第81話 審査員登場!
「イツモフさん、クリストフさん。それでは改めて勝負内容の確認をいたします」
ミライが対戦相手となる二人を順に見る。
イツモフさんも金髪剃り込み――クリストフさんも神妙な面持ちでうなずいた。
「勝負内容は調理勝負です。ユニコーソの角の丸焼きは焼くだけ、つまりまったく味に差が生れないので、今回の勝負のテーマは屋台のド定番、焼きそばです」
「あれ、まったく味に差がないなら、値段は一緒にすべきじゃない?」
俺は素朴な疑問をつぶやいてみたが、誰も拾ってはくれない。
ミライの説明はつづく。
「それぞれが渾身の焼きそばを作って審査員に食べてもらう。その審査員がおいしいと感じた順に一位、二位、三位と順位をつけ、一位から順に、低価格のぼったくり価格、相場のぼったくり価格、高価格のぼったくり価格を、ユニコーソの角の丸焼きにつけることができます」
「あのさ、いい加減そうやってわかりにくい表現するのやめない? 要するに三つともぼったくり価格だよね」
「こうすることで」
あ、また華麗に無視されちゃった。
俺の言葉なんか誰も聞いちゃいないのね。
「低価格のぼったくり価格をつける権利を得た店舗が、あたかも激安で販売しているかのような印象を与えることができます。つまり、この試合は高度な印象操作によってお客を騙し――お客にお得感を与えて満足してもらうための、非常に価値のある素晴らしい試合となっております」
「どこが価値のある素晴らしい試合だよ。しかも騙すって言いかけてるからな」
騙し合う試合ならポーカーのテキサスホールデムの試合見るわ。
あれは明らかに素晴らしいからね。
「そして、この勝負の判定をする審査員ですが、公平を守るべく、こちらの方にお願いしております。どうぞ!」
ミライの声とともに、本日、こんなしょうもない勝負のために審査員をしてくれる人が現れる。
一体誰なんだろか。
誰であっても、こんな茶番につき合ってくれるのなら感謝しなければいけない。
「そのお方はオムツおじさんです!」
「またお前かよ! 死んでも感謝なんかしねぇよ!」
オムツ姿のおじさんはダンディな笑みを浮かべている。
いや、色気があって格好いいけどさ、顔より下のせいでまったく格好よくないからね。
ほぼ裸だもの。
「このオムツおじさんは、実はマダムのペットです」
「そんなの知ってるしオムツおじさんも嬉しそうにうなずくな。もっと恥ずかしがれよ」
「ですから、このお方に賄賂を渡しても意味がない。つまり公平な審判を下していただけると言うことです」
「それは……たし、かに」
ミライがまともなことを言っていることに驚く。
マダムは当然金持ちだ。
そんなやつと一緒にいるのだから、俺たちが渡す程度の賄賂じゃ話にならないだ――
「なにを隠そう、オムツおじさんが欲するものはお金ではなく、自分を辱めてくれるご主人様なのですから!」
「そういう意味かよ。たしかにお金じゃオムツおじさんは喜ばないね」
「……はっ、ご主人様を求めているってことは、私のご主人様である誠道さんを賄賂として渡せば、あるいは」
「ミライさんなに言ってるの絶対やめて。オムツおじさんは俺を品定めするような目で見ないで。それから落胆したようなため息つかないで。こっちからごめんだから。お前のお眼鏡にかなってなくてむしろ安心したわ」
冷たく吐き捨てると、オムツおじさんは興奮を噛み締めるように笑った。
「いや今の俺の罵倒で気持ちよくならないで!」
「年下の男も、それはそれでいいものだな」
「それはそれでよくねぇんだよ」
「やっぱり誠道さんを賄賂として渡せば勝利は確定?」
「ミライは勝負に集中してくれー」
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