ステータス画面のことですか」
肩が触れ合うぐらいの距離まで寄ってきて、俺の目の前に表示されてあるステータス画面をのぞき込むミライ。
彼女の柔らかなふくらみが二の腕に当たっている。
「ああ。実はさっきレベル上げしてたら、【
「私にも心の声は聞こえているので知っていますよ。【炎鬼殺燃龍奥義】と言えば、大度出さんを簡単に吹っ飛ばした技じゃないですか。その系列の技ってことは、【炎上翔砲】と同じくらいの強さを持つ技ってことでしょうか」
「まあ、そうなるな」
胸がときめいてしょうがない。にやにやもとまらない。
大度出をぶっ飛ばした【炎鬼殺燃龍奥義・炎上翔砲】。
それと同じ、【炎鬼殺燃龍奥義】を冠した技を二つも手に入れることができた。
喜びが爆発寸前である。
まあ、俺には大度出をぶっ飛ばしたときの記憶がないので、実際のところ【炎鬼殺燃龍奥義・炎上翔砲】がどれくらい強いのかわかってないんだけどね。
それに技の説明文も。
『地獄の業火をまとった拳で相手を殴る。相手は死ぬ……かもしれない』
ちょっとだけふざけていたし。
ちなみに、【無敵の人間】の技の説明文は。
『なんか開き直り的な感じでめっちゃ強くなれる。各種ステータスのレベルの合計値が高ければ高い程持続時間が増え、すでに覚えている【炎鬼殺燃龍奥義】の威力も増幅する』
適当なのか丁寧なのかわからないものであった。
新たに覚えた二つの【炎鬼殺燃龍奥義】の説明文にも『相手は死ぬ……かもしれない』がついていたので、やっぱり女神リスズは俺をバカにしないと気が済まないらしい。
でも、そんなことはどうでもいいのだ。
「なんかさ、俺、ちょっとモチベーションが上がったっていうか。だって【炎鬼殺燃龍奥義】だよ。俺もついに格好よくて強い技を覚えはじめるターンに入ったんだなって、普通に感動してる」
「中二病患者のみが格好いいと思うような漢字を寄せ集めている【炎鬼殺燃龍】が格好いいと思えるなら、私はそれでいいと思いますよ」
「ミライさん。なんかちょっとだけディスってない?」
「気のせいです」
「絶対気のせいじゃないだろ! いいだろうがちょっとくらい浮かれたって! 相対的に見たら格好いいだろ!」
そう俺がツッコみ終えた直後。
玄関の扉が激しくたたかれている音が聞こえてきた。
なんだなんだ? とミライと顔を見合わせ、急いで玄関に走って扉を開けると。
「誠道くんっ! ミライさんっ!」
肩で息をしていて、今にも泣きだしそうな顔をしたイツモフ・ザケテイルさんがそこにいた。
「どうしたんですか? イツモフさん」
ミライが声をかけると、イツモフさんの目から大粒の涙がこぼれはじめる。
「ジツハフがっ! ジツハフが、ゆ、誘拐され、てっ!」
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